written by ぱせり様
* * * * 『雨のリフレイン』6話より * * * 目の前すぐに、真澄の顔があった。いつもは見上げていたから、その近さにドキリとする。その表情にまた心を射抜かれる。真澄の瞳の中には明らかな男の 本能が揺らめいていた。いつも冷血だと評されている彼の中に、こんなに激しい情熱が隠されていたなんて…… 「もう……止められない…ぞ」 そして自分の中にこれほど真っ直ぐな欲求が生まれるなんて…… 「……はい」 触れていたい。 1ミリでも近く、体温を感じたい。 ――――はやくひとつになりたくて、狂おしいほど相手の魂を乞うる…… やっと出逢えたのだ。 魂の片割れに…… もう、離れる事など決して出来はしない―――― * * * * 6.5話 * * * * 真澄の長い指先が、マヤの胸元のボタンを一つずつ外して行く。肌に滑り込んでくる冷たい外気と、真澄にされているその行為に、肌が粟立つ。 「あ……あの…明る過ぎるから……」 照明を抑えているホテルの部屋だが、それでもすべてを曝け出すには恥ずかしい。 「分かった、暗くしよう」 真澄はそう言うと、枕元のパネルにある照明スイッチを捻った。少なくなったオレンジの光がベッドカバーの赤に反射して、どこか怪しい雰囲気を醸し出す。 「もっと……」 「ダメだ。これ以上暗くするとマヤが見えなくなる」 「……恥ずか…しい……」 「まだ、何もしてない。これからもっと恥ずかしい事をするぞ……」 いつもの意地悪そうな口調の真澄の言葉。 ――覚悟は出来ているんじゃないのか? と、軽くからかわれているようだ。 「大丈夫…だもん……」 「意地っ張りだな……」 頭上からカサカサという音がしてマヤがヘッドボードを見上げると、真澄が小さなラタンのボックスから何かを取り出しているのが見えた。 「それって……」 真澄はばつの悪そうな表情をしながらもマヤに手の中のものを見せた。5センチ四方の薄いビニールに包まれたもの…… 「こんな所で……と思ってたが、こういうのが用意してあるのは助かる……何か分かるか?」 「もう……それくらい保健体育の授業で見たことあります!」 「保健体育……」 真澄はクスクス笑っている。こういう方面には疎いと思われているらしい事は腹立たしいのだが、実際実践という意味では経験値ゼロなのだから、マヤは文句も言い返せない。 「どうせまだ子供です…から……!」 「子供相手にこんな事はしない」 唇が触れ合うと同時に、真澄の左手がマヤの背中に回った。背中が浮き上がると、今度は彼の右手がマヤのパジャマを巧みにたくし上げる。次の瞬間にはもうパジャマははぎ取られてしまっていた。雨に濡れてしまったから下着は着けていない。 一糸纏わぬ姿で、シーツの上に横たわる。 見つめられる。 あまりの恥ずかしさに声も出ない。 「おまえが大人になるのを、俺がどれだけ待っていたか……」 本当に子供だった頃から、ずっと見守ってきてくれていた人。 そしてその年月分、愛されていたのだと知り、マヤの心が再び熱くなる。 真澄もパジャマを脱ぎ捨てた。 初めて見る逞しい躯。普段はスーツの鎧で覆い隠されている彼の本当の姿。全身から男の色香が漂う……いや、そんな生易しいものではない。 猛々しく美しい雄だ。 覆い被さられる。大きなその躯に小さく細いマヤの体など、すべてすっぽり隠れてしまう。マヤにはもう、真澄しか見えない。 触れあう皮膚の感覚。冷房で冷えたマヤの体には、真澄の体温は熱く感じた。それが触れあううちに、だんだん同じ温度になって行く。初めて触れあうのに、どうしてこんなにぴったりなのだろう。あまりの気持ち良さに、目眩がしそうだ。 「初め会った頃はガリガリのちびっ子だったのにな……もう子供じゃない……こんなに……」 胸の膨らみを大きな手のひらで包み込まれる。 指が頂で踊る。 「ん……あっ…」 零れた吐息を、キスで浚われる。 キスは唇だけでなく、目蓋に、鼻に、頬にも降る。そして柔らかな耳朶を甘噛みされ、首筋を強く吸い上げられる。 真澄のキスは官能的だ……柔らかな唇、巧みな舌の動き。 堪らない。 ストレートな情熱をありったけ注がれるその行為に、マヤは痺れるような快感を胎内に孕む。ジンジンする……頭が。 そして臍の下の、奥深くで。 柔らかな膨らみを弄んでいた真澄の片方の手が脇腹を撫で、そのまま下へと降りて行った。指先は何かの模様を描くように臍の辺りを一周し、少しのためらいの後、柔らかな茂みをかき分ける。マヤは思わず太腿を閉じて侵入を阻もうとする。しかし真澄の膝がマヤの足の隙間に割り込んで、あっけなくこじ開けられてしまった。 そして茂みに隠されたその部分の表面を軽く撫でられる。 「あ………」 滑らかな感覚にマヤは自分でも、そこが既にぬかるんでいる事に気付いた。そして蠢く指の刺激によって、熱い粘液はまだまだ切ないほど溢れてくる。 「素直ないい体だ……」 褒められているらしいのだが、その言葉に淫らな欲望を指摘されているようで、マヤは居たたまれない心地になる。エアコンの音しかない静かな空間に、滴る雫をかき回す水音が響く。それはマヤの耳を犯し、脳髄を刺激する。 「あ……あんっ…!」 そして自分の声。高くそして甘ったるい、自分のものとは思えない声がまた興奮を高める。 「はじめは指で慣らすから……」 少し遠くなった意識の中に、真澄の声が響いた。 そこはまだ何ものも受け入れた事の無い場所。彼の一番長い指が滑り込む。十分に濡らしていたからか、それとも彼が巧みなのか……思ったより侵入は滑らかだ。それでも激しい異物感は否めない。マヤは目蓋を硬く閉じて、その感覚をやり過ごそうとする。 「……痛い…か?」 真澄は空いている方の手でマヤの額を撫で、労りの視線をマヤに注いでいる。薄目を開けたマヤの瞳に、そんな彼の優しい表情が映った。 「……痛い…というより、なんかとても変な…感じ…」 「これから多分、というかきっと辛くなるだろうから……その前に一度気持ち良くさせてやる……」 瞬時にマヤの頭はその言葉を理解出来なかったのだが、すぐ後、体でその言葉の意味を理解することになる。 マヤの胎内に潜り込んだ指が静かに動き出すと同時に、もう一本の指が一番敏感な芽を押しつぶすように擦り上げた。 「ひゃぁ……っ……」 そのあまりの刺激に逃げ出そうとよじる腰を、真澄は抱えた。足を折り曲げられ、開かされる。目の前すぐに迫る自分の白い膝……その向こうに柔らかな癖のある真澄の髪が揺れている。暖かい舌が蜜を舐めとる。指とは違うその柔らかな感覚に、身震いが走る。 「やっ………」 何をされても受け入れる覚悟は出来ていたマヤだが、その体勢と行為はさすがに恥ずかしかった。全身の血が沸騰しそうだ。逃げ出したい気持ちを堪えるように、マヤはシーツを硬く握りしめた。 「ヤダ……ヤダ……っ」 本音、そして、うらはら。 舌の動きは巧みだった……確実にマヤを追い上げる。 柔らかさで包み込む。舌先で小刻みに揺らし、擦り、吸い上げる。表現が追い付かないほど多彩な動きは、硬く閉じた蕾を確実に緩めて行く。 「あぁっ………も、いやぁぁぁ―――!!」 マヤは背中を弓なりに逸らすと、悲鳴を上げた。強い痺れが全身を駆け抜け、激しい痙攣を起こす。 それは初めて経験する限界点。 一瞬意識が途絶え、世界が白く霞む…… 「マヤ、大丈夫か?」 荒い息の下、茫然とした様子のマヤを真澄は上から優しく覗き込み、乱れた髪をそっと梳いた。マヤの体がピクリと震える。一度達した体は触れられれば痛みを感じるほど、敏感になっていた。返事など出来る状態ではなかったが、それでもマヤは真澄の顔をまっすぐ見て、ぎこちない笑みを返した。その笑みに真澄も堪らないほど優しい眼差しを向けた。 「暫く休憩しよう……」 真澄はそう言ってマヤのすぐ横に体をずらし、肘を付いてじっとマヤの顔を見つめた。少しずつ正気を取り戻しつつあるマヤは、真澄に至近距離で見つめられている事に、再び羞恥を覚え始めた。上手く力が入らない体はシーツの上に投げ出したままで、隠すものなど手の届く所にはない。もじもじと太腿に力を入れて擦り寄せる。両腕を胸の前で合わせてみる。 「今さら隠しても、もう全部見たぞ」 真澄はそんなマヤの行動がおかしくて仕方がないらしく、肩を震わせて笑いを堪えている。 「…じゃあ……も、見なくてもいいんじゃ……」 「いつまで見てても見飽きないさ……こんなに綺麗なのに……」 「…へっ……」 まさかそんな言葉を言われるなど予想もしていなかったマヤは、瞬時に全身を赤く染める。彼の口が達者だとは知っていたが、これほどまでに甘い言葉を吐くなど、想像しろと言うのが無理だ……目の前にいるのは、世間では仕事の鬼、冷血漢だと言われている男なのだから。 スッと真澄の指先が、マヤの脇腹を撫でた。 「ひゃぁあああっ!!!」 マヤは堪らず悲鳴を上げた。まだ先程の余韻が色濃く残る体はその刺激にビクビクと震えた。 「そして、とても敏感で……いい」 「もう、速水さん、やっぱりいじめっ子だ……!!」 真澄はマヤの反応を本当に楽しそうな表情で眺めている。その様子にマヤが腹を立てる。こんな状況ですらいつもと変わりないやり取りになってしまうあたりに、これまでふたりが接して来た時間の長さを思わせた。 「苛めてなんてないさ……これもコミュニケーションだ」 「う〜……」 「さて、もう休憩は終わりだ」 ほのぼのムードになりかけたのを、真澄のその一言が引き戻す。そしてあっという間に、真澄はマヤの上に覆い被さった。再開の合図は濃厚な口付け。同時に太腿の隙間に指が潜り込む。真澄はもう一方の手でマヤの膝を持ち上げ、開かせる。 侵入する。まずは一番長い指。 先程見つけてあった、敏感な所を何度も往復させる。一度達して充血した内部は指にぴたりと絡み付く。再び溢れ出す熱い滴りを混ぜる卑猥な水音が、一段と大きく響いた。 「ん…あっ……」 一度快感を覚えた体は、先程よも素直に反応した。 ピクリと跳ねた胸の頂を真澄は口に含んだ。舌先で突起を舐めて転がし、吸い上げる。軽く歯を立てて甘噛みする。 「っや……ぁあ!」 その刺激で真澄の指を銜えこんでいる部分が大きく収縮する。もっと熱い蜜が溢れてくる。その甘い密に誘われるように、二本目の指が内部へと侵入した。ずいぶんと内部が柔らかくほぐされてきているからか、痛みはほとんど無い。 「マヤ……もう俺の我慢も限界だ……」 真澄は苦しそうな笑顔でマヤの顔を覗き込むと、キスを一つ落とした。マヤの中から指を引き抜くと真澄は体を起こす。そして背を向けて、先ほどヘッドボードに用意してあったものを手に取った。 「コラ……恥ずかしいから、見るな」 マヤも真澄のすべてを見るのは正直な所かなり恥ずかしいのだが、好奇心が勝ってしまったのだ。自分ばかりが体中を見られてしまって不公平だとも思った。それにあの真澄が本気で照れている様子が、堪らなくおかしい。 しかしクスリと笑みが零れたその時にはもう、マヤは真澄に組み敷かれていた。 「力を抜いていろ……」 あまりの展開の早さに、マヤの思考は追い付かない。足を抱えられ、開かされ、その間に真澄の大きな体が割り込む。熱く大きな塊が押し宛てられる。 「い…………っ…」 もう、痛い、という言葉でさえ言葉にならなかった。指とは比べものにならない、圧倒的な存在感。狭い入り口をこじ開けられ、押し広げられ、ゆっくりと奥まで穿たれる。 「マヤ……息を吐いて……」 「ム……はぁ…っ……」 痛みを通り越して、激しい熱さが下腹部を貫いている。呼吸のし方さえ分からなくなる。けれどもこれは紛れも無く自分が望んだことなのだ。 1ミリでも近く彼を感じていたい。早く一つになりたいと…… 痛いだろう事は覚悟出来ていたはずなのに、彼の前でもう泣きたくなど無かったのに、みっともなく涙が溢れてくる。 「もう、おまえを泣かせたくなんて無かったのにな……こればかりは、俺もどうにもしてやれない……」 そう言って、真澄は涙を舐めとるようにマヤの目蓋にキスをした。 「あ……」 今、ふたり同じ事を思っていた。そう、もう涙などふたりの間にはいらないと思っていたのに、マヤの顔は涙でぐちゃぐちゃだ。けれども涙を通して想いが交差する。繋がった体から心まで同調する。 この痛みにも意味があるのかもしれない。 確かに今、繋がっている。 体も、心も。 「暫くこのまま…慣れるまで……」 繋がったまま真澄は動きを止めた。だからといってすぐに痛みが和らぐ訳ではないのだが、真澄が気遣ってくれている事は分かった。マヤは硬く閉じていた目蓋を薄く開いて間近に迫った真澄の顔を見ると、予想外に彼も苦しそうに眉間を寄せていた。 「速水…さんも、苦しい…の?」 「苦しいには苦しいが……どっちかと言うと…気持ちいい…な……」 「何だか……それ、ズルイ……」 狭く締め付けられる感覚に、早くすべてを吐き出してしまいたい男の生理的欲求などマヤには分かる訳ないのだが、主導権を握っている立場として真澄は余裕を見せたいから笑顔で堪えているのだ。 「確かに狡いな……」 「でも、速水さんがいいなら……それで…いい…」 こんな自分でも彼に与えられるものがあるなら、痛みなどどうでもいい…… 「今このまま世界が終わってもいいくらい……俺は幸せだ……」 「あたしも……幸せ……」 唇でも繋がる。深く交わる……上と下で…… 隙間無く抱きしめる。 動き出す。 ゆっくりと、ゆっくりと引き抜かれる。中を侵食していた塊が出て行く開放感と同時に、強烈な切なさが体を駆け抜ける。こんなにも苦しいのに、出て行かないでと、真澄の背中に回した手に力を込める。 そして同じ速度でまた中へと戻って行く。ごくゆっくりした速度でだが、痛みはやはり伴う。それでも確かに感じる存在に安心して、マヤは身を委ねる。 まるでゆるやかに波の上で漂うように…… 真澄は大きな海だ。 全てを包みこんでくれる、かけがえの無い存在。 波は次第に大きくなって、マヤを揺らす。 けれどももう大丈夫……心も体も遭難したりはしない。 確かに繋がっている。 唇で、腕で、体で……そして…… 「マヤ……愛してる……」 最後の波と共に耳元で囁かれた言葉に、再び涙が零れた。 「……速水さん……愛してる……」 ――――その瞬間、心も一つになる。 END |
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