続・ひとり 桃色吐息編







献辞
−−−この一作をひいらぎ女史に捧ぐ。
長年に渡る女史の私への真摯な誠意と厚き友情のために。−−−



「桃色吐息」
咲かせて 咲かせて 桃色吐息
あなたに 抱かれて こぼれる華になる

海の色に染まる ギリシャのワイン
抱かれるたび 素肌 夕焼けになる
ふたりして夜に 漕ぎ出すけれど
誰も愛の国を 見たことがない
寂しいものは あなたの言葉
異国の響きに似て
 不思議
金色 銀色 桃色吐息
綺麗と 言われる 時は短すぎて

明かり採りの窓に 月は欠けてく
女たちは そっと 呪文をかける
愛が遠くへと 行かないように
きらびやかな夢で 縛りつけたい
さよならよりも せつないものは
あなたのやさしさ なぜ?
 不思議
金色 銀色 桃色吐息
綺麗と 言われる 時は短すぎて

咲かせて 咲かせて 桃色吐息
あなたに 抱かれて こぼれる華になる






こんな夜は速水さん あなたに会いたい。
こんな夜は速水さん あなたが恋しい。
速水さん 傍にいて。あたしを抱いて。
囁きを交わして 眼差しを交わして、
あなたの腕(かいな)にいだかれて、
見るひと夜の夢は きっと薔薇色。
愛した人はあなただけ。
会いたくて 会いたくて
くちづけをして欲しかったの でも。
恥ずかしくて、笑っていた、あたし。
速水さん あなたの暖かい、広い胸。
速水さん あなたの力強い両腕。
あたしを抱く、あなたの温もり。
あなたの吐息、あなたの囁き あなたの眼差し。
あなたの胸に顔をうずめて、
あなたに頬寄せて、
あなたの腕の中で、あたしは思い切りのけぞる、
あなたの与えてくれる果てしもない快楽に。
速水さん、あなたと遠く離れて、
今夜あたしの肩は、うすら寒いの。
自分で自分を抱き締めても、ただ虚しいばかり。
速水さん、あなたに包まれたい…。
速水さん、あたしを抱くあなた…。
速水さん、素敵。
速水さん、好き。
こんな夜は、速水さん、今こそあなたに、抱かれたい…。






日中の仕事の疲れでマヤは身体こそ物憂くだるかったが、
夜のしじまのさなか、却って神経は冴えて、眠るに眠れなかった。
浅い眠りに落ちたかと思うと、ふと、
傍らに真澄の温もりが俄に思い起こされて、
マヤはそぞろ虚ろな独り寝のベッドに転々と寝返りを打った。

“マヤ…”

呼びかけてくる真澄の、あの甘い蠱惑の囁きがはっきりとその刹那、
マヤの耳に甦った。
穏やかで涼しげな張りのある真澄の声が、マヤを誘惑して、途方もなく甘く響く、その瞬(たまゆら)。
そしてマヤは真澄が誘う性愛の幻惑のその深い淵へ、自ら身を躍らせた。




真澄にいざなわれ真澄に導かれる性愛のその目眩く悦楽。
遠い空隔て真澄と離れていても、
真澄の背に回したマヤの両腕に残る真澄の逞しい背中のその感触は
今なおマヤの肌に鮮やかだった。



指先でそっと、乾いたくちびるに触れてみる。
真澄の接吻の、あの巧みな感覚の交歓。
変化に富んだ、その接吻。性へのいざない。
くちびるにそんな性感が存在することを、マヤは真澄に初めて教えられた。
真澄のくちびるは弾力に富み、いつもしっとりとマヤのくちびるを押し包み、忍び込み、
マヤの総身に快楽の戦慄を奔らせる。
額に、頬に、耳朶に、髪に、真澄の接吻が降り注ぐその時。
呼び起こされる性感はマヤの花芯にじかに響いて行く。
連動しているのだ、感覚が。その不思議。慄き。
真澄に導かれ、真澄に造型されゆく、マヤの豊饒な性。
今、こぼれるばかりに花開こうとする。
真澄の妖しい舌戯がマヤの耳孔を責め立てたその時。
マヤの感覚は一気に震えた。
耳の中を舐られる。その淫靡な快感。
その鮮明な感覚の再現に、マヤは思わずベッドで独り、身を捩った。
擽られるばかりでは無い。明瞭に性の陶酔を呼び起こす真澄の舌の感触。
自分の躰のそんな処にも性感があろうとは。
マヤは知らなかった。
耳孔が真澄の熱した舌で舐られる、えもいえぬその快感。
岸辺に寄せては返す波のように、
快楽のさざなみは繰り返し繰り返し、全身に広がってゆく。

性の岸辺。それは時の夢。
かぎろい。
たゆたい。

永遠の悠久を遥かに眺望する。
ひととき、性の境の夢に酔えば、そこは人知れぬ迷路の果ての異つ国。
真澄に導かれ、真澄と手を携えて歩み入る、そこは彼方の桃源郷。
そのまことの夢、遥か。
そのあわいの粋、遥か。
エロスの饗宴。銀の星、煌めく。

真澄の猛々しい、熱い高ぶりが大腿に押しつけられて、
真澄にしっかりと全身を抱擁される、その確かな真澄の温もり。
マヤには無性にそれが恋しかった。
慕わしかった。
狂おしく妖しい、一夜の褥のそれら一刻が。



速水さん…



そっと、その名を心の裡に呼んでみる。
真澄の声が闇のしじま、マヤの記憶に呼び起こされる。
マヤに呼びかける真澄の深い響きのその魅惑。
マヤの視界は深紅に染まる。マヤはその虜。

真澄の愛撫が恋しくて、マヤは密かに乳房に触れてみる。
先端の頂きは敏感に窄まって、幽かな痛みを伴い、
指先でそこに軽く触れるだけで、疼く甘い感覚はマヤの躰の中心に連動していく。
どれほどか巧みに、真澄はそこを舌と唇で弄ぶことだろうか。
舐り、吸い上げ、尖らせた舌先でつつく。
ありありと甦る真澄の愛戯の感覚に、マヤは熱い吐息を漏らした。
気分は淫蕩に乱れていく。
軽く爪を立てて、脇腹をなぞってみる。
真澄がいつもそうするように。
瞬間、粟立つような性感がマヤの肌を襲った。



ああ 速水さん…



真澄に彫刻され、真澄に造型されてきた、マヤの性。
今、真澄を求めて、マヤは恋い焦がれる。
淫奔に高揚する全身の感覚は研ぎ澄まされて、
マヤは刹那、真澄の肌の熱さの幻惑に捕らわれる。
雪のように真白いマヤの肌にあえかに薄桃色に色づく乳霞。
震える感覚に、次第に潤ってくる、秘められた内奥。

花芯が、熱い。
花芯が、疼く。

十分に待ち焦がれたそこに、真澄の愛撫の手が伸びる時。
その瞬間を求めて、ついにマヤはこの時初めて、真澄に教えられた通り腕を伸ばして、
人差し指の指先で、疼く熱い蕾に触れた。
そこは熱を持ってすでに大きく膨らみ、誰の愛撫をも焦がれていた。
思わずマヤは、腰を浮かした。
触れただけで、快楽は矢のように全身を貫いた。
思わず両脚を広げる。


速水さん…!


恋しいひと。
想いは募る。
とめどなく。



さらに強い快楽を求めて、肥大した蕾を指先で刺激した。
規則正しく。リズムを刻んで。
真澄の愛撫同様に。
真澄に教えられた通り。
その愛撫に、我知らず熱中する。果てしもなく。
その時間は永遠に続くとも、ほんの一瞬のこととも思われた。
快感は俄に高まった。
そしてふと、真澄の囁きが聞こえてくる。
思わず左手で乳房を揺さぶった。
真澄に教え込まれた情欲というもの、そのほむらは、この時一際強く燃えあがる。
やがて秘められた花弁からは、しづく愛蜜がしっとりと溢れてきた。
そう、真澄はそれを掬って、至極感じ易いその蕾をたっぷりと潤すのだ。
真澄のその指の感触を思い起こすだけで、性の情念はいやまして高ぶっていく。

鼓動が早まる。
呼吸が早まる。

感じる。幾らでも。今、この時。
濡れる。また、濡れる。
疼く。花芯が。
甘く、痺れる。
途方もなく。
熱い吐息は、この時、桃色。




抱き締めて。速水さん、お願い。もっと強く。




自分を抱く真澄の熱い躰がまざまざと甦る。
貫かれたい。
あの真澄の逞しい巨きなもので。
思い切り。


熟した果実は、真澄のその熱で、すぐさま蕩けるだろう。


欲しい。真澄のあの強烈な男根が。
貫かれる、その感覚が。


性感は急速に高まった。




挿れて。ねえ、お願い
ねえ、早く
もう、挿れて
ちょうだい 早く 早く
ねえ、もう、あたし…
だめ… 濡れちゃう…
お願い して、して
もう、もう…。ああ…
欲しいの、ねえ、欲しい…挿れて…




真澄に取り縋って懇願するその淫らな妄想は、ますますもの狂おしく心を乱し、
秘匿された花芯の疼きをさらに増す。
秘所はしとどに露にまみれ、内奥は熱く疼いて、もう堪らない。
欲情で、気が遠くなる。
右手で愛撫を続けながら、たまらずに、左手の指を一本、
そっと内部に差し入れてみた。
潤みに潤んだ内壁はまるでとろけるようで、この世でこんな感触があろうとは、
まるで思ってもみなかった。

真澄は知っているのだ、この感触を。
そして、真澄こそ、この内部を支配する、唯一人の男。

いつも真澄はあの長い美しい指2本をここに差し入れ、
右に左に、縦に横に、強く弱く、巧みに性感を誘導する。
その真澄の指が導く性感を求めて、
真澄の愛戯そのままに、内部を指で刺激した。
愛液は幾らでも溢れに溢れ、秘所すべてを濡らす。
外部の蕾と内奥への刺戟。
その強烈な快感は連動している。
自分でもそうとはっきりと判る。
その肉体の不思議。
夢中で、その刺戟に喘ぎ続ける。



あ、あ、あぁ…



“いいか…?マヤ…?”



いい、いいの…
いい…
ああ、いい…




好きよ、速水さん
好き…
ねえ、いいの、
ああ、あっ…
いい、いい…
感じる…




真澄との、濃い媾いのひととき。
その幻想が今、鮮やかに脳裏に巡る。
瞼閉じれば、視界は既に桃色の坩堝。
官能は脳髄の奥深い秘められた記憶を揺り起こす。
太古の海。最初の細胞分裂。
時の夢はひといきに巡り、人の性の交歓へと至る。



“マヤ…”



呼びかけはいつも心酔わす睦言。
耳に吹きかけられる熱い息。


速水さん、速水さん…



蕾は一層肥大し、内壁の入り口近くが俄に肥厚してくる。
エロスの窮みが近い。
血流はひととき激しく総身を巡り、瞬く間に胸の鼓動が高まった。
左手を烈しく揺さぶると、内奥の襞が屹立して
愛液にまみれた指に絡みつき、
入り口のすぐ上のざらついた丘のその脇に、一点、酷く感じる場所がある。
そこを夢中でまさぐった。



あ、あ、ああ…



初めはゆっくりと、だが次第に急に、
指を飲み込んだ内部の入り口が蠕動を始めた。
目眩く絶頂、それはすぐそこだ。
朦朧とした意識に、本能がそう告げる。

思い切り強く、両手で秘所を擦りあげた。
快楽の大波が襲い来る。
愛液は滾々と湧きいでた。




いく、いく、いくぅ




あっ
あっ
あぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーー









秘所の痙攣は烈しく長く続いた。
絶頂。







初めての、それはひとりで迎えた、絶頂だった。






夢とうつつの狭間、ようよう乱れた呼吸の整う頃。
マヤはがっくりと枕に肩を落とした。
一気に弛緩した神経にも、ひとりの寝床はただひたすらに虚ろだった。
官能に溺れた快楽の余韻は、じき去った。


今、マヤはひとり。
ひとり、真澄の腕枕を夢見る。
ひとり、真澄に寄り添って眠る一夜を夢見る。
速水さん、早く逢いたい。
でも、今は、ひとり。
今だけは、いい。
速水さん、あなたを想っていられるから。
速水さん、今度逢ったら…
あなたに抱かれて こぼれる花になる…。




いつかしらず、マヤは深い眠りに落ちていった。
ひとり。











終わり









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