341341番ゲット・天使の羽根様リクエスト:“手取り足取り教える真澄様”シリーズ第4弾〜テニス編〜
 亜弓さん一家に誘われ、テニスに行く事になったマヤちゃんと真澄様。
 テニスは初めてのマヤちゃんに、真澄様はウェアから用具までコーディーネートし、早速レッスン開始!
 マヤちゃんはテニスを覚え、亜弓さん一家と楽しくプレー出来るでしょうか?!
 細かい設定はお任せします。

※レッスンシリーズも第4弾ですね、いつもありがとうございます〜(^^)。





 晴れて真澄と華燭の典を挙げたマヤ。速水邸で迎える初めての秋。
そうしたある秋の日、マヤのもとに、亜弓から連絡があった。
再来週の日曜、亜弓一家と一緒にテニスをやらないか、という誘いである。



マヤは早速真澄にその旨報告する。
「テニスかぁ。楽しそうだけど、あたし、やったことないわ。『エースをねらえ!』なら読んだことあるけど…。」
「せっかくのお誘いだ。テニスなら、俺が教えてやろう。俺もテニスは久々だ。まず、道具を揃えないとな。」
「明日は早く帰る。渋谷のウインザーに買い物に行こう。」


 翌日、真澄はマヤを連れて、テニス用品専門ショップを訪れた。
店内にはズラリと豪華な多種とりどりの品揃え。
マヤは物珍しくその品々見入った。
マヤの体格に合う最新型のラケット、ラケットカバー、帽子、ワンピース、アンダースコート、リストバンド、テニスシューズ、タオル、テニスバッグ、新機能のテニスボールのセット等ひと揃い、真澄は自分の分と合わせて、マヤに誂えてやった。
テニスウェアと言えば何と言っても白が基調。
マヤのワンピースは当然のごとく純白、胸元にワンポイントでピンクの小花の刺繍をあしらった清楚なウェアを真澄は選んだ。
ラケットも初心者向けにガットを張らせ、ウェアと揃ったピンクの愛らしいグリップのラケットを選んだ。
シューズも白とピンク。足に負担の少ない高機能のシューズを、真澄は選んでやった。
真澄の分のウェアとラケット・シューズはマヤと色違いだがウェアの花の刺繍は青の木の実のデザイン。
真澄が次々と買い物をするのにマヤは目を瞠って、真澄について回った。
 買い物を済ませると、ふたりはその足で六本木に出て、夕食は六本木のイタリア料理のレストランで舌鼓を打った。
「日曜はテニスクラブに行こう。練習するぞ。」
「はい、コーチ。」
マヤは真澄の端正な横顔を見上げて微笑んだ。
「速水さんは、宗方コーチみたいに鬼コーチかしら?」
マヤは言うと、自らの言葉に面白がってひとしきり笑った。




 その日曜日。
午前中から真澄は速水邸近くのテニスクラブにマヤを連れていった。
今日はふたりは気楽な練習着。
オートマシンの前で、真澄はマヤにまず素振りを教える。
「ラケットは垂直に立てて相手コートに向ける。ラケットの握り方だが、グリップは垂直より右が厚く、左が薄く握ると言う。」
「マヤは少し厚めに握った方がいいだろう。」
真澄に手を取られて、マヤはやや厚めのグリップでラケットを握った。
「ラケットを握ったらコート正面に向かって構える。両脚は肩幅程度に軽く開く。」
「身体の右側がフォア、左側がバックと言う。」
「まずフォアだが、一、二、三、のリズムで、ラケットを振る。一で構える。二でテイクバック。つまりラケットを後ろに引く。」
「三でインパクト。つまりボールを打つ。二と三の間で左足に掛けた体重を右足に移動させる。左手で体のバランスを取る。」
「体重を乗せて、体重移動でボールを打つ。決して腕だけでボールを打とうとするんじゃない。」
「マヤ、素振りをしてごらん。」
マヤは真澄に言われたとおり、リズムを取って、素振りをした。
「違うな。俺のフォームをよく見ろ。」
真澄は基本の素振りをマヤに示してやる。マヤは真澄の示した通り、フォアの素振りを繰り返した。
「よし。次はバックの素振りだ。マヤはバックは両手打ちの方がいい。」
「一で構え、二でテイクバック、フォアと反対側に体重移動させながら、三でインパクト。この時、腰を回転させる。」
「両手打ちのバックのフォームはこうだ。マヤ、よく見ろよ。」
真澄は例を示してやる。
「一、二、三、こう?」
「そうだ。上半身は前傾させない。コートに真っ直ぐ立つ。全身に一本の線が通っているとイメージする。」
「よし、ボールを打ってみよう。」
「おっと、その前に球カンだな。マヤ、ラケットを水平にしてボールを垂直に打ち上げてみろ。」
「球カン?」
真澄はマヤにボールに対してラケット面を正しく作る練習をさせた。マヤはポン、ポン、とボールを続けて打ち上げた。
「打てる、打てる。面白いじゃない!」
ラケットにボールが当たる感触をマヤは楽しんだ。
「そうか?よし。ボールを打つぞ。」
真澄はオートマシンを発動させた。ゆっくりとしたスピードでマシンからボールが飛び出してくる。
「ボールの落下点に走る。フットワークは小刻みに。フォアでは左足でボールに狙いをつける。」
「左手で身体のバランスを取って!」
「きゃっ!」
マヤは空振りした。
「ボールをよく見るんだ。ボールの落下点を見極めたら、走って回り込む。弾んだボールはラケットの中心、スィートスポットで捉えるように。」
「好きなように打ってみろ。ライジング打ちになっても構わん。」
300球もオートマシンで打っただろうか、真澄の的確な指示に従いながらマヤは額に汗してどうやら正しいフォームでボールを打てるようになった。
バックの返球にマヤは苦労していたが、真澄のスィングの見よう見真似で、オートマシンから出るボールをなんとかマヤは打ち返した。
「やったわ!」
マヤは弾んだ声で快哉を叫び、笑顔で真澄を振り返った。真澄が微笑みを返す。
生来素直な性格のマヤである。真澄の根気強いコーチングに従順に従いさえすればしぜん、マヤ自身そうとは知らず真澄の教えを吸収していく。
「よし。次はサービスだ。一で構え、二でトスを上げ、三でインパクト。フォームはこうだ。」
真澄はゆっくりリズムを取って、マヤに例を示してやる。真澄のサービスフォームは豪快で美しかった。
「トスは垂直に真っ直ぐ上げる。落ちたところが、左足の20センチほど手前にくるように。」
しばらくマヤはトスの練習を繰り返した。マヤはなかなかボールを正しく上げることが出来ない。
どうにかして垂直に上がったトスに、マヤは思いきりラケットを振った。
「腕を振り回すんじゃない。あくまで体重をラケットに乗せる。」
「トスを上げたら、軽く腰を落として。」
マヤはなかなかサービスが打てなかった。ラケットにボールが当たらない。空振りばかりを繰り返す。
真澄は根気よくマヤにサービスのコツを教えた。
マヤは漸くサービスの球カンを掴み、ようようラケットでサービスも打てるようになった。
「よし。コートに出よう。ボレーの練習だ。」
真澄は芝のコートで、マヤにボレーの球出しをしてやった。
「ボールのコースを予測して、ラケット面を作る。ボレーは打つんじゃない。ラケットに当てるだけだ。」
右に左に、真澄が球出しをするボールを、マヤは必死に追いかけてボレーを習った。
「よし。少しストロークの練習をしよう。」
真澄はコートに立って、マヤにストロークを教えた。
マヤは真澄が打ってくる緩いボールを走って追いかけ打ち返した。
が、始めはマヤの返球はコントロールが定まらず、ネットにボールを引っかけては、なかなかラリーが続かない。
マヤのストロークはあらぬ方向に飛んでいってしまう。
「正しいフットワークで、ボールの落下点に回り込むんだ!正しく構えて、ラケット面を正しく作る!」
真澄はコートでマヤに声をかけた。
「ストロークはまずは相手の足元に打ち返すように!」
真澄の指示に従いながら3時間も打ち合うと、マヤはどうやらボールを真澄に打ち返すことができるようになった。

例えばピアノの鍵盤を弾く。するとすぐ音が出る。
またラケットで打つ。そしてボールは飛んでいく。
そのように、行為にすぐその反応が出るということは、人間にとっては根本的に「気持ちの良い」ことなのだ。

「ああ、疲れたぁ。」
マヤが肩を落とした。
「よし。少し休憩しよう。」
真澄はコートサイドに置いたバッグからクーラーポットのスポーツドリンクを取り出してマヤに渡してやった。
マヤは一息にそれを飲み干した。
「マヤは今週からはオフだな?明日からこのコートに通ってよく練習しておけよ。クラブの人に、コーチを頼んでおくから。」
「俺も早く帰れる日は、ナイターで一緒に練習してやる。」
「うん。テニスって、楽しいわね。」
「ロブの上げ方とスマッシュを習っておくこと。いいな?」
「ロブ?スマッシュ?」
「ロブはネット際に相手が出てきた時、相手の頭の上を越して上げる高い球のことだ。」
「スマッシュはボレーの変わりに、ダイレクトにサービスのフォームで相手に鋭く打ち返す球の種類だ。」
「なんだ?テニスの漫画を読んだんじゃなかったのか?」
「ああ、そういえば、そんなこと描いてあったわね。」
マヤらしく、呑気なものである。
「ファーストサービスは大事な攻撃だ。マヤ、サービスの練習をしてから帰ろう。」

真澄はマヤの手を取って、サービスフォームの矯正をしてやった。
「フラットサープとスライスサーブの打ち分けをするから、よく見ておけよ。」
真澄は2種類のファーストサービスを打ち分けて見せた。
「速水さん、格好いい!」
マヤは真澄のサービスに見惚れた。
「サービスリターンはサーブのコースを予測することがポイントだ。」
「マヤ、実際の試合の時は1ポイントごとにサービスでコートサイドを交替するんだぞ。」
「うん。判った。」
「これがトップスピン、これがサイドスピン、ボールに回転をかけて、ボールの速度とコースに変化を持たせる。」
真澄は器用にボールに回転をかけて見せた。
「ストロークのコースは、これがストレート、これがクロスだ。」
真澄はマヤに説明しながら、ボールを右に左に打ち分ける。
マヤは芝居をする時のような集中力で、真澄のコーチに従った。
その日は一日、テニスコートで真澄と過ごし、マヤはすっかりテニスの魅力に取り憑かれた。




 それから二週間、マヤはテニスクラブに通い、途中、真澄とともにナイターでも練習し、最後の土曜日にはどうやら形だけは一人でまとまった試合の一つも出来るようになった。
芝居の時のようなひたむきさで、マヤはコートを走り、右に左にボールを追った。
マヤは運動神経は決して優れているわけでは無かったが、テニスの球カンは良かった。
また、マヤは素直で、教えられたことにはすぐ反応した。
何事も、基礎が大事。真澄の主義で、マヤは二週間、基本通りにテニスを学んだ。
マヤは『エースをねらえ!』を読んで、試合のルールを覚え込んだ。




 そして、亜弓との約束の日曜日がやってきた。
真澄は自分で車を出し、亜弓一家が待つ田園調布ローンテニスクラブに向かった。
折良く秋の日の好天に恵まれ、絶好のテニス日和となった。
陽差しは暖かく澄明で風は涼しく、季節の恵みはこの日を記念しているようだった。
「やあ、速水社長、マヤちゃん、お久しぶりです。」
姫川貢がふたりに笑顔で挨拶する。
「お久しぶりです、監督、歌子さん、亜弓くん、ハミルさん。今日はお誘い、ありがとうございます。」
真澄が鷹揚に姫川貢の挨拶に答える。
「楽しみましょうね、マヤさん。」
亜弓が笑顔でふたりを迎えた。
「まあ、お揃いのウェアで。仲がよろしいわね。」
歌子が笑って、ふたりを一瞥した。
マヤは真澄と目を見交わして微笑んだ。
「歌子さん、どうぞお手柔らかに。」
マヤは含羞んで歌子に告げた。
「さて。では早速始めましょうか。」
亜弓が審判台に上る。
「ザ・ベスト・オブ・ワンセットマッチ。」
亜弓が声をかける。
開始のゲームは、マヤと真澄対姫川夫妻のミックスダブルス。
真澄のリードにマヤは従い、懸命にマヤはボールを追った。
試合はタイに進み、コートには4人の笑顔が弾けた。
「30−40!」
亜弓が流暢な英語でカウントする。
歌子が上げたロブを真澄はスマッシュで叩き返した。
マヤは覚えたてのボレーを決めて、すっかり気を良くした。
真澄はネット際で構えるマヤの正規のテニスウェアのワンピースから見え隠れするアンダースコートに、ふと目を奪われた。
マヤのほっそりした白い大腿が、真澄には扇情的だった。
試合はマヤのダブルフォルトで終わり、6−3というスコアで姫川夫妻の勝利。
ゲームを終えて、一行はクラブハウスでひと休みした。

「マヤちゃん、テニスは始めてまだ間もないんでしょう?上手だったわよ。」
歌子がマヤに笑いかけた。
「そ、そうですか?あたし、必死になっちゃいました。」
マヤも笑顔で答える。
「マヤさん、今度は私とシングルス、やりましょう。」
亜弓が声をかけた。
「亜弓さん、お蝶夫人みたい。綺麗だわ。」
「まあ、ふふふ。行くわよ、ひろみ、よくって?」
亜弓も、冗談を交わす。
今度は歌子が審判台にあがり、マヤと亜弓のシングルスが始まった。
さすが、亜弓は一日の長だけあって、見事なラケットさばきでマヤを圧倒した。
マヤはコートサイドの隅から隅まで走り回らされた。
マヤはふと思い立って、亜弓のサービスの際、思い切りリターンダッシュした。そして、亜弓の空いたサイドのコートにボレーの狙いを澄ました。
「マヤ!エースをねらえ!」
真澄が笑って声をかけた。
マヤはリターンアンドボレーを成功させた。
「きゃあ!やった!」
ようやく亜弓に一矢報いたマヤに、コートサイドの観戦席からは盛んな拍手が湧いた。
終わってみれば6−1と、圧倒的な亜弓の勝利。だが、マヤは負けても楽しげだった。
「おめでとう、亜弓さん。お手合わせ、ありがとう。」
マヤはネットを挟んで、亜弓と握手した。
「ありがとう、マヤさん。さっきはやられたわ。」
亜弓は笑顔も清々しかった。
一行はクラブハウスで昼食をとった。
しばらく歓談し、休憩すると、次は真澄とハミルのシングルス。姫川監督が審判台に上がる。
ふたりとも、手加減抜きで、実力で勝負した。
「速水さん、凄い!」
真澄の本領発揮を目の当たりにして、マヤは心底驚いていた。
真澄もハミルも、互角の勝負で、観戦席は大いに湧いた。
スポーツとは、参加し、競うことにこそ、その真価がある。
スポーツ精神の素晴らしさを、マヤは真澄の試合に感歎しながら堪能していた。
試合はタイ・ブレークに縺れこみ、デュース、デュースで、白熱した。
迫真の、良い試合であった。
真澄はここぞとばかりに決めどころのファーストサービスをセンターに決め、試合は7−6で真澄の勝利に終わった。
「やあ、ハミルさん、ありがとう。久々に本気でやりましたよ。」
「速水さん、コングラチュレーション!」
ふたりはネットを挟んでガッチリと握手した。
実に見応えのある試合だった。
「速水さん、凄かった!格好良かったわよ!」
マヤは真澄に駆け寄ってタオルを渡した。
真澄は汗を拭いながら、マヤに微笑んだ。マヤはその微笑みを眩しく見あげた。
「どうだ?奥さん。惚れ直したと言ってくれ。」
真澄は笑った。
「ええ!何度でも言っちゃうわよ。素敵だったわ!」
新婚のふたりのその他愛ないやりとりを、姫川一家は微笑んで見守っていた。
次に、姫川夫妻組対亜弓・ハミル組の試合が始まった。
審判はテニスクラブ員に任せ、マヤと真澄は寄り添って、姫川一家の試合を観戦した。
「速水さん、いいわね、亜弓さんのご家庭。羨ましいな。」
「俺たちも、いつかあんなふうな家族ができるといいな。」
「ほんとね…。」
親子の試合は楽しく進み、亜弓・ハミル組が6−3で勝った。

 秋の早い夕暮れも近づいてきた。
「そろそろお開きにしますか、速水社長。」
「そうですね、監督。今日はありがとうございました。」
「楽しかったわ、マヤちゃん。」
「こちらこそ、歌子さん。是非また誘ってください。」
「亜弓さん、またね。」
口々に挨拶を交わして、秋の日のテニスの一日は散会となった。




 ふたりは速水邸に戻った。
「ああ、楽しかったわ!速水さん!」
「そうか。良かったな。」
「マヤ、テニスウェアもなかなか似合っていたぞ。脚が綺麗だった。」
「そ、そう?」
「思わず触りたくなって困ったよ。」
「速水さんったら…。」
真澄の半ば本気の揶揄にマヤは含羞んで、俯いた。
「せっかくのウェアだが、着替えておいで。風呂に入って、夕飯にしよう。」
「はい。」



真澄と結婚し、真澄とともに歩む人生。マヤはまたひとつ、新しく人生の楽しみを知った。
それは、役者としてのマヤを、さらに大きく成長させる、良き糧であった。


その夜、一日真澄とともに過ごし、真澄への愛を深めたマヤは、真澄の腕の中で、熱く燃えた。
狂おしくマヤの躰を駆け抜けていく真澄の背に縋り、マヤは何度も真澄の名を呼んだ。
ふたりは眼差しを交わし、くちづけを交わし、睦言で互いを満たし合った。



 そののち、ふたりは時間さえあれば、ふたりでテニスを楽しんだ。
『エースをねらえ!』は、マヤの貴重な愛読書となった。








終わり








2002/12/3

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