353000番ゲット・ぷりゆき様リクエスト: さてさて、リクですが、私はユーリさんが原作ではかなわなかった二人の思いをかなえてくださるストーリーが
 大好きなんです。それだけ二人には早く幸せになって欲しいんだよ〜!! そこで、「社務所」がすでにリクエストで出てる今、次に胸躍らせたあのシーンを
 ハッピーにしてほしいんです。
 それは、41巻のふたりが一瞬魂の片割れを確認しあうあのシーン。
 マヤちゃんの「速水さん…この川さえ渡れば…この川さえ…。」のあとシオリーの「真澄様〜」なんて無粋な声も入らず全く二人だけの世界で、
 川を渡っちまってください!ふたりの背中を押してやる〜!そして二人は心から「魂の片割れ」を再確認し、結ばれるんです!!
 うう、悲しいかな表現力のとぼしい私の願いをどうぞユーリマジックでかなえてやってくださいませ。

※川を渡っちまう、ということはつまりアレですか?(笑)。そうですねえ、スレスレ地上、というところで手を打ってみましょうかねえ。





梅の谷。
月影千草による最後の『紅天女』の舞台が終わった。
マヤは裏方の隅で茫然と舞台を振り返っていた。


紅天女…
千年の梅の木の精…
自然界を司る精霊の女神…
闇の世を光の世へと変える天地和合の女神…
紅天女…
もうひとつの、あたしの仮面…
できるんだろうか、あたしに…
それから、紅天女の恋…
ふたつに分かれた、もう一つの魂の片割れ…

ふと、マヤの脳裏に、真澄の姿が浮かんだ。

速水さん…
まさかね…。
まさかあの人があたしの魂の片割れなんて…
あるはずがないわ、そんな夢みたいなこと…。


マヤは千草の舞台衣装を、すこしの間だけ、羽織ってみた。
綺麗だったなあ、月影先生…。
梅の花が散りしきり、紅天女の衣に、はらはらと舞った。


ここは梅の谷…紅天女のふるさと…紅天女の…


一方真澄も、千草の『紅天女』の舞台に、魂を揺さぶられていた。
紅天女の恋…
魂の片割れ…
陰と陽に分かれた、もうひとりの自分…
いるのだけろうか?俺には、そんな人が…。
子どもの頃からずっと孤独だった…
誰に心を許すこともなかった…
本心を明かしたこともなく、本音で人と話したこともない…
そんな俺にも、いるのだろうか…
黙っていても心が通い合い、魂が響き合う相手が…。


その時、突然烈しいつむじ風が湧き起こり、真澄を巻き込んだ。
梅の花がひとしきり空に舞う。

何だ…今のは…突然…?
え?霧が紅に光っている…?まさか、そんな…
いや、梅の花の色が霧に染まって…
だが、何故だ?周りが光って見える…
そんなバカな!俺の目がどうかしたのか…?


真澄の目の前に、人影が現れた。
それは紛れもなく、紅天女の姿であった。



一瞬の後、紅天女はマヤの姿に変わった。

マヤ…!

マヤは紅天女の衣に身を包み、梅の小枝を手にしていた。


マヤは川の向こう岸の真澄の姿に気づいた。

速水さん…!


なんだ?今のは…目の錯覚か?確かに紅天女を見たと思ったのに…マヤ…?


速水さん…紫のバラのひと…なぜここへ…?
マヤは川の石づたいに、真澄に近づこうと石を渡った。

速水さん…あたし…あたし、なんの取り柄もない女の子だけど…うんと年下で美人でもお金持ちでもないけど…誰よりも貴女が好きです…
速水さん…!あなたが好きです…!
マヤは『紅天女』の台詞を口にしていた。


「あの日…初めて谷でおまえを見た時、阿古夜にはすぐ判ったのじゃ、おまえが、おばばの言うもう一つの魂の片割れだと…。」
「世界がまだ混沌としていた頃、神は子を産み地上へ降ろされた…。」
「その時ひとつの魂を陰と陽のふたつに分け、別々の肉の身に宿らせた…。」
「いつか、巡り会い、陰陽相和してひとつとなる時…人は神になる…あらたな生命を生むために…。」
「その時、不思議な力が働くのだと、おばばが言う。それは、相手の魂を乞うる力…」
「年も、姿も、身分もなく、出逢えば互いに惹かれ合い、もう半分の自分を求めてやまぬという…。」
真澄はマヤのその語りに驚愕した。
「早くひとつになりたくて、狂おしいほど相手の魂を乞うると…それが恋じゃと…」
「名前や過去が何になろう。巡り会い、生きてここにいる…それだけでよいではありませぬか…。」
「捨ててくだされ、名前も過去も…阿古夜だけのものになって下され…。」

(速水さん…お願い、応えて…!)

マヤ…なんだ、これは、いったい…。
どういうつもりだ?マヤ、きみは…まさか…、まさか、そんな…

マヤは真澄に、すっと手を差し伸べた。
言ってください、速水さん…!紫のバラのひとは私だと…そうすれば、あたしは、あたしは…!

マヤ…!

真澄もまた、マヤに手を差し伸べた。

マヤは、川を渡った。
真澄もまた、ふたりを隔てる川を渡った。



その時、ふたりの魂は、肉の身を離れ、はるか虚空に彷徨い出た。
その真澄の“存在”そのものが、マヤに迫ってきていた。光輝く一瞬、マヤの魂の手は、真澄の魂の手を取り、互いに手を取り合った。
そのまま天高く二人は融合して、遙かに“現在”の次元から逸脱して孤高の極限へと登り窮めたのだった。
“魂の片割れ”をふたりが得た瞬間であった。


マヤ…。
おまえさま…。


ふたつに分かれた、もう一つの…魂の片割れ…


ふたりは固くいだき合った。互いの確かな温もりに、ふたりは包まれる。


マヤ…愛している…!
速水さん…あなたが好きです…あなただけを愛しています…。



夢幻の彼方。


真澄はマヤの躰を、天空の彼方、雲のしとねにそっと横たえた。
そしてあっというまに身体を重ねた。思わず、マヤは身を固くする。
両の掌でマヤの柔らかな頬を包み、かぶりをふって、真澄はマヤにゆっくりと口づけた。
真澄の唇。甘い、とマヤは感じる。
長く静かな口づけのあと、マヤの頬に、額に、瞼に、耳元に、顎に、髪に、壊れ物を扱うように真澄は唇を寄せる。
そして彼の長い指で少しずつマヤの髪を梳いてやりながら、喉もとから首筋へ、柔らかく唇をすべらせる。
マヤの口から、吐息が漏れる。
マヤの衣をそっとはだけさせ、あらわになった細い肩から鎖骨のくぼみにかけて、くちびるで、ゆびさきで、掌で、何度も真澄は愛撫する。
真澄の心こめた気遣いをマヤは感じ取る。

速水さん…やさしい、やさしくしてくれる。あたしのために…
これが速水さんの、ほんとうのやさしさ…。

真澄の献身でマヤは心満たされていく。未知の行為への懼れも、抵抗も、しだいにマヤから遠ざかっていく。
マヤが身体を委ねてきたのに真澄は気づいて耳元に囁いた。
「可愛いよ…。マヤ。きみを、愛している…」
睦言は、マヤの心身をさらに甘く痺れさす。

ああ速水さん、好きです、ほんとうに…。

慕わしさに、マヤは真澄の背に腕を回した。
「マヤ…。」
呼びかけは、優しく、慈しみ満ちて、情を乞い、マヤを誘い出す。さらに強い心の交感へ。愛することの尊い心身の昂ぶりへ。
真澄はマヤを全裸にした。マヤは思わず目を閉じて顔をそむける。
「綺麗だ…恥ずかしいことじゃない。」
すべらかで柔らかいが弾むように真澄の掌を押し返してくる、肌理細かい肌。
ほの白く薄闇に浮かび上がるその姿を、飽かず真澄は目に焼きつける。
これこそ、彼の欲していた姿だ。そして、彼も裸体をマヤに覆い被せる。
互いの温もりが、心地よく全身に広がってゆく。
ときめく心臓。愛撫さながらの呼吸。
マヤのすべてを、真澄が真情こめて愛していく。
繰り返す、愛撫、吐息、熱。
強く、あるいは軽く真澄に触れられると、マヤはそこに自分のうなじがあるのを知る。
そこに自分の肩があるのを知る。襟元。脇下。乳房。脇腹。上腕。膝裏。足首。足指。指先。今まで自分の知らなかった触覚。
乱れるマヤの呼吸があえかな喘ぎに変わる頃、マヤはかつて知らなかった興奮を、感覚の昂揚を覚えた。
真澄によって的確に生み出されるそれは、マヤを渦巻く桃色の坩堝へと、マヤを誘い出す。
マヤは夢中だった。
夢、まぼろしの境いに入り込む。我知らず、喘ぎに混じって悦びの声があがる。
呼びかけにすら愛撫されたように、全身に戦慄が奔る。
「……」
真澄の指と唇が止まると、もっと続けてほしくなる、焦れるような狂おしい思いを、マヤは初めて知る。
マヤの反応の確かさに、真澄はいっそう没頭した。
マヤはもう言葉では応えられない。
半身を捩って、真澄の下で身悶え続けた。
マヤが女に変化するまだ清らかな部分に、真澄の愛撫が到達する。
そして、そこにそれがあるのを、あやうい意識でマヤは知る。
真澄はただ入念に準備を施してやった。マヤの歓喜のあえぎがしとど漏れる。

その時、が来た。真澄にとって、マヤにとって、最も厳粛な時が。

なかば祈る思いで、真澄はマヤにゆっくり己を穿っていった。
刺すような重苦しい痛みが、マヤを貫いた。その痛みが、マヤを正気に引き戻す。
二人は互いに心の中で名を呼び合った。
マヤは声をこらえて真澄にしがみつく。真澄はマヤの上体を、強くかき抱いた。

ふたりは、結ばれた。確かな、二人の証であった。

鈍い痛みに耐えながら、マヤは圧倒されていた。
なんという圧迫感。熱。真澄が自分の内部にいるその確かな感覚。
泣けてくるような感動を、マヤは覚えた。
そして真澄は、ようやくマヤを自分のものにした深い喜びに満たされる。
呼び合うように二人は口づけた。
真澄が腰を進めるたび、マヤのざらつくような痛みは、なぜかしだいに消えていく。
支配されることが悦びであると、マヤは教えられる。
真澄の動きが次第に熱を帯びていく。マヤは再び夢の中に誘われる。
「は、やみさん……お願い…」
あえぐ息の下からマヤが口にした。
「うん?」
「お願い、何か…言って」
マヤ自身も、自分が何を懇願しているのかは、はっきりとは判ってはいない。
「ああ…マヤ…愛している。俺のものだ…。」
「もう、離さない。」
「速水さん、…あたしも…」
やがて、真澄の熱が頂きに達した。マヤが呻く。真澄はマヤの内奥に自らを激しく放った。




天空の彼方、夢幻の境で、ふたりの魂は、互いに確かに結ばれた。
それは奇跡の一瞬。そして、永遠の一瞬。
刹那にして、永遠。
ふたりの魂は、万物と一体となり、永遠を旅した。
ふたりの魂と魂は確かに結ばれ、こののち、悠久の時の彼方で共に生きた。
この時、ふたりは初めて、生まれてきたことの意味を知った。
それが、『紅天女』が語る恋。


マヤ…俺の魂の片割れ…
速水さん…あたしの、魂の片割れ…



無窮の時の彼方、夢幻の境。天空の果て。彼方より来たりて彼方へと去る者。
魂の片割れ同士は互いに結ばれて、人の叡智を越え、運命を越え、人は神となる。
そして、新しい生命を生み出すだろう。
弥栄、弥栄。
祝詞がふたりを祝福した。


遥かなる時空の彼方。
それは天啓。
夢幻の彼方。

愛を分かち合ったふたりに、永遠の唯一神のとこしなえの祝福があるように。







終わり







2002/12/13

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