社務所改造ビフォーアフター

written by sugarさま









 ピュルルルルルー・・・・
 
とんびが、空を舞っている。

遠くに見える山々は、秋色に色づき始めている。

(ああ・・・いつの間にか、もう秋の足音が・・・)

持っていた 洗濯物を干す手を休め

ふと 空を見上げながら、

男はそんなことを思っていた。


「聖様、こちらの準備は出来てまいりましたよ」

木造の古い社務所の裏手に回ってきた

年輩の男が、背後から声をかけてきた。

彼は答える。

「バル○ンは眼にしみるものなのですね。私、初めてで・・」

「そうですか。私は随分お世話になったものです。奥様の付き人になってから・・特に戦後は大変でしたから・・・」
渋い笑いを浮かべながら年輩の男は答えた。

「これで、ダニをはじめとして色々な害虫が退治されるので安心でございますね。」

「はい。座布団も虫干ししておきましたので大丈夫でしょう」

年輩の男の名は 小林源造。

往年の大女優の付き人である。

そして

付き人という「地味な存在」でありながら

往年の大女優の名演技「紅天女」の相手役である「一真」を務める事が
できる唯一の相方である。

つまり

役者としても かなりの才能の持主であったことが伺われる。

彼の素晴らしさは

長く付き合っていなければ

気づきにくいものなのかも知れない。


源造さまは本当にいぶし銀のような渋さが漂っておられる・・・。


――― 戦争体験者・・一体彼はいくつになったのだろう・・? ――――


聖は問いたくなったが、その思いは心に閉ざすことにした。

 戦争云々より真澄様、マヤ様の幸せのために精進しなくては・・!

本来の目標を見つめなおし、シーツにのり付けをする聖であった。

  
「何だこの企画書は!こんな物が通ると思っているのか!?」

 社長室からの怒声が廊下まで響き渡っている。

 
 東京の都心にある りっぱな高層ビル。

 芸能界にこの会社あり!

と 名高い
 
 大都芸能の自社ビルである。


 その自社ビルの

 上階に

 大都芸能にこの男あり!

と 言われるのが

青年社長こと 速水真澄 三十路過ぎの独身である。


 その声を聞きながら、冷笑を浮かべる美女が1人・・。

(フッ・・真澄様ったら、もう限界な様子ですわね・・)


平安時代の姫君のような

見事な緑の黒髪をなびかせながら

才媛のサングラスがキラリ と光った。


「失礼いたします」

美女は 社長室のドアをノックし、開ける。

「速水社長、急ぎの書類のサインを頂きたいのですが・・」

穏やかに

凛とした発声で声をかける。


そんな彼女の姿と声を聞き、

企画書を持参していた社員は、ほっとした表情を浮かべて

「本日中に再度作成し、提出します」と足早に部屋を後にした。


怒声を響き渡らせていた当人は・・・・

眉間にしわを寄せて、書類から顔を上げようとしない。

「真澄様・・」

「急ぎの書類は?」無愛想に切り返してくる。

(全く、素直じゃないんだから!!マヤちゃんが気になるくせに!)

彼女は心の中で言った。

(真澄様!アナタがなさっていることは子供と一緒ですわよ!いい加減になさいまし!)

再度 彼女は心の中で叫んだ。


美女の名は 水城冴子。

大都芸能社長 速水真澄の秘書である。

冷血漢、仕事の鬼 といわれる速水真澄が最高に信頼し

唯一 (時に)頭が上がらない相手である。

――――― 「時に」とは・・――――――

本人が自覚していない恋愛感情を

鋭く指摘したり

真澄の行動形式を

かなり読み込んでいる

事が多いからだ。



「明日の重役会議が延期になりました」

社長室のうっとうしい空気が

彼女の一言で 流れが変わる。

「え?明日の会議にはオヤジも出席する予定だが・・」怪訝な表情でこちらを見つめる。

「その会長の意向です」水城はすまして答えた。

「とある企業が、梅の谷リゾート開発の計画があるそうですわ。」

「なっ!!!」
リゾート開発だと?!そんな情報は全くつかんでいなかったぞ?
いや・・昨日はイライラしていて聖の報告書を読んでいなかったな・・

勿論・・速水は白目青筋である。手にはグラスではなくコーヒーカップ。

コーヒーカップも「銅製」の頑丈な物になっている。

つい最近までは、すし屋で出されるごっつい湯飲みであった。

「湯飲みでコーヒー!!」白眼で訴えると、現在の物に換えられた。


水城秘書の鋭い眼光が真澄にそそがれる。

「うっ・・」思わずその迫力にたじろぐ。

な・・なんだこの水城君の迫力・・殺気と言えばいいか・・?
酔って絡んだこともないし、いつも紳士的にしていたはずだが・・・

がまの油のように・・ジワジワ〜っと嫌な汗が真澄の背中を伝っていた。

「明日から3日間は重要な会議は特にありませんわ。いえ、あったとしても水城冴子、プライドに掛けて入れませんことよ。」

「は・・?」

「梅の谷リゾート開発・・阻止するべきではありませんこと?真澄様」

ああ、そうだった。水城君の迫力に押されて失念していた。


――― ふっ・・この速水真澄ともあろう者が・・。 ―――


お約束の台詞もきまったので、梅の谷へGO!!
「紅葉の梅の谷も良いものですね〜」
ウットリとした瞳を谷に向け、マヤが言った。


数日前に

「紅葉に染まる梅の谷を見に来ませんか」
と源造に誘われ、マヤは梅の谷へやって来た。

以前
訪れたときは、やや季節外れであったが

梅の谷は紅梅の色に染まるような美しさであった。

そう
春の訪れを告げるような

そして
秋の紅葉に染まる梅の谷は

人を
恋しくさせる

そんな雰囲気が漂っているようであった。


ウットリとした
瞳を向けている彼女を見ながら

「マヤさんも紅葉の美しさを感じられる女性に成長されましたね・・」
源造が答える。

「そ・・そんな〜源造さんたら、何だか恥ずかしいです。」

「恋でもされましたか?」

――――― 恋・・・・ ――――――

マヤの眼の前に、ある男の姿が浮かんだ。

彼のことを思うたび、切ない思いになる。


速水さん・・
会いたい
声が聞きたい
姿が見たい
我がまま言いたい
甘えたい

あの雨のときのように
あの社務所で過ごした夜のように
抱きしめていて欲しい

何しても 言ってもカッコいい
でも時には、大人気ない
少年のようなあなたが好き

大人のあなたの意外な一面を
私だけが知っていたい

そう思うのは
私の我がまま?


私はいつまでもあなたにとって「チビちゃん」なの?

「私、もう子供じゃありません!!」
突然マヤがさけんだ。

 源造が、その叫び声に飛び上がる。
「・・マ・・マヤさん?」
「あっ!ご・・ごめんなさい!な・・・何でもないんです!!すいません」


―― ひゃあぁぁ〜!私ったらバカバカ!うっかりやっちゃった!――


「ちょっと驚きましたが・・」穏やかに返答する。

「ぼ・・ぼうっとしていて・・本当にごめんなさい!源造さん」
マヤは真っ赤になりながら、何度も頭を下げている。

そんなマヤを見ながら


―― 奥様がここにいらしたら、さぞかしお喜びになったでしょう ――


源造はマヤのことを我が子のように微笑ましく感じるのであった。


------ そんな二人を影から見つめている男が居た。


 ―― フッ・・・―――

 微笑を浮かべながら
(・・・源造さま・・「マヤさまのお心チェック」順調なようですね。勿論、真澄様の心は明らかです・・・。
さて、用意すべき薪の本数を決めなくては・・。
そのためにはまず、気象データチェックは欠かせませんね・・)

「そう・・梅の谷のような 山の夜はかなり冷え込みますものね・・」

などと頭の中でいろいろとシュミレーションしながら、男は谷のほうへ消えて行った。


  ――― 秋の夜はつるべ落とし ―――

言葉どおり、紅天女の里の夜も早い。

「冷えてきたな・・」コートの襟を立てる。


――― 速水真澄 三十路過ぎた独身男 ――――


夕方遅くに到着し、宿は確保したものの・・・・・・

いてもたってもいられず、梅の谷を目指した。


 大自然が見せてくれた満天の星空

 二人で過ごした社務所の夜

 梅の谷で体験した魂のふれあい

東京に戻ってからも忘れることはなかった。

都会のギラギラしたネオンの中

自分が生きていくのはこの世界だと

何度もいい聞かせてきた。

いい聞かせれば

いい聞かせるほど

魂の叫び声が聞こえてくる。

本当の

自分の望みは?

幸せは?


――――― あの子と過ごした瞬間。―――――

時間が
経てば経つほど
よりいっそう
鮮やかに
思い出される。

そう
えもいわれぬ

甘美な思い出。

そして
渇望してしまう。

あの子に
マヤに
会いたい

でも・・・・

―― 全く、俺って男は・・あの子が絡むと何も出来なくなってしまう ――

あの時に戻れたら・・ついつい思ってしまう。

「だから今時、トレンチコートなのだよな・・フッ・・速水真澄ともあろうものが・・」
思わず 自嘲気味に苦笑してしまう。
 「綺麗な星・・怖いくらい・・・・」

満天の星を眺めながらマヤが呟く。

――― 速水さんと一緒に見たいな ―――

 あの夜と同じ場所で
 同じように寝転がって、空を見ている。

「流れ星に願い事をしようとしたっけ・・。」そう、トロクて間に合わなかった。

 二人でまた、星を見たいと思ってここにきてこんなことしているけど・・

 速水さんは東京に居るわけで・・・・

「まぁね〜どうせ、会えるわけないし〜?私ってばかよね・・」

「誰かに会うのか?」

 ――― ドッキィーン!!! ―――

「はっ・・・・速水さん!」

 ドクッドクッドクッ・・・・

心臓の音が大きく・・早くなる。
ドクッドクッドクッ・・・・
や・・やだ〜・・は・・速水さんに聞こえそう! 

速水さん・・・・落ち着いているわ。大人よね・・。

大人・・そう・・私も大人なんだから・・落ち着いて。

大丈夫よ。私はやれるわ!!・・て・?何を?? わぁーん!!
 一方 落ち着いている(らしい)大人は・・・・


マヤにここで会えるとは・・・・(ジーン・・) ← 至福

君も俺と同じ思いだった  などと、考えても良いのか?

うぬぼれだろうか・・。

いや、会えることを願ってここに来たんだろう?

直接会いに行く勇気が無くて・・・・。

あの後、何度 後悔したか・・・・。

「・・・・・・」 無言のまま、マヤの隣に腰掛ける。

 マヤがじっと見つめている。

心臓の鼓動が 徐々に大きくなる。

「・・あの〜・・」

「・・何だ?」 冷静を装うが内心はドキドキ。 

「星・・綺麗ですね・・」仰向けになり天を仰ぐマヤ。

「・・・・そうだな。また、見ることが出来るとは思っていなかった・・」

「・・早いですね・・もう秋なんて・・」

「ああ、冷えてきたぞ。これをはおっていろ」

マヤにコートをかけてやる。

 ☆これもきっと速水社長の「お宝アイテム」仲間入りである。

二人の間を

静かに

愛が流れる。

時が流れる。

優しく

穏やかに・・・・


一言・・二言・・話すうちに 気持ちが落ち着き、安らいでくる。

――この子と居ると、気持ちが癒されてくる・・。ずっと一緒に居たくなってくる・・―――

――速水さんと居ると、心が温かくなってくる。麗たちと居る時も
優しさに包まれて楽しいけど、さりげなく守られていて・・そう、勇気を与えてくれる。「この人のために頑張りたい」って思える・・そして、この人のためなら命も・・―――


以前のように
二人で仰向けになり
満天の空を仰ぎ見る。


「・・紅天女も・・阿古夜も、こんな気持ちだったのかも・・」

「・・え?」

「あっ・・いえ、あ・・あの〜、以前ここに居た時は、紅天女の課題をしていたな・・と」

「・・・・たしか・・『自然を演じる』だったな。」

「はい・・。」

「あの時と今では、感じ方が変わったんじゃないか?」

「ええ、うまく言えませんが・・何となく・・」

「フフ・・君は言葉より、演技で伝えるほうが得意だからな。」

マヤは起き上がり、ややふくれっ面でこちらを見ている。

「おいおいチビちゃん、褒めているんだぞ?

言葉でも、うまく伝えられないこともあるのに、君は演技で表現できるんだから、うらやましい・・」

 笑いながら話す中に、ふと寂しさのようなものが表情に見え隠れする。


――― うらやましい・・ ―――


速水さん、そう言ったわよね?

「速水さん・・誰かに、伝えたいことがあるんですか?」

「!!」

・・・・くぅ〜っ!!!!
マヤ・・君って子は・・・・
この娘は、鈍感だと思っていたら、鋭いところをついてくる・・。

「伝えたいこと」?

山のようにあるんだぞ!

君に!君に!君にぃぃぃぃぃぃ!!!!


「速水さん?」

怪訝そうに見つめるマヤの視線に
ハッと我に返る。

一瞬
言葉に詰まってしまう。


・・・・う"〜・・。この子と居るとペースが狂う・・。
嫌じゃないんだが、とりあえずは・・話題を変えて・・・・


「『夜間飛行』を、知っているか?」

「え?あ、香水の名前ですね?知ってますよ。アルディス役のときに何だかステキな名前だなって思ったので。」

「あれは、サン=テグジュペリの同名の小説からイメージされて作られたそうだ」

「小説?」

「暗闇の中、危険と隣り合わせで飛行する・・・・飛行士の孤独との闘いの話だ」

真澄は 物語のあらすじを説明し始めた・・・・。



「・・そんな孤独な話だなんて知らなかったです。
でも、彼はまた、空に飛び立つ・・。ロマンティックですね」

「ああ、そうだな」


孤独と危険の隣り合わせ。そんな状況にあえて身を置くなんて・・。
何だか速水さんみたい・・。


ふと、そんな事を思ってしまった。


寂しすぎるよ?速水さん・・・・。私は・・・・


「・・『夜間飛行』って言う言葉で・・
満天の星の中に漂っている自分をイメージしていました。
ふわふわして、ちょっと不安定。でも、それでいて・・すごく心地良い・・・・」

「1人だと、君はどこかに行ってしまいそうだな・・・・」

「そう?・・・・じゃあ、凧みたいに紐でもつけておいたほうが良いですか〜?」

「そうだな・・・・。」

真澄の瞳に鋭い光が一瞬宿る。

「いや、紐は必要ないだろう?1人だと寂しいだろうし・・」


――― 寂しいです。速水さん! ―――


マヤの瞳にも鋭い光が宿る。

「じゃあ、一緒に漂えば良いんですね?
速水さん、その間 手を握っててくれるんですか?」


――― 言っちゃった〜!! ―――


『私もう、チビちゃんじゃあ・・子供じゃありません!』


真澄の耳に
そんな言葉が聞こえた気がした。

「・・ああ、俺がしっかり手を握っていてやろう。
ただし、満天の星の中では無く糊の効いたシーツの上だがな?」


――― 言った言った言った言った〜!! こ・・こんな口説き文句は初めてだ・・(汗)
      ドン引きされたら・・もう、立ち直れん(悶々) ―――


「・・冷え込んできましたね。速水さん。」


ガクッ・・・・。チビちゃん・・・・君って子は・・・・


「・・手も足も冷えて、背中もゾクゾクします・・。暖めてください。
 ・・勿論、手も握っててくださいね。シーツの上で」


いよいよか?!・・いよいよ よいよい社務所へGO!!



 「冷え込んで参りましたね・・源造様・・」

ブルッと身震いしながら男は言う。

 「もう少しでございますよ。聖様。頑張りましょう」


 植え込みの間に男が二人しゃがみこみ、隠れている。

頭や背中には枝をつけて・・・・

あまり・・

いや、殆ど意味になっていないカモフラージュだ。


 「あ、私、ホカ○ンを持っておりますよ。
  さあ、どうぞ。決して頭には貼らないでくださいね」

 「解りました。低温熱傷に注意ですね。ありがとうございます・・」
ホカ○ンを受け取りながら
「しかし・・聖様、その・・・・お姿は一体・・?」


 相手の男の格好は・・直衣に、鹿皮の靴・・。


「お香も焚き染めているのですよ。」


指摘された男は穏やかに微笑みながら言う。

「真澄様のマヤ様への思いを知ってから、私、密かに・・天文を読み、天候や式神をも操る陰陽師に弟子入りしてまいりました。まだまだ未熟者ではありますが、まずはスタイルから入るのも重要かと思いまして・・」

「・・で、今日は何を・・?」

「勿論、『社務所の夜』といえば『嵐』で御座います。先ほど、雷雨が起こる様、祈祷を行っておきました。」

「・・・・。」源造は無言で空を見上げる。


満天の星空が・・・・・・一面に広がっている。


「・・梅の谷の天候は変わりやすいものでございますよ。フッ・・」

微笑する彼を見ながら

『聖様、なんて深い方なのでしょう・・』

と、素直に思う源造であった。



 ―――― カサッ カサッ カサッ ――――



落ち葉を踏みしめてやってくる足音・・。

「・・こられましたよ!真澄様にマヤ様です・・!」

「・・っ!!」

源造が横を見ると、直衣姿の男の顔には 暗視眼鏡が・・。


  聖様・・準備は万全でございますね。恐ろしい方です・・・・。

 速水とマヤは、二人の居る植え込みのそばを通り過ぎていく。


 ――― 暗闇だから、木の枝なんて必要なかったのでは・・ ―――


 そんな 反省めいた事が脳裏をかすめたが

二人が社務所に入っていく姿を見届けることができて

男二人の胸にはジ〜ンとこみ上げてくる熱いものがあったのは言うまでも無い。


 ――― おやりなさいませ 真澄様! ―――(ガッツポーズ)


――― マヤ様、紅天女の恋・・掴んでください! ―――(ガッツポーズ)



ゴオォォ〜・・・・

地響きのような音に我に返る。

ふと 空を見上げると 星が消え、雲に覆われている。


ポツ・・・・ポツ・・・・


「嵐が参りましたね・・」

直衣姿の聖は微笑みながら
静かに言った。
「・・あの音は・・?」

何気なく外を見ると 雨が降り出している。

風音が激しくなり
窓や扉をきしませている。

雨音も激しくなり
地面に叩きつけているようだ。

「冷えてきたな。
火のそばに来なさい。温まるぞ」

薪をストーブの中にくべながら言う。

「はい、速水さん」

ストーブのそばに居る
真澄の側にゆっくりと歩みを進めるマヤ。

それをじっと見つめる真澄。

無言で手を差し出す。

戸惑いながらも
決心した表情を覗かせ
マヤはその手に自らの手を伸ばす。

触れ合いそうになった瞬間

真澄が華奢な手首をつかみ、自分の下に引き寄せる。

抗う間も無く
マヤは
真澄の腕の中に引き寄せられ、
力強く抱きしめられた。
―――― は 速水さん・・! ――――

「・・・・マヤ・・ずっと君の事を見てきた・・。」

抱きしめる腕が緩められ
頬に優しく手が掛けられる。
優しい でも
情熱的な
視線で
じっと
見つめられる。

頬にかかる髪を指に絡めながら
優しく頬を撫でられる・・・・

「はじめはなぜ、君の演技に引き付けられるのか解らなかった。
しだいに・・・・
君のひたむきさ、芝居にむける情熱に憧れている自分に気が付いた・・。
 そして憧れが、俺も気づかないうちに
君を想う気持ちに変わっていったんだ・・」

「私を・・・・想う・・・・?」

マヤの心中に驚きと戸惑いが渦巻く。

「マヤ、君を愛している。」

―――― え・・? ―――――

叩きつける激しい雨音も
窓や扉をきしませている風音も
一瞬消えてなくなり
深海のような静けさに
二人は包まれる

マヤの思考は停止してしまった。

―――― マヤ、キミヲアイシテイル。 ――――

速水さんはそう言ったの?
紫のバラの人
私を励ましてくれて
決して見捨てなかった人

私自身
お芝居を止めようとした時
必死で止めてくれた人

その人が
私のことを
愛してくれているの?

「・・・・ぁしは・・」声がうまく出ない
胸が苦しい
速水さんへの想いを自覚してから
苦しくて
苦しくて
どうにかなりそうだった。

やっと・・何とかやっていけそうに思ったけれど
気づけば
あなたの事を想い
あなたを求めてしまう。

「・・・・マヤ・・?」
見つめている真澄の瞳に
戸惑いが浮かぶ。

「すまない・・。君にとっては迷惑な話だったな・・」

瞳に浮かぶ
戸惑いの中に
切なさと寂しさが入り混じる。
「・・・・苦しいです・・」

「え?」

「速水さんのことを想うと・・・・胸が苦しくて・・。でも、会いたくて・・
寂しかったんです。・・・・速水さん、前に言ってましたよね?
『一緒にいると気持ちが落ち着く』って・・・・。
 私もです。・・・・ずっと一緒に居たいです。速水さん、
あなたのことが・・好きなんです!」

マヤの大きな瞳から涙が溢れ出す。

マヤの告白に
真澄に衝撃がはしる。

その衝撃は
やがて
甘美なものに変わる。

「・・・・そんな瞳で見つめ返されると、たまらなくなる・・。」
微笑を浮かべながら真澄はマヤに語りかける・・。

「・・たまらないって・・?どういう意味ですか?」
涙を流しながら、戸惑い表情で問いかける。

すばやく 
でも、優しく真澄の顔が近づく。
そっと
唇を重ね合わされる。

 唇に優しく風が撫でるように触れるkiss

驚いた瞬間 その感覚は去っていき
じっと微笑みながら見つめている真澄の姿があった。

「こういう意味だ」
「あ・・あああああぁ・・・・・あのぉ・・」

心臓が早鐘のように激しく打ち出す。
体中が暑くなり
汗が噴出してくる。

――― 驚いたけれど、決して嫌じゃない。唇が触れた瞬間、心が幸せで打ち震えるような・・
     そう、痺れるような甘い感覚があったわ。こんな感じは初めて・・・・。―――

「・・そんなことされたら・・たまらなくなっちゃいます・・」

「・・・・えっ!?」

俺の聞き間違いか!? 嬉しさのあまり願望が幻聴になっているのか!?

頬を赤く染めながら
潤んだ瞳で見つめ返すマヤ・・。

―――― 幻聴でも良い!! 思いは通じ合ったのだから ――――

真澄はマヤを抱き寄せ
今度はゆっくりとマヤの唇を塞ぐ。
唇に長年の想いを込めながら・・。

やがて
マヤの唇が甘美に戸惑い
かすかに開く

そこをすかさず
舌を絡めて進入していく。

その激しい情熱を
マヤは戸惑いながらも
懸命に受け止めようとしていた。

 「良い子は これ以上見てはいけませんね・・・・」

そっと聖がささやく。


 社務所の壁に小さな穴・・。
 直衣姿で覗いている姿は摩訶不思議である。


 「そうですね・・。でもお二方の想いが通じ合って良かったです。」

源造がささやき返す。


 社務所の壁に聴診器を当てている・・。
 白衣姿でなかったのが幸いである。(暗闇でも白は浮かび上がりやすい)


 「源造様・・その聴診器は・・」

 「奥様の血圧測定のために購入した物で御座います。昔は電子血圧計が無かったものですから・・」
微笑を浮かべてこたえる。

 「聴診器の使い方も色々あるのでございますね・・」


――― さすが源造様、手持ちの道具を応用し活用されるとは・・―――


 戦後の 
ものが無い時代に
生き抜いてきた人間の知恵の素晴らしさを
学んでいこうと感動した聖であった。


「私、以前リフォームした時は、壁の穴に気づかなかったです。さすが聖様、細かいチェックをされていたのですね・・」

「リフォームの時は無かったのです」

微笑で答える。

「え?!では、いつの間に・・」

「愛鳥のきつつきに、穴を開けさせたのでございますよ・・」


――― 愛鳥にふくろうも居れば完璧です・・―――


そんな事を
素直に思う源造であった。 




「は・・はっくしょん!!」

「大丈夫か?」
マヤを愛撫していた速水の手が止まる。

「背中が冷たいです・・」

板の間である床にマヤを横たえている(押し倒している)状態である。

「すまん・・」
マヤの手を取り、ゆっくりと起こす。


部屋の隅には
糊の効いた布団が置かれている。


俺としたことが、床に押し倒すとは・・。
もっと優しくするべきなのに・・。
冷え込んできているし・・。布団も1組だけではないか!


心の中でガッツポーズをとりながら、マヤを残し布団を出し、敷き始める真澄であった。


女の人ってみんなこんな感じなのかしら・・?
ドキドキして、嬉しいような恥ずかしいような・・
見ているのも何だか恥ずかしい・・複雑な気持ち・・。


戸惑いながら
俯き加減で
真っ赤になっているマヤであった。


布団を敷き終えると
真澄は
無言でマヤに手を差し出す。

マヤも無言で手を取る。

マヤを優しく抱きしめて
唇を重ねながら
布団に横たえた・・・・。
マヤが布団を横たわると

ふわっと優しい香りがかすかに広がった。


上品な

バラの香り・・・・


布団に吹き付けられていたものだ。

「・・ブルガリアン・ローズの香りか・・」マヤを見つめながら微笑を浮かべる真澄。


――― 気が利きすぎだぞ?聖よ。もう後には引けないな・・―――


「紫のバラの香りでないところが残念だな・・。」


(紫のバラの香りはまだまだ開発中に御座います・・)聖の声が聞こえた気がした。


「バラの香りに包まれるなんて・・何だかお姫様になったみたいです」

瞳をウットリと潤ませたマヤが微笑みながら答えた。


「・・・・マヤ、愛してる・・。」

優しくささやきながら
横たわるマヤを抱きしめ
唇を重ねる。

愛撫の手が
背中から
ゆっくりと
腰に下がる

そして

何度も
背中から
腰まで
優しく
愛撫される。

真澄の肩にまわされたマヤの手に
震えながら
力が入る。

真澄の唇が
マヤの耳たぶを優しく噛み
首筋に移動してゆく

「あぁ・・はやぁみさ・・んっ」
吐息まじりの声がマヤの口から出る

首筋に
真澄の唇がたどった跡が
白い肌にうっすらと赤く残されていく

まるで
薔薇のように・・

真澄の
タバコとコロンの混じった香り
マヤはその香りに
甘く酔っていく・・。
真澄の匂いと
甘い薔薇の香り

二人で見た
満天の星空

マヤは宇宙空間に漂っているような
感覚に包まれていた・・。

――― 体が何だかフワフワして・・不思議・・。凄く気持ちよくて・・速水さんが側に居てくれるから・・・・
      寂しくないし、怖くない。―――

気持ちよくて痺れるような感覚に包まれながらも
心臓の音は大きく早く打っている・・。
 体の奥が熱い・・!

どうしちゃったんだろう・・私。こんな感じ、初めてで・・

「・・はぁ・・っ・・速水さんっ・・」

体の中が・・熱いですっ 速水さん!!

熱くて 息も苦しい・・。

胸が締め付けられそうな・・

「マヤ・・?」
首筋にかかる真澄の吐息

吐息がかかるたび
首筋から
背筋に
ゾクゾク〜っと
甘い戦慄が走る。

そう 思考が停止してしまいそうな・・。


ズキン・・!!


あまりの鋭い痛みに
マヤは現実に引き戻される。

冷水を浴びせられたような
感覚が体中に走る。

「痛い!!」
叫ぶと同時に 真澄を突き飛ばしていた。

突き飛ばすと言っても せいぜい身体を少し反らせる程度のものだ。

「マヤ・・?」

突然のマヤの態度に 戸惑う真澄。


 い・・痛いって・・まだ何も・・いや、その・・キスマークはつけたが
そ・・そこまでで・・・・。

真澄の思考はプチパニックに・・。

「ご・・ごめんなさい!!」

転がるようにマヤは真澄から 布団から飛び出し

一目散に個室に駆け込んでいった。

ぼんやりとその姿を見守る真澄・・・・

視線の先に映ったものは・・・・・・・・・・ 


「御手洗い」の文字であった。



 ――― ど・・ど・・ど・・どうしてぇ〜!!!????

と・・突然 痛みが起こるなんて!? ―――



体の奥が熱くて熱くて
どうにかなりそうだった。

その熱さのせいで
痛みが起ったの??

悩みながら、座る・・。

「・・あ・・・・」


痛みの原因はすぐに判明した。


ど・・どうなっているの!?

1週間も早いよ〜。

く・・狂ったことなんて無かったのに・・。

体調が変わっていたのかしら・・?


・・・・それよりも・・

速水さんに
どういったら良いの〜!!


『あの〜・・なっちゃたので、できません』とか?

え??なっちゃたら出来ないよね??

『できるんだぞ?』とか言われたら・・??

え??なっちゃっても出来るの??

『相変わらず君は解っていないんだな?ちびちゃん』とか言われちゃう・・?

でも・・何だか、気持ち悪そう〜!!

うひゃ〜!!どうしたら良いの〜!!????



『ふっ・・出来るんだぞ?ちびちゃん』
と、言うかも・・と思われている真澄は・・・・

さっき、くしゃみをしていたな・・。
もしや・・からだが冷えて、腹を壊してしまったとか・・?

まずかったな・・。

あの時は春だったから、コートで大丈夫だった・・。
今回は 秋だからな・・・・冷え込み方が微妙に違ったのかも知れん。

大丈夫だろうか?


 ギイィィ〜・・・・パタン・・・・・・。


マヤがゆっくりと出て来た。
こっちに向かう足が 途中で止まる。

「大丈夫か?」

問いかけに対し こくん・・と頷いているが戸惑いの表情を浮かべている。


――― 蒼ざめた顔をしている・・そんなにショックだったのか!? ―――


俺は 無理をさせてしまったのだろうか?

しかし

同じ想いであったことを知ってしまった今となっては
もう想いを押さえることは出来ないんだ。
マヤ・・・・。

蒼ざめた顔に
決意を滲ませたマヤが
真澄のもとに歩みはじめた。

 「速水さん、私・・・・もう、子供じゃありません」
恥ずかしそうにマヤが言う。

 「ああ、解っているよ。マヤ・・・・」
真澄は、マヤが再び腕の中から消えないようにしっかりと抱きしめた。

抱きしめられた瞬間、マヤの体が飛び上がり
わずかに震え始めた。


どうしよう・・。速水さんに「ダメなの」って言うべきよね?
ゆ・・・・勇気が・・・・。


抱きしめた瞬間、マヤの体が驚き
震え出したのが
抱きしめた腕、手先を通じて伝わってくる。


怖がらせてしまったのか・・・・?
『大丈夫だ、心配するなマヤ。嫌なことはしないと約束する』


体の向きを変えようと動いた途端、
畳の上で足を滑らせてしまう。

「!」

崩れた態勢を敏捷な動きでバランスを戻すが、
弾みでよろけてしまい

ガツン!
と、壁に顔面を打ち付けてしまった!

「・・・・つっ・・・・」

ぽた・・ぽた・・

畳の上に落ちるものがあった。


「は・・速水さん!血が出てるっ」
マヤが慌ててハンカチを出して真澄の手当てをし始める。


真澄は 己の情けなさを思っていた。



『ここ一番に、足を滑らせたばかりか
顔面を強打し、鼻血たれ男になって介抱されるとは!』



真剣な表情で
真澄の手当てをしていたマヤが
クスクスと笑い始める。

そんなマヤを見ていると
自分でも何だか心が開放され
可笑しくなってくる。

「ふっ・・こんな俺は、まるで道化師のようだな?」

「え・・?どうしてですか?『速水さんまで出血してる』って思ったら可笑しくなっちゃたんですけど?」

「??俺まで・・?それってどういう・・」

マヤはハッとしたあと、見る見る真っ赤になっていく。

そんなマヤの様子を見ながら
真澄は頭の中で、時間を巻き戻してみる。


情報 分析 考察 結論


「・・・・・・」

しばし流れる沈黙の時間・・。


「なるほど、そういうことか」


速水真澄、恋には疎いがこういうことは回転が早い男である。

「そ・・そういうことって!ど・・どういうことですか!!」

マヤが更に真っ赤になって
大声で悲鳴のように叫ぶ。

「だから、子供じゃないんだろ?でもって『今月もやって来ました』って意味だろう?」

「何が?」

「だから、生理が」

「――――――――――っ!!!!!!!!!!」

「速水さんのイジワル〜!!そんなにストレートに言わなくたって良いじゃないですか!!!!」

「『今月も来た』と言っても君は解らなかっただろう?解り易く言っただけの話だぞ?どうしてそんなに怒るんだ?」

「速水さんは・・女心がぜーんぜん解ってません!!エロエロオヤジ〜!!」

「なっ!エロオヤジとは何だ!!君が子供なだけだろう!?」

「じゃあオジサン!乙女心わかってませんよ!」

「君は男心が解っていないじゃないか!君も結構鈍感なところがあるんだぞ!?」





「ちゅんちゅん・・・・」


ふと気がつくと

窓から明りが差し込み

雨上がりの

澄んだ夜明けの景色が広がっていた・・・・。





 東京 大都芸能社長室。

都会の空気も冷たくなり、秋の終わりを告げている。


「真澄様、梅の谷リゾート開発の件、阻止できましたのね?」
微笑みながら、出張から戻った真澄を出迎える水城秘書。

「・・・・」

真澄の返答がない。


――― ・・・・?
マヤちゃんと何かあったのかしら?
振られた?
いいえ、ありえないわ。
彼女は『紫のバラの人』の正体を知っているし
恋をしているのだから・・。――――――――



「・・・・リゾート開発の件だが、情報が全くつかめなかったんだ。
一体何処からの情報だったんだろう?」

「たしか・・会長だったのでは?」

「義父?」つまりは聖・・?いままでこんな事はなかったのに・・・・。

「・・義父は来ているのか?」

梅の谷から戻って自宅に寄らずに出社していたため、真澄は英介と
顔をあわせていなかったのだ。

「午後から会議ですのでお会いできますわ」

つまり、まだ来ていないということか・・・・。

「そうか」
真澄の表情が
仕事モードに切り替わる。

その変化を見て、水城秘書は思わず微笑を浮かべる。

『マヤちゃんと想いが通じ合ったようですわね。真澄様・・』
心の中で優しく思うのであった。



「速水さん、今度はいつ・・会えますか?」

「・・そういえば、明後日は君は休みだったな・・?
昼食を一緒に摂らないか?
打ち合わせに来たという名目なら大丈夫だ。」

「良いですね〜。楽しみです。12時に伺っていいンですか?」

「ああ、水城君には君が来ることを伝えておくよ。ケーキも用意しておくからな」

「ありがとう御座います!」


社長室でマヤと電話をしていると、水城が入ってきた。

目配せで対応する。

水城の表情や仕草から、会長が来たことを知った。

「じゃあ、明後日待っているぞ」
ゆっくりと受話器を置く。

と、同時に 会長が現われた。


「――――っ!!」


会長の姿を見た途端

真澄は白目になって固まってしまった。


「お・・・・お義父さん・・・・!」


英介は真っ黒に日焼けしていたのである。

「梅の谷の紅葉は良かったか?」
英介が意味深な表情で問いかける。


その言葉に思わず身構えてしまう真澄。

「リゾート開発の件でしょうか?あれはどうもガセネタだったようです」

「・・・・ふっ・・リゾート開発?聖のやつ、そう報告してきたのか」
怪しげな含み笑いをしながら英介は続ける。

「『梅の谷リゾート開発』か、それだとワシも駆けつけてしまうだろうな・・
なかなか良いアイディアだ!あははははははははははーーーーっ」

 最後には大笑いし始めてしまった。

「梅の谷を含むあの辺りは国有だ。もし、売買されるのであれば
いち早く情報はキャッチできるぞ?
そのためにも、きょいじゅみ首相とは懇意にしているのだ。」
英介は楽しそうに話す。

「僕を梅の谷に向かわすために・・?なぜ?」

「紅天女の願いだからじゃ。そうであろう?千草よ」
そう言いながら、入ってきたドアの方に視線を向ける。

真澄も視線を向けると
そこにはあの月影千草が
腕を組みながら立っていた。


「その通りよ。真澄さん、お久しぶりね。ふふふ」


どうなっているんだ?宿敵同士の二人が揃っているなんて・・。

「こんにちは、月影先生。
こんなところでお会いできるとは驚きましたね。
義父に私が
梅の谷に行くように依頼されたと聞きましたが・・?」

「ええ、そうよ。
マヤが塞ぎ込んでいてね。
そんなマヤを解き放てるのは
1人しかいないと思って。
おせっかいをしてしまったわけよ。」

「お前があの娘に惚れていることくらい
解っておったぞ?フフ・・」

真澄の顔がさっと赤くなる。

「・・・・ホホホホ。
やっぱり日本は良いわ〜。
おなかすいたわね。」千草が呟く。

「帰国が予定より
少し遅れてしまったからのう。
真澄、午後の会議は任せたぞ?
わしは千草と食事に行って来るぞ」

「えっ????」
 あの月影千草が・・速水英介と一緒に食事??


どうなっているんだ?


「真澄さん、不思議そうな顔。どうかして?」

「帰国とは・・・・?」

「ワシは千草とハワイに行っておったんじゃ(♪)」


―――――― ハ  ハワイ !!???? ――――――


「勿論、交換条件でね。
英介さん、さすが抜け目がないわね?フフフフ」

「千草よ、和食が良いかのう?
寿司なんかどうだ?」
 鼻の下を伸ばし、デレデレな英介が問う。

「良いわね。秋だからマツタケ尽くしでも良くってよ?
勿論、おみや付きで」
しっかりと、お高級モノを要求する千草。

英介はとても嬉しそうである。

交換条件でハワイ旅行か・・。勿論自腹。

 援交・・・・・・?

いや・・ちょっと違うか・・・・?

ファンっていう奴は何処までも馬鹿なんだな。
いくつになっても。

 (俺も同じか・・)


心の中で思わず自問自答し、苦笑してしまう真澄であった。



 ――― 茶飲み友達が出来て
奥様も老後は安泰(経済面含む)・・・・ ――――

と、微笑ましく見守る
源造も居たのだった。

 マヤ様も
速水さんと一緒になられれば
完璧でございますね。奥様。
「終わりよければ全てよし」
かのシェイクスピアも語っておりますゆえ・・。





明後日のお昼 大都芸能社長室。

真澄の会議終了を待つマヤ。

手には携帯電話。

覗き込んで微笑んでいる。

 社長室で待つように言われたあと
水城秘書より
「真澄からのプレゼント」と渡された物だ。

不器用なマヤのために、真澄の電話番号は登録されていた。

「二人だけの携帯電話だそうよ。良かったわね?マヤちゃん」
ウィンクしながら水城に言われ、真っ赤になって口ごもってしまった。

でも心の中は 幸せで溢れていた。

待ちうけ画面は
紅葉に輝く梅の谷。

メモリーの中には

雪に覆われる梅の谷
咲き乱れる梅の谷
すがすがしい夏の梅の谷

四季の姿が
真澄によって
登録されていた。

そして、
紅葉の中
二人で微笑む姿も・・・・。


二つに別れた魂が
再びめぐりあい、
陰陽相和して
ひとつとなるとき
人は神になる

新たな命を産むために・・・

その時に働く不思議な力

相手の魂を乞うる力・・・

出会えば
互いに惹かれあい
もう半分の自分を求めてやまない

それが恋

そう・・・
他には
何もいらない

同じ星に産まれ
めぐりあい
生きて
ここに存在していること

それだけで・・・・

紅天女の恋











終わり










sugar様コメント:
実はsugarも去年の秋終わりに作ったssがあります。
あまりにもしょぼいのですが・・ sugarの脳みそはこんな感じってことで笑って(?)いただければ嬉しく思います。
勝手に強引に添付しち'ゃいますね。
発作的に送ってしまいます。ひゃぁ〜!!ごめんなさい”!


紫苑より:
西のコメントの女王、sugarさんのデビュー作です。
sugarさん、デビューおめでとうございます!
笑いの渦に巻き込まれましたでしょう?もうサイコーですよ、sugarさん!
これは貴女さまにしか書けませんっ!(強調)
妄想、もうバンバンとオッケーです。これからもどんどん行っちゃってくださいねっ♪
sugarさん、このたびは誠にありがとうございました!

2006/1/17

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