続・ひとり







どうして どうして
忘れることができよう
マヤ おまえは
マヤ おまえは
春の宵闇に香る梅の馨のようだった

面影は今も熱く この胸に刻まれ
面影を慕い求め あてどなく彷徨う
マヤ お前と出会った時から
世界は 姿を変えた
ただ一つの瞳 ただ一つの声 ただ一つの魂と
俺のすべては結ばれたのだ

振り向けば この心の荒野に 明るく微笑む マヤ おまえの面影
振り向けば この心の荒野に 優しく微笑む マヤ おまえの面影







早春。春の深夜。闇の色はあやなく朧に月に影が差す。


この夜空の彼方遠く、マヤ、おまえは今どうしている?


馥郁たる梅の香。
それは真澄にとってはいつもただマヤ一人を思い起こさせた。
この深夜の帳の中、真澄の社長室に梅の香が薫る筈も無い。
だが。
時空を隔てるほど、真澄は俄にその花の香りが漂ってくる幻覚すら覚えた。
雪霜に色よく花の魁(さきが)けて 散りても後に匂ふ梅が香。


マヤ、おまえを抱きたい。
マヤ、おまえをおもうさまこの俺の性で、蹂躙してしまいたい。


昨夜もそうして、真澄は独り、マヤを想って自慰に耽った。
そして、今宵、今また。




真澄に支配され真澄に喜悦の極みに導かれ
戦き震えるマヤの「おんな」。
のけぞるマヤの真白い喉元。
潤む瞳。ときめく心臓。愛撫さながらの呼吸。
真澄には今しもそれらが目に浮かぶようだった。
それらに思い馳せれば、我知らず、真澄の男根は熱く充血し熱を帯びてくる。
椅子に座しながら股間が、熱い。熱く、其処が、疼く。
痺れるがごときその熱感。
真澄は着衣の上からゆっくりと右手の掌で股間を覆った。
欲情に乾いたくちびるを、舌で潤す。
すると、マヤの秘所の蕾をくちびるで挟んだ時の感触が俄に甦った。
舐めたい、そこを。
そこを、舐めたい。
この舌で。幾らでも。
舐め、甘噛みし、尖らせた舌先でつつき、むしゃぶり屠り尽くす。
その時の、えもいえぬ甘い陶酔。その蠱惑。
マヤの秘所のその蕾の感触が、俄に露わに真澄のくちびるにありありと蘇生する。
その一刻が、今は無性に恋しくてならない。
かぐわしい、マヤの吐息。吐息すら、花の香り。
真澄は掌で、熱く疼く自らを数度擦った。
より確かな快感、より激しい刺戟を求めて、
真澄には忌々しい着衣が酷く邪魔なものに感じられた。
真澄の全裸の身体の下で目眩く快感に身悶えるマヤのあられもない姿態が
今しがたのことのように真澄の脳裏に浮かぶ。
真澄はもどかしくベルトを外すとファスナーを下ろし下着から熱く疼くそれを引きずり出した。

男根は既に十分に充血し、ひやりとした外気に晒されて一瞬びくりと引き攣った。
そうだ、この、昂ぶり。
この、巨きさ。熱。



マヤ、欲しいか?



マヤが焦れて真澄のそれを乞うさまを、真澄は思い起こした。
右手の掌をたっぷりと唾液で濡らすと、
真澄は親指を下にして男根を思い切り強く握った。
そして堪らずに、真澄は男根を数度、強く扱いた。
その刺戟に真澄は吐息を漏らす。
足の爪先から全身に快楽の戦慄が奔る。
そう、俺のこれで、マヤの「おんな」を、思い切り突き刺すのだ。
真澄を求めてマヤの愛液がしどとに溢れマヤの大腿までたっぷりと濡れていく。
マヤの女の部分から溢れるその蜜が薄闇にほんのりと光る、その時。
その時の、蠱惑。悦楽。
それを思い馳せ、真澄は己の男根をきつく扱いた。
真澄の眉間に、マヤの嬌態が浮かぶ。
真澄は左手で根元を強く下に引き下げて固定し、
反り返り仰向く男根がより直立できるよう椅子の腰をずらした。
そして、両足を床に突っ張る。



ああ、マヤ、
マヤ、おまえ…。



真澄は天を突く男根を激しい勢いでリズミカルに右手で擦り続けた。
その刺戟で真澄の男根はいっそう大きさを増し、硬度を増して、
妖しく欲情し続けた。

真澄の舌戯だけでとめどなく熱く濡れて愛液を溢れさせ、
真澄の指の刺戟だけで幾度となく繰り返し絶頂に達する
縦に長く伸びて痙攣するマヤの「おんな」。
幾度となく目にしても飽かずそれは真澄の官能を果てしもなく誘う。
男根への強い刺激で、真澄の呼吸は荒く乱れる。
その先端からは官能の滴が幽かに滲み出てきていた。
それが薄明かりにほの白く透明に光る。
眉根を寄せ、真澄は襲い来る快感の大波にじっと耐える。


まだだ、まだ。もっとだ…。


真澄は官能の愉楽にはただ邪魔なだけの着衣は
下着ごと全て脱ぎ捨て、昨夜と同様にソファに倒れ込んだ。
今夜は仰向けに横になる。
そして、快楽がただ男根だけに集中するよう、
四肢を伸ばした。
左手で根元を固定し、度々唾液で右手を濡らしては、
右の五本の指を巧みに滑らせて、巨きなその形の良いペニスを上下に激しく愛撫する。
真澄は瞼を閉じた。
すると鮮明に、性の愉楽を訴えるマヤの媚態が脳裏に浮かんだ。



マヤ…こんなにして…。



真澄の脳裏でマヤの全身は快楽に震えていた。



“ねえ…おねがい…、して…、して…。”

“あん…ねぇ…もう、も…う…、”

“…欲しいの…ねぇ、欲しい…。して…。”


その懇願。真澄はいつも溜飲を下げる思い。
真澄の男根に貫かれることを欲してやまぬ
マヤの熟した待ち焦がれた「おんな」。
そう、そこは熱く濡れ、しづく愛液にまみれている。


そうか…そんなに欲しいか…?


真澄は幾度も眉根を寄せてはペニスに集中する
途方もなく熱い快感に耐え、
いっそう右手を激しく上下させた。
真澄の呼吸は乱れに乱れる。
沈黙の中、真澄の荒い息遣いだけが、部屋に響く。
だが真澄には、もう何も聞こえない。
ただマヤの幻だけが、其処にある。



よし…挿れてやる…。



真澄は自分の両脚でマヤの大腿を思い切り広げる瞬間に思い馳せた。
そして、握り締めたペニスに力をこめる。
真澄は腰を浮かせた。
そしてマヤの「おんな」を差し貫くその瞬間を思い起こした。



“あぁぁぁぁぁぁぁーーーーーー”



マヤの歔欷の声すら、聞こえてきそうだった。
真澄は思い切り仰け反った。
そして両脚を突っ張る。


そうか。いいか?マヤ…?


マヤの濡れそぼった熱いやわやわとした襞に包まれる感触の代わりに、
真澄は今度は両手でペニスをじんわりと握った。
左手で筒を握り、右手の指で先端の括れと先端を丁寧に撫でさする。
こうすると、マヤの「おんな」のざらついた丘をペニスで擦っているようだ。


感極まったマヤが譫言のように口にする。いつもの睦言。

“好き…好きよ…好きなの…”

“速水さん…好き…好き…”


ああ。俺もだ。マヤ…。



真澄は右手の指で輪を作り先端の括れに引っかけてそれをねぶった。
何度も。何度も。何度も。
繰り返し。繰り返し。繰り返し。
ひりひりと、途方もなく熱く痺れる快感が真澄を襲う。
真澄のペニスもまた、露にまみれていた。
そして静脈が浮き出て、俄にみるみる硬くなり大きさを増した。
「その時」の、終わりが近い。
真澄とて男である。自慰の快楽の術は知り尽くしている。
真澄のひんやりとした袋は淫蕩に収縮を繰り返し、
袋から続く後ろの窄みにかけた滑らかな薄い皮膚は
官能の焔にひととき、赤みを増した。

“はやみ…さん…いくっ、いくぅぅぅ…いっちゃう…”

“ああっ…いくぅっ…!”


よし。マヤ。いかせてやる…。そら。
どうだ?


真澄は息を詰め、ペニスを握り直した。
そして激しい勢いでペニスを上下に擦った。
真澄の腰は浮き、股を開いて脚にこの時とばかりに力が入った。
真澄に一気に寄せてくる
欲情の嵐。
快感の大波。
続けざまの絶頂感。
その時、が来た。


はあっ!あぅっ!


思い切り気を吐いて甲高い声を上げ、真澄は達した。
そして大量の白濁した粘液を左手の掌で受け止めた。




マヤ……。


…。







乱れる真澄の荒い呼吸。早鐘のような心臓の音。
それだけが、真澄に聞こえるすべて。
世界は音もなく沈黙して、
真澄だけを果てしもない寂寞たる孤独の淵に落として行った。


目眩く絶頂の後。
全身を矢のように貫いた快楽はやがて緩やかに真澄から去っていった。
そして遠浅の岸辺に取り残された小舟のように
身動きもままならぬ疲労と倦怠感と虚脱感だけが
真澄に残った。
真澄は放心して、ソファに四肢を投げ出した。
マヤの性の幻惑は跡形もなく消え去り、
部屋の調度がただ白々しく空々しく
真澄の眼に映った。


やりきれない…。


だが、いいだろう。
この次、マヤとの逢瀬には…。
思うさまあの魅惑の媾いを愉しむのだ…。
マヤが気を失うまで、存分に抱いてやる…。
だが、今はただ…。
この無聊に自らを憐れんでいればいい…。


激しかった息遣いもようよう落ち着く頃、
いつしか、そうとも知らず、
真澄は浅い眠りに落ちていった。
その真澄の浅い眠りの中で見るマヤの夢は…。

それは愛する女の匂い立つ色香。
胸焦がす、その熱い愛。
目覚めれば、また花の香の幻惑に晒されるだろうか。
だが今だけは、いい。
ひとり、真澄は眠る。
ひとり、真澄は夢見る。
その時、真澄は、
ひとり。











終わり









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