400000番ゲットsakura様リクエスト: マヤちゃんと真澄さんの設定は新婚さんです。 大都芸能社の40周記念パーティを催すことは 設定に無理がありますか? それと同時に紅天女の公演の観客動員数が40万人を迎えたので あわせてのお祝い。 劇場の客員数を2000人で設定すると200回目で40万人を迎えれるのですが、1000人に設定すると400回目。 新婚さんと言う設定で公演400回と40万人動員と 40周年パーティを一緒にするって話は無理がありますでしょうか? 電卓をたたきながら、40万って数字を使いたく 考えました。 甘甘のふたりでお願いします。 ※ということで、リクエストを踏まえまして参りたいと思います。 |
煌々と煌めくシャンデリア。さんざめく人の声。今、まさに華やかな宴が執り行われようとしていた。 帝国ホテル、富士の間。午後7時少し前。 晴れて真澄がマヤを妻に迎え、初めての結婚記念日も迎えようかという盛りの春の日。 この年大都芸能は創立40周年を迎え、おりしも、『紅天女』公演観客動員数も40万人を超えた。 それを記念して、真澄は記念パーティを催すことにした。 演劇関係者、俳優陣、報道陣、合わせて500名を招待し、大都芸能が主催する春の夜の宴席である。 続々と招待客も会場に到着し、宴席の始まりを待ちわびていた。 大都芸能本社から帝国ホテルに到着した真澄は、富士の間の控え室をノックした。 「マヤ、準備はいいか?」 「入って、速水さん。」 ドアの内側から、マヤが答える。 真澄は控え室に歩み入った。 その日は月に一度の『紅天女』公演の休演日。 「食事は済ませてきたか?パーティの間、しばらくは食べられないぞ。」 「うん、しっかり食べてきた。速水さんは?」 「ああ。俺も済ませて来たよ。」 マヤは控え室でヘアメイクを施され、宴席の主役を務める準備に余念がなかった。 髪をアップに纏め、この日のために特注した紅梅色に梅の地模様のシルクのカクテルドレスを身に纏い、 同じく特注した、ルビーで紅梅をかたどった飾りを散らしたプラチナのティアラを髪に飾り、 同じ紅梅型のルビーのイヤリング。ふんだんにルビーの紅梅をあしらったネックレスで襟元を飾った。 鮮やかな紅色のドレスは、マヤの剥き出しの華奢な白い肩と頸筋の透けるような色白の肌によく映えて、 えもいえぬ若妻の妖艶な色香を漂わせ、真澄の眼を満足させた。 口紅はサンローランの19番。スタイリストが紅筆に口紅を取り、丁寧にマヤのくちびるに塗っていく。 そしていったんパウダーで口紅を抑えると、再び口紅を塗り重ねた。こうしておくと、口紅は落ちにくい。 その上から、シャネルのリップグロスを塗り重ねた。マヤのくちびるは、濡れたように艶々と輝いた。 濃いめのメイクの仕上げに、たっぷりとパウダーを顔全体にブラシで掃き、つややかな頬にはマヤの自然の赤みがさした。 香水は、「エタニティ」。春らしい味わいのある香りである。スタイリストがマヤの首筋と手首に香水を擦り込んだ。 独特の甘く芳しい香りが、フワリと香って、真澄の鼻孔を擽った。 「さ、出来上がりましたよ、マヤさん。」 スタイリストに声をかけられて、マヤは鏡の前に立ち上がった。 「どう?速水さん?」 マヤは真澄にくるりと回って見せた。 「ああ、上出来だ。奥さん。」 「そう、良かった…。」 マヤは恥ずかしそうに微笑んで、頼りなげだった眼差しには、仄かな自信の光が灯った。 「綺麗だ。マヤ。」 うつくしく着飾ったマヤ。真澄はあらためてマヤを愛おしく思う。マヤの初々しい含羞が、いっそう真澄の想いを募らせる。 真澄はマヤの頬に手を伸ばし、顔を上向かせてマヤの瞳を覗き込み、想いも深く微笑んだ。 真澄と眼差しを交わし、その大きな愛に包み込まれるように、マヤは真澄に心を預けた。 この人と一緒なら、何も不安なことは無い…。 真澄も、この日のために、タキシードを新調していた。 高価で上品な仕立てのよい式服のラインが、真澄の均整の取れた逞しくスラリとした体躯を際立たせた。 「よし、行くか。」 真澄はマヤに腕を差し出した。マヤは真澄の腕に縋って、慣れないハイヒールとドレスの裾を気にした。 午後7時ちょうど。 真澄はマヤの腰を抱いてマヤを伴い、富士の間に入って演台に上がった。 客席の灯火が絞られ、金屏風を背景に、設えられたマイクに向かって、ふたりが歩み寄る。 司会者が客席にふたりを紹介した。 演台中央に真澄とマヤが並ぶと、スポットライトがふたりを照らし出した。 客席からは拍手が湧き起こり、真澄とマヤは客席に深々と一礼した。 真澄はマヤと腕を組んで、マイクに向かった。 「本日はお忙しい中、弊社大都芸能40周年記念及び『紅天女』40万人動員記念の席にようこそお越し頂きました。 大都芸能社長、速水真澄です。高いところから失礼します。 今日、この日を迎えられましたのも、ひとえに皆さまのご支援の賜物と存じ、心よりおん礼申し上げます。 今後とも、『紅天女』はじめ、芸能各方面において、一層の企業努力に勤しみ、邁進して参る所存でございます。 妻、北島マヤともども、皆さまがたの変わらぬご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。」 淀みなく、真澄が丁寧に挨拶して再び一礼した。次はマヤの番である。マヤがマイクに向かう。 「北島マヤです。高いところから失礼します。本日はお集まり頂き、まことにありがとうございます。 おかげさまで『紅天女』も公演200回を越え、皆さまの熱いご支援を頂きました。心より感謝申し上げます。 今後、いっそう芸に精進し、さらなる『紅天女』の充実に努力して参りたいと思います。 皆様がたのさらなるご支援賜りますよう、どうぞよろしくお願い致します。」 マヤが挨拶を終えると、ふたりはまた揃って、客席に深々と頭を下げた。 司会者が乾杯の音頭をとる人物を呼んだ。 「松竹株式会社、代表取締役社長、大谷 信義さま。」 呼ばれた人物が演台に上がる。大谷は真澄とマヤに会釈すると、マイクに向かった。 「速水社長、本日はお招きにあずかり、まことにありがとうございます。 この晴れがましい席を、心よりお祝い申し上げます。 御社の益々のご発展と『紅天女』のいっそうのご成功を祈り、乾杯の音頭とさせて頂きます。」 「皆さま、グラスをどうぞ。」 司会者が客を促す。真澄とマヤ、大谷もグラスを掲げる。 「では、乾杯!」 乾杯の合図で、賑々しく2時間の立食式パーティが始まった。 真澄はマヤとしっかりと腕を組むと、演台を降り、人の群れの中に入っていった。 たちまちのうちに、ふたりの回りに人垣が出来る。 『紅天女』出演者一同それぞれにも、人々が群がった。 盛装した客たちはそれぞれ、思い思いに美酒を味わい、料理に舌鼓を打った。 真澄とマヤは、乾いた喉をシャンパンで潤しながら、忙しく接客に当たった。 真澄は片時もマヤを離さず、悠然とした笑顔で、客達と言葉を交わす。 招待客から口々に讃辞を受けて、含羞みながらもマヤの笑顔も、誇らしげにはんなりと輝いた。 マヤはしっかりと背筋を伸ばし、真澄の腕に縋り、客と盃を合わせた。 とある芸能社社長夫人がマヤに声をかけた。 「素敵なお召し物ね、マヤちゃん。その指輪も。とてもデパートなんかに置いてある品物じゃないわね。」 「ありがとうございます。さすがお目が高いですね。義父の代から懇意にしている老舗のものです。」 「すっかり綺麗になって。いい若奥様だわ。『紅天女』、また足を運ばせて頂くわ。」 「はい、よろしくお願い致します。舞台でお待ちしています。」 マヤは小首を傾げて、会釈した。髪に飾ったティアラが、シャンデリアのカクテルライトを受けてキラリと燦めいた。 「速水社長。」 「マヤちゃん。」 次から次へと、絶え間なく客達がふたりを取り巻く。 客の言葉に、真澄とマヤが見つめ合って笑みを交わすと、報道陣のカメラのフラッシュが焚かれた。 やがてバンドの生演奏が始まり、ダンスタイムとなった。 「失礼。」 真澄はクリスタルのシャンパングラスをボーイに手渡すとマヤを連れて人垣を分け、広いフロアの中央に歩み出た。 人々が一斉に注視するなか、真澄はマヤをリードしてワルツを3曲、続けて踊った。 舞うたびにマヤのドレスはひらひらと翻り、小柄なマヤは真澄の胸元に飾られたリボンのようだった。 やがて人々も、フロアに出て踊り始めた。パーティは、ひととき、華やかに盛り上がる。 きらびやかに盛装した人々が思い思いにダンスの輪を作り、談笑する人々のさざめきも高くなった。 真澄はマヤを伴ってフロアから出ると、ボーイからシャンパングラスを受け取り、一つをマヤに渡した。 薄い琥珀色のシャンパンには小さな泡沫が弾け、パーティ会場の種々のライトを浴びて幽かに煌めいた。 真澄とマヤは、接客で乾いた喉をシャンパンで潤す。 「マヤちゃん、これ、食べないか?」 西園寺が、小皿にフォアグラとキャビアを取り分けて、マヤに近づいてきた。 「あ、西園寺さん。」 「これはどうも。西園寺さん。マヤ、頂くといい。」 真澄はマヤを片時も離さず、しっかりと片腕に抱いていた。 「はい、頂きます。」 マヤは西園寺から小皿を受け取り、料理を口にした。 「美味しい!」 「そう?良かった。速水社長、今日は盛会で何よりですね。マヤちゃんも、とても綺麗だ。」 「これも皆さんのおかげですよ。特に西園寺さんには、マヤがいつもお世話になっています。」 「マヤちゃん、『紅天女』、これからも期待しているよ。」 「ええ、頑張ります。西園寺さん、今後ともまたご贔屓下さいね。」 「もちろんだよ。40万人動員と言わず、50万でも100万でも、続くといいね。」 「ええ、本当に。」 「じゃ、速水社長、また後で。」 「ああ、ありがとう。」 西園寺は真澄に軽く会釈すると、人垣を分けて別の人の群れに分け入って行った。 次々と客達が真澄とマヤに祝辞と挨拶を述べに来る。 ふたりはピタリと寄り添い、終始晴れやかな笑顔で客達への応対に当たった。 「おい、北島マヤ、随分変わったもんだな。」 「ああ。あの速水真澄がああも熱愛する、というのも意外だよ。」 「名だたる鬼社長も、積年の『紅天女』への確執を終えて、万々歳といったところか。」 「しかし、あの速水真澄がねえ。北島マヤにベタ惚れじゃないか。」 「まったくだ。あれだけ惚れられれば、北島マヤも磨かれるな。」 「速水真澄の庇護のもとで、『紅天女』も末永く安泰というわけか。」 「ともあれ、見物だぜ。」 「ああ。」 会場では、そんな芸能記者達の会話も囁かれた。 パーティは贅を尽くした盛会のうちに2時間の閉会の時刻となった。 二次会は、17階のレインボーラウンジをやはり2時間、貸し切りで行われる予定であった。 司会者が閉会と二次会の案内をし、人々は三々五々、会場から散って行った。 最後まで残った組の客は水城に任せ、真澄はマヤを伴って富士の間を出ると、レインボーラウンジに向かった。 レインボーラウンジでは、立食に疲れた客たちがそれぞれラウンジの席を陣取り、酒を酌み交わしていた。 真澄とマヤはラウンジを一回りし、客達に挨拶に回った。 レインボーラウンジからは、南側には皇居の森が黒々と沈黙し、北側の窓にはライトアップされた東京タワーが一望できた。 真澄とマヤは予め用意してあった南側の席に付いた。 眼下の皇居の森の下には日比谷通りの車の列、右側には大手町のオフィスビルの灯りが煌めいていた。 真澄はバランタインの17年を水割りで、マヤはマルガリータをオーダーした。 華やかなパーティの後の、ゆったりした時間が贅沢に流れていく。 パーティの客達が代わる代わる真澄とマヤのテーブルを訪れ、しばし談笑しては自分達の席に戻って行った。 マヤはブルーチーズとカマンベールチーズをつまみながら、ゆっくりマルガリータのグラスを傾けた。 傍らには真澄がソファに浅く腰掛けて足を組みくつろいでいる。真澄は旨そうに煙草を燻らせた。 マヤが真澄を見あげると、真澄は優しくマヤに微笑みを返した。 その端正な横顔に、マヤは見惚れる。夫となった今も、恋人のように、マヤには真澄が恋しくてならない。 真澄の衒いのない愛情に溢れた眼差しは、マヤの心に深くしっかりと刻み込まれる。 愛されている、愛している。 想いはしばし、ふたりの間に巡って通い、ふたりを心から和ませた。 やがて貸し切りの時間も終わり、客達と最後の挨拶を交わして、パーティの予定はすべて終了した。 真澄は水城、黒沼、桜小路、西園寺を誘って、インペリアルタワー地下のバーへ向かい、三次会に流れた。 気の置けない親しい仲間に囲まれて、マヤも楽しくくつろいで、ひととき歓談の時を過ごした。 時刻も深夜を回り、そろそろ明日の舞台に備えてそれぞれ帰宅しようかという段になった。 「若旦那、今日はご馳走になった。北島、明日からまたビシビシやるからな。」 黒沼がマヤの背中をポンと叩いた。 「マヤちゃん、じゃあ、また明日ね。明日も頑張ろうね。」 「うん、桜小路くん。今日はありがとう。」 「真澄さま、マヤちゃんのお荷物は車に運ばせておきました。」 「ありがとう、水城くん。遅くまでご苦労だった。」 「西園寺さん、ご観劇の際はいつでもご連絡下さい。お席をご用意しておきますよ。」 「ありがとう。速水社長。」 「じゃあまた!」 「お休みなさい。」 「お休み、マヤちゃん。」 「若旦那、北島をしっかり寝かしつけてやってくれよ。明日も舞台だ。」 「判っていますよ、黒沼さん。」 黒沼の意味深な揶揄の軽口を、真澄は軽くいなして笑った。 真澄は会計を済ませてバーを後にし、ホテルのフロントで全員分の帰宅のハイヤーを用意させた。 三次会の面々が順に車に乗り最後に水城が車に乗り込むのを見送ると、速水家の迎えの車が車寄せに到着した。 マヤが先に車に乗り込み、真澄も後部座席に入ると、運転士が車のドアを閉めた。 「お帰りでよろしいんですね、真澄さま?」 運転士が確認する。 「そうだな…。ああ、千鳥が淵を1周回って行ってくれ。」 「かしこまりました。」 帝国ホテルを出てすぐ、皇居堀沿いの千鳥が淵は、都内でも有数の桜の名所である。 今、ちょうど桜は満開の時期を迎えていた。 「マヤ、見てご覧。」 「わあ、綺麗!」 車窓から眺めるだけでも、ライトアップされた堀沿いの満開の桜は、咲き誇って見事だった。 内堀通りの桜並木。運転士は気を利かせて、ゆっくりと通りを走った。 マヤはパーティの疲れも忘れて、彩なす桜花に見入った。 やがて車は千鳥が淵を一周し、靖国通りに入った。 「ああ、お花見も今年はこれで終わりだわ…。明日からまた舞台だし…。」 残念そうにマヤが呟いた。 「そうか、そうだな…。」 真澄は一瞬思案顔になると、つと思い立って運転士に告げた。 「ああ、すまないが、家に帰る前に井の頭公園に寄ってくれないか。酔い覚ましに少し歩いてくる。」 「さようでございますか。了解です。」 深夜の空いた道路を車はひた走り、真澄の注文通り車は井の頭公園に到着した。 自動のパーキングに車を待機させ、真澄はマヤを促して車から降りた。 「マヤ、少し歩こう。気持ちの良い夜だ。」 夜更け、ひと気の去った公園にふたりは分け入り、真澄はしっかりとマヤの腰を抱いて腕を組んだ。 幽かな夜風が心地よく酔いに火照った頬をなぶってゆく。 「寒くないか?」 真澄はドレスで剥き出しのマヤの肩を気遣った。 「うん、ちょっと。」 真澄はタキシードの上着を脱ぐと、マヤの肩に掛けてやった。 マヤは真澄の上着に袖を通した。真澄の香りに、マヤは包まれる。マヤの胸が甘く疼いた。 真澄は公園中央の池を目指して、マヤと歩いた。 池の畔は、満開の桜の森である。ふたりは桜の森に着いた。 「ほら、マヤ。花見だ。見てごらん。」 「わあ、凄い!」 満開の桜が、今を盛りと、夜のしじまの中に咲き誇っていた。 いつの間にか昇った満月が、暗い公園の夜空に明るく輝く。 しんと静まりかえった月夜の桜の森の満開の下。 月明かりに夜桜は朧な白い花の闇となって、咲き匂った。 桜の森の満開の下、春爛漫の桜花。 桜の森の満開の下、花も朧の影が差す。 春風は暖かくそよぎ、音もなく満開の桜を揺らしていた。 「綺麗…。」 桜の森の下を歩きながら、マヤはその桜花の淡い色彩に魅入られた。 立ち並ぶ桜並木。花影を映し出す池の水。咲き誇る真夜中のただなかの桜花は、ふたりの官能を妖しく揺さぶった。 桜の森の奥深く、歩み入ると真澄は一本の桜の木の下で足を止めた。 真澄はマヤを桜の木に寄りかからせると、片腕でマヤを抱き締め、かぶりをふって深くマヤに口づけた。 胸の底に沈んでいる 数え切れないかけら達が 言葉にさえなれないまま 遠い思い出の夢を見る。 真澄のくちづけは次第に熱し、欲情にまみれた熱い舌が、マヤの歯列を割ってマヤの口に差し入れられる。 貪婪に、貪るように、真澄はマヤに繰り返し接吻した。 「ん…」 いつしかマヤも、真澄の接吻に誘われ、自ら真澄のくちづけに応えていた。 妖しい官能のほむらが、いっとき、ふたりの間で妖艶に交錯する。 マヤの下腹に、真澄の熱い高ぶりが硬い。それは、マヤには、胸の疼く甘い誘惑。マヤの躰の中心が熱く痺れる。 真澄はマヤのドレスの胸元に愛撫の手を滑らせながら、片腕を伸ばしてマヤのドレスの裾を捲りあげ、 素早く身を屈めてマヤの下着をするりと脱がせた。 「…ダメよ…速水さん…こんなところで…」 「…誰もいないさ。君と俺と、桜だけだ…。」 真澄は片腕でマヤを抱き直すとマヤの耳元に艶めかしく囁いた。 真澄は愛撫の手を、マヤの花芯に進めた。 やがてマヤの内部が熱く潤ってくる。 真澄は衣服から熱く漲った己の高ぶりを引き出すと、マヤの片脚を高く持ち上げ、一息にマヤを差し貫いた。 「あ…あ…速水さん…」 悩ましげにマヤが真澄を呼ぶ。 真澄はそれに応えて、マヤの背を桜の樹に預け、マヤの両脚を抱え込むと、いっそう熱くマヤを翻弄した。 マヤは真澄に縋りつき、間断なく歔欷の声をあげる。 マヤの香水はセカンドノートに変わり、マヤの肌はけぶるように香り立った。 ふたりの性愛の交歓は次第に高まってゆき、やがてふたりともに絶頂の時を迎えた。 春の盛りの夜のしじま、官能の高ぶるまま、桜の森の満開の下、ふたりはひととき、甘い愛の時を交わした。 夜空の満月と桜の森が、黙ってふたりを見おろしていた。 翌日。 マヤが『紅天女』夜の部も終えて車で劇場から出ると、外は一面の雪景色になっていた。 帰宅すると、真澄がマヤを出迎えた。 「速水さん、冷えると思ったら、雪よ。こんな季節に。」 「ああ。珍しいな。マヤ、桜を見に行こう。何年かに一度、見られるかどうかの景色だぞ。」 真澄はマヤの私室のウォークインクロゼットに入ると、くるぶしまでの丈のダウンジャケットを取り出して、マヤに着せた。 真澄も揃いのダウンジャケットを羽織る。 ふたりは雪の舞い落ちるなかを歩いて近所の成城大学キャンパスに赴いた。 大学キャンパスの中の桜のトンネル。 満開の桜に、雪が降りしきっていた。 「凄い…!」 絶景であった。 マヤは息を呑んで、その幻想的な光景に見入った。 真澄はマヤを後ろから抱きすくめ、マヤとともに桜を見あげた。 満開の桜に、狂うように雪が舞い落ちる。 しんと静まりかえった世界のただ中で、桜の花に雪が降る。 桜に降る雪。 自然の気まぐれが織りなす目も綾な絶景に、マヤの内部で新しく紅天女が生まれ直す。 「風は我が心、火は我が力、水は我が生命、土は我が愛。わかれよ、わかれよ、慈しまれていることを…。」 マヤのくちびるから、しぜん、『紅天女』の台詞が零れた。 愛しているよ、と、真澄が囁く。 愛しているわ、と、マヤが囁く。 天地(あめつち)のあわい、夜のしじま、桜の森の満開の下、桜に降る雪を見あげながら、ふたりは心も新たに愛を育んだ。 世界は沈黙して、ふたりに幻想のひとときを与えていた。 翌日から、マヤは『紅天女』の演技を変えた。 それは花びらに舞う雪の幻想を思わせる、清冽にしてより鮮烈な、紅天女であった。 |
2003/3/18
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