90000番ゲット・ポン吉様リクエスト:
   ・ストーリー1:手紙風文章(まじめ)
   ・ストーリー2:風呂(爆マス)
   ・ストーリー3:少しおふざけ
   私の妄想ばかりなのでどれもこれもお願いしたいのですが,ただお絵描き隊の観点(競作意欲をアップさせること)からすると,
   ストーリー2が一番表現しやすいかもしれませんね。
 ※ということで、せっかく3通りリクエストを下さいましたので、欲張って3編の短編構成にしたいと思います。




Part1・ルビー:「手紙」〜『楽園にて』番外編




  バリ島旅行から帰国し、マヤにプロポーズした真澄は、さっそく英介にマヤを婚約者として紹介することを決めた。
たとえ、どう反対されようが、意志は固く、必ず結婚する。その意図を明らかにするために。

 いつものホテルの夜、もう眠ろうか、という頃合い、真澄はマヤに確認した。
「来週の日曜、家にきみを連れて行く。親父に会わせたい。正式に紹介したいんだ、婚約者として、な。」
「え?え、ええ…」
「都合はつくだろう?」
「ええ、大丈夫だけど…」
「…けど?なんだ?」
「…ううん、なんでもない。速水さんのお家に行くのって、初めてだから…」
「大丈夫だよ。何も心配することはない。いつも通りのマヤでいてくれていいんだ。」
「…判ってる。…ちょっと不安なだけよ。でも、大丈夫。」
そう、健気に言って、マヤはあえて気丈に微笑んで見せた。
その儚い笑顔が、なんとも真澄には愛おしく、真澄はひととき胸が熱くなった。
真澄はしっかりマヤを抱き直すと、甘い口づけを、深くマヤと交わした。
「おやすみ。」
「おやすみなさい…」
深夜もはるかに回っていた。


 真澄は、マヤの傍らで、いつものように、呼吸もしてないかのように、静かに眠りに落ちていた。
だが、マヤはなかなか寝付けなかった。
“あたしが…速水さんの奥さんになる…?ただ、紅天女の女優なだけで、もう両親もいないあたしが…”
“身分が違いすぎる…それに、速水さんは、母さんを死なせた人…ううん、それはあたしのせいだわ。
 あたしがきちんと、母さんが行方不明になる前から連絡を取り合っていれば、そんなことにはならなかった……。
 あたしはもう、それは納得してる…”
“でも…「速水家の嫁」なんて、やっぱり、あたしには無理なんじゃないかしら…”

ほうっ、と、やり場のない溜め息をつくと、マヤは寝返りを打って、真澄の腕枕から逃れた。
微睡みのなかで、真澄はそんなマヤに、気づくともなく気づいていた。



 その週末、日曜には、速水邸に赴こうかという日の数日前。
帰宅したマヤがマンションの郵便受けを覗くと、思わずドキリと、胸が音を立てて高鳴った。
長年のあいだ見覚えのある、「紫のバラのひと」の筆跡、つまり真澄からの手紙が、そこにひっそりと入っていた。
 マヤは宝物でも抱くようにそっと封筒を手に取ると、胸に抱いて、部屋へ戻った。
丁寧な封印を、高鳴る胸を押さえて、大事にマヤは封を切った。
真澄みずからの、マヤ宛の長い手紙だった。



『マヤへ

 思い返せば、ほんとうに、きみとは長いつきあいになる。
 きみは覚えているだろうか?初めて出会った時のことを。
 俺は長年の間、何度も思い返したものだ。
 『椿姫』の劇場に来ていたきみ。そして、月影先生の屋敷で演技していたきみ。オンディーヌで番犬に襲われたきみ。
 ほんの、小さな、いたいけな少女だった、マヤ。
 思えば、出会いの頃から、運命としか言いようのない絆で、きみと俺とは繰り返し出会っていたものだ。
 そして、40度の熱を押して、舞台をまっとうした『若草物語の』ベス役。
 あの演技を観た時の、俺の気持ち――こんな小さな少女に、これほど激しい生への情熱が溢れているとは。
 今でも俺はよく憶えている。あの時の俺の受けた衝撃。きみに激しく魅了された、自分自身を。
 その気持ちのまま、俺は紫のバラを、きみに贈った。
 そして、俺は、それまでの自分の生き方を、その時初めて疑ってみたのだった。
 それほど、きみは、きみの存在感を、強く俺に訴えかけた。
 きみの演技を観るたびに、舞台のごとに、俺はきみという存在を、ますます強く実感していったものだった。
 舞台でひたむきに燃え上がる、マヤ、きみが好きだった。ずっと、こころ惹かれていた。
 それが、俺の中で、マヤ、きみへのただひとつの愛に変わったのだ。
 そんな俺の想いは、一生叶うことはないのだと、俺は、一生、きみの紫の影なのだと、俺は自ら、自分を追いやって、
 紫織さんと婚約した。俺の中で紫のバラは一生枯れることはないと、知りながら。
 だが、それは間違いだった。
 もう少しで、俺は、人生を後悔するところだった。
 マヤ、まさか、きみが紫のバラの人の正体を知っているとは、夢にも考えなかった。
 そして、紫のバラの人としてではなく、俺自身を、きみもまた本心から愛していてくれると、きみ本人の口から聞き知った時。
 マヤ、きみをこの腕に抱いて、初めてきみと結ばれたときの俺の心からの感動は、とても言葉で言い表すことはできない。
 マヤ、俺は、自分の感情に不器用な男だ。そして、女性の女性らしい感情にも疎い。
 だからこそ、長年のあいだ、きみを苦しめてきた。済まなかったと、心から思う。
 だが、今はもう、繰り言は言うまい。
 これからは、生涯、俺は俺の全力できみを、そしてきみの舞台を守り、支えていく。
 それを、マヤ、きみに約束する。
 俺との結婚に、きみが引け目を感じる必要は全く無い。誰にも、決してとやかくは言わせない。この言葉を信じてくれ。
 俺と結婚してくれれば、きみは、ただ、マヤ、本来のきみらしく自然にあってくれさえすればいい。
 きみほど純粋で素直で、屈託がなく、そして、芯の強い女性ならば、俺との結婚も、必ずいい結果を生むと俺は信じている。
 ほんとうに長いこと、きみとの間には、いろいろなことがあった。思えば、長い道のりだった。
 だが、これから、マヤ、きみとふたり、ふたりで歩んでゆく人生のほうが、はるかに長いのだ。
 俺の一生をかけて、もう紫の影としてではなく、堂々と表舞台に立って、きみを支え、守ってゆきたい。
 俺の亡き母も、きっとそれを喜んでくれることと思う。
 必ず、きみを幸せにする。舞台の上でも。日々の生活でも。俺のすべてをかけて。
 俺の、誓いだ。どうか、受けとめてくれ。
 マヤ、きみこそ、俺の愛のすべて。俺の生き甲斐。
 きみなしの人生など、もはや俺には考えられない。
 愛している。マヤ、愛している。心から、愛している。
 どうか、勇気を出して、俺の差し出す腕に、飛び込んでくれ。
 あとは、なにも振り返らず、ふたりで、俺たちの人生をともに歩んでいこう。
 それを、誰憚ることなく、宣言しよう。
 まずは、日曜だ。それが、手始めだ。
 俺に、一生ついてきてくれ。
 俺の、ただひとつの真実、かえがえのない、生命、マヤ。
 
 愛する妻になる人へ。
 
    速水真澄。』



マヤの頬を、静かに、涙がとめどなく伝っては落ちた。そう、速水さん、私も、あなただけを愛します…。
勇気をふりしぼって、あなたの腕に、飛び込んでいきます…速水さん、どうか、私を、あなただけのものにしてください…。
ひととき、マヤは真摯に、祈り傾けた。



 日曜。午後一番に、真澄が車でマヤを迎えにきた。
マヤのマンションの玄関で、ふたりは真っ直ぐ見つめ合うと、しっかりと抱き合い、深く口づけた。
そして、真澄はその暖かな大きな手でマヤの手をしっかり包み込むと、マヤを促して、マンションを出た。
マヤが部屋に鍵をかける音が、廊下に小さく響いた。





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