339000番ゲット・きょん様リクエスト: うっうっ!悲願のキリ番ゲットです!
 以前、真澄さまの浮気話がありましたが、今度はマヤちゃんにお願いしましょう。
 結婚前でも後でもいいのですが、公演先で千秋楽を終えて仲間と飲み過ぎて、共演者のお部屋で眠ってしまったマヤちゃん。
 翌朝、彼の冗談の一言で自分が浮気をしてしまったと思いこんでしまいます。
 東京へも帰れず思い詰めて宿舎を飛び出してしまった彼女を真澄様はどう連れ戻すのでしょう?
 どうしても言わせたい一言があるのですが、これはナイショ! もちろん、ラブリーな結末をお願いします。


※ナイショの一言ありがとうございます(^^)。ズバリ、言い当ててくださったかた、次回リクエスト権差し上げますがいかが?(笑)





 晴れて『紅天女』後継者を引継ぎ、真澄との苦しかった恋の道程も乗り越えて、『紅天女』を成功させたマヤ。
真澄は紫織と婚約解消し、時期を待って、マヤは堂々、真澄と華燭の典を上げた。
『紅天女』初上演からマヤは大都芸能に所属し、真澄に支えられて、多忙な芸能生活を送っていた。
真澄の方針にマヤも合意し、マヤは『紅天女』以降、声楽、バレエ、ダンス、日舞のレッスンを全くの基礎から新たに始めていた。
そして、『紅天女』以外の舞台では主にストレートプレイを務めていたが、稽古の成果あって、マヤの念願であったミュージカル出演を、
マヤは果たした。



 ミュージカル『浮遊する摩天楼』。
大都芸能ミュージカル制作部精鋭スタッフによる渾身の書き下ろし新作である。
装置、衣装の予算も、たっぷり取られた。
古代の都と現代の摩天楼を往還しつつ、栄光と破滅という裏腹の様相と来るべき再生を謳ったミュージカル。
マヤの初ミュージカルに相応しい華やかさと明るさを表現する意欲作であり、
マヤが新たに身につけた歌唱力と洗練されたダンスをふんだんに盛り込み、マヤの魅力を余すところなく披露するミュージカルであった。
相手役には、『エリザベート』で稀代のミュージカル界新星として華々しくデビューを飾った、東京芸大声楽科に在籍する井上芳雄が抜擢された。

1か月の稽古を経て、カンパニーとともに、大都劇場で、マヤは初ミュージカルを成功させた。
マヤの身につけた歌唱は、正当派の声楽にマヤ天然の演劇感性をプラスアルファした、極めて情緒に訴える力の強い歌唱。
マヤの歌唱は、ビブラートで音程を調整するという小手先の技術を使わず、きっちりと正確に音をヒットさせており、基礎練習の成果がよく現れていた。
踊りも、小柄な身体を精一杯大きく使い、指の先一本に至るまで神経の行き届いた、繊細な表現力に満ちたそれは踊りだった。
真澄は、マヤの成長ぶりに、心から満足していた。




 東京大都劇場で3ヶ月ロングランを終えたあと、ひと月置いて、新設された大阪大都劇場で、1ヶ月、ミュージカルは興行された。
幸い、興業は満員御礼が続き、マヤは連日、乗りに乗って公演を続けた。
相手役井上ともすっかり息も合い、連日、日々、マヤの魅力は充溢していった。

舞台に不意のハプニングはつきもの。
カンパニーのひとりが、ダンス中に疲労骨折し、それがちょうどマヤと井上のキスシーンの最中だった。
疲労骨折したダンサーが袖に引っ込むまで、マヤと井上のキスシーンは続いた。
もし、それを真澄が観劇していたら、真澄は嫉妬の嵐に呑み込まれたかもしれない。大阪だったのが、幸いした。
真澄は大阪公演には、初日に観劇しただけで、あとは千秋楽も観ず、マヤの帰京を待つだけの予定だった。


大小取り混ぜてさまざまなハプニングはあったものの、大阪公演も、無事千秋楽を迎えた。
カーテンコールで、マヤの笑顔は、晴れやかに輝いた。
真澄からは、つねに変わらず紫のバラが届いた。
千秋楽の夜、カンパニー、舞台スタッフ一同の泊まる宿舎で、盛大に打ち上げが執り行われた。
大都芸能プロデューサーの音頭で、乾杯の合図が打たれた。

「『浮遊する摩天楼』千秋楽、おめでとう!」
「マヤちゃん!千秋楽、おめでとう!」
「皆さん、ありがとうございました!」

マヤはカンパニー、舞台スタッフ、ひとりひとりに丁寧に挨拶をしていく。
最後に、相手役、井上。井上はマヤより1つ年下。
「井上くん、最後まで、どうもありがとうね!」
マヤの笑顔が弾けた。

盛大な打ち上げも盛会の裡に終わり、マヤは井上他、出演者の何人かと共に、夜の大阪の街に繰り出した。
カラオケを歌い、たこ焼きを食べ、マヤは大はしゃぎだった。
そのあと、宿舎ホテルに戻り、年若い面々は井上の部屋で、更に酒を飲んで騒いだ。
若さの弾ける、楽しい宴だった。




 翌朝。
マヤが重い頭で、どんより霞む目を開く。ふと、隣りを見やると、傍らで井上が安らかな寝息を立てていた。
井上は裸である。
マヤはバスローブ一枚、纏ったきりで、バスローブの帯は、はだけていた。
ハタ、と、マヤは正気に返った。そして、井上を揺り起こす。
「井上くん、井上くん!」
「う…ん、…」
「起きて!井上くん!」
井上は、やっと目を覚ました。そしてマヤを目にすると、寝起きの笑顔でマヤに応えた。
「おはよう、マヤさん。」
マヤはその笑顔に酷く狼狽した。
「井上くん、あの…あたし…覚えてないんだけど、あの…あたし、あなたと昨夜…」
マヤは口ごもる。
「ああ、マヤさん。昨夜のあなたは素敵でしたよ。人妻って、やっぱり色っぽくて、僕はクラクラでした。」
冗談とも本気ともつかぬ井上のその言葉。
「あああ、あの、まさか…あの、…」
マヤは井上の言葉に仰天した。
マヤはベッドから起き上がり、脱ぎ散らかした自分の衣服をかき集めると、井上の部屋を飛び出した。
そして自分の部屋に戻ると、シャワーを浴び、昨夜の記憶をなんとか辿ろうとした。

打ち上げの後、街に出て、そのあとホテルに戻って、井上くんの部屋で、みんなで騒いで…。
そこから後の記憶が、きれいさっぱり無い。

あたし、なんてことをしちゃったんだろう…あたし、浮気、しちゃったの!?

マヤの念頭にふと、真澄の穏やかな笑顔が浮かんだ。

ああ、ごめんなさい…速水さん…!
とても、速水さんに合わせる顔がないわ……。

マヤは荷物をまとめて、ホテルの宅急便で速水邸に荷物を送った。
そして、バッグ一つ持つと、フラフラとあてどなく街へ彷徨い出た。


あたし…どうしよう…速水さん…
ああ、ごめんなさい、ごめんなさい…
とんでもないこと、しちゃった…
もう、とても家になんか、帰れない…



 大阪公演が終了して翌日には、マヤは帰京しているはずだった。
それが、翌々日になっても、真澄のもとにマヤから連絡は無く、荷物だけが速水邸に帰ってきた。

マヤはどうしたというんだ!?

真澄は公演プロデューサーにマヤの行方を尋ねた。が、プロデューサーもマヤはとっくに帰京している筈だという。
真澄は心当たりの公演関係者に一通り確認してみたが、マヤの行方は杳として知れなかった。

マヤ…心配させて…どこへ行ったんだ!?

真澄は相手役、井上の所属事務所、グランド・アーツに連絡を取り、オフ中の井上をようよう掴まえた。
井上の自宅に真澄は電話を入れる。
「ああ、井上くんか。大都芸能の速水だ。」
“あ、速水社長!このたびはありがとうございました。”
「うちの奥さんだがね、井上くんを見込んで尋ねるが…。」
“はい。マヤさん、どうかされましたか?”
「いや、まだ帰っていないんだ。井上くんは帰りは一緒ではなかったのか?」
“いや、僕は一人で戻りました。”
「そうか…。」
“あの…マヤさんですが…”
「何か?」
“打ち上げのあと、随分酔っていらして、僕の部屋で朝まで眠ってしまったんです。”
「何だと!?それで、何も無かったんだろうな!?」
真澄の語気に、井上は気圧された。
“…当たり前ですよ。天下の大都芸能の社長夫人に僕が悪戯でもするとお思いですか?”
“翌朝、ちょっとマヤさんをからかったんです。”
“彼女、僕と何かあったと、誤解したらしいですね。”
「なるほど。それで帰ってこないのか。」
“そうだと思います。済みません。僕の軽口のせいで…”
「いや、判った。マヤは改めてこちらで探す。オフ中のところ、済まなかったな。」
“こちらこそ、ご心配をおかけすることになって、申し訳ありません。”
“誓って、マヤさんは潔白ですよ。ご安心下さい。”
「ありがとう。ギャラその他については、あらためて大都から連絡があるかと思う。機会があれば、またよろしく頼む。」
“はい、速水社長。今回はありがとうございました。”

真澄は電話を切った。

大阪から、マヤの行きそうな所と言えば…梅の里か!

真澄は思い当たって、源造に電話を入れた。
やはり、真澄が当たりをつけた通り、マヤは昨日から源造のもとに身を寄せていると言う。

「水城くん、今日明日の予定は総てキャンセルしてくれ。これから梅の里に行く。」
「まあ、マヤちゃん、梅の里ですか?それはそれは。真澄さま、遠路、お気をつけて。」
真澄は、取るものも取りあえず、東京駅に向かった。




 7時間かけて、その日の夕刻近く、真澄は梅の里に到着した。山寺で源造が出迎える。
「速水社長、お久しぶりです。お元気そうで。」
「源造さん、マヤは!?」
真澄はついつい源造に詰め寄った。
「梅の谷だと思いますよ。千草さまの石碑でお稽古すると仰っていました。」
「判った。ありがとう。」

真澄は久々に訪れる梅の谷に向かった。

梅の谷の最も奥深い丘に、月影千草の眠る石碑がある。真澄が早足で駆けつけると、確かにマヤの姿があった。
「マヤ!」
真澄が呼びかけると、マヤはビクリとして、真澄を振り返り、逃げるように駆け出した。
真澄は走って、マヤを追いかけた。
マヤが躓いて転んだ。
真澄はマヤに追いついて、マヤを助け起こした。

「大丈夫か?怪我はないか?」
「……」
マヤは真澄の顔から目を逸らした。
「マヤ、こっちを向いてごらん。」
「…ダメ…あたし…あたし…速水さんには言い訳できないの…ごめんなさい…。」
「誤解だ。マヤ。井上くんとは連絡を取った。マヤ、彼はマヤには指一本触れてなぞいない。」
「…うそ…。」
「本当だ。マヤは、ただ、眠っていただけだ。井上くんは、マヤをからかっただけだ。」
「あたし…何も覚えていなくて…本当に?」
「あたし…浮気しちゃったのかと…もう、速水さんに合わせる顔がないって思って…。」
「誤解なんだ、マヤは潔白だ。俺が確かめた。」
「ほんとに…?あたし、速水さんの家に帰っていいの?」
「もちろんだとも!」
「マヤ、きみは、やっと手に入れた、俺の宝だ…。」
「きみは俺と離れて生きていけると言うのか!?俺に死ねというのか!?」
「速水さん…!」
真澄はマヤを抱きすくめた。
「約束してくれ…二度と、俺から離れて生きていこうなどと思うな。俺は、きみ無しの人生など、もう考えられないんだ。」
マヤは涙を滲ませた。
「速水さん…約束するわ…。速水さんと、もう離れたりしない…。」
「きっとだな?」
「ええ、きっと…。ごめんなさい、心配かけて…。」
真澄の腕の中で、マヤは、ひとしきり涙した。




 源造に挨拶を済ませると、ふたりは下野口の街に降りた。
千秋楽以来、着たきり雀だったマヤの着替えを買い、街の旅館に宿を取った。かつての日、英介がずっと泊まっていた宿である。
ふたりは特等の部屋をとり、ふたりだけで露天風呂に入った。
そして、久々の濃い愛の夜を過ごした。



 翌朝は、良く晴れた上天気だった。まるで、真澄とマヤとの前途のように。
マヤは東京への帰途の道々、大阪公演の様子を喜々として真澄に語った。
真澄は、その一つ一つに丁寧に相槌を打ちながら、マヤの話に耳を傾けてやった。
帰りの新幹線グリーン車で、マヤは真澄と手を繋いで、眠りに落ちた。
そんなマヤを、真澄は愛おしげに見つめ続けた。




 ようやく、東京駅。
「マヤ、きみは先に家に戻ってくれ。俺はいったん出社する。」
「はい、判りました。」
マヤは1ヶ月と4日ぶりに、速水邸に戻った。
もう、戻れることはない、と一度は覚悟した家である。
マヤは感慨深く、夫婦のリビングに上がった。
私室で着替え、荷物を解き、荷物を整理した。そして、速水邸の広い風呂に入り、真澄の帰りを待った。


やがて真澄が帰宅する。
ふたりはダイニングで食事をとり、リビングでくつろぎ、マヤは真澄に甘えて、真澄の腕に凭れかかった。
真澄は、しっかりとマヤをその腕に抱き締め、マヤの長い髪を愛撫した。
「ああ、やっと家に帰った、って気がするわ…。」
「マヤ、マヤの家は、ずっとここだ。今も、そして、これからも。」
「嬉しい…速水さん…。」
「梅の谷での約束、マヤ、忘れないでくれ…。」
「ええ、ええ。速水さん…忘れないわ…。」



約束。
それはいつも繰り返す、ふたりの秘めやかな睦言。
言葉にすれば、ふたり、心満ち足りる。

マヤの大阪公演で離れていた分を取り戻すかのように、真澄はその夜も、思うさま、マヤを愛した。
夜の時は音を立てずに、ふたりを包んで、流れていった。









終わり








2002/12/2

SEO [PR] おまとめローン 冷え性対策 坂本龍馬 動画掲示板 レンタルサーバー SEO