337500番ゲット・アルバトロス様リクエスト:さて、思いがけず337500番をゲットさせていただきました。あーどうしましょう。
 いちゃつく二人もいいけど 久しぶりに言いたい放題言うマヤちゃんが見たいかな。
 高校生で 真澄様の挑発にまんまと乗り 豆台風と化し「速水さんなんて大嫌い!」というのを優しく見つめるような真澄様でお願いします。
 もしよければ 聖さんもご登場願いたいです。
 ぷりぷりしているマヤちゃんが思わず 「ひどいんだから!!」などと愚痴るのを 狼狽を隠しながら聞いているような。
 なんか あれもこれも浮かんでは消えという感じですが よろしくお願いいたします。

※言いたい放題高校生マヤちゃんですか。私の大好きな聖典(原作)のワンシーンを交えまして、書かせていただきますわね。





 地下劇場。
芝居の支度をしている劇団つきかげ・一角獣のもと、真澄の車が停まった。
真澄の姿がマヤの眼に入る。
「大都芸能の!」
「大都芸能の…続きは何だ。言ってみたまえ。」
真澄がマヤを揶揄う。
「あ…う…、ゆ…有能でえらい若社長…。」
「ほめてくれてありがとう。顔の表情の方もそう言ってもらいたいもんだ。」
真澄は悠然と受け流す。
「な、なんのご用ですか!?わざわざこんな所まであたしをからかいに来たんですか!?」
「きみに傘を返しに来た。以前、雪の日にきみが僕に貸してくれたイチゴの傘だ。」
「そのお礼にきみを舞台に招待したいと思ってね。『ジュリエット』の舞台に。」
「『ジュリエット』!」
マヤは驚愕する。
「姫川亜弓の一人芝居『ジュリエット』。きみも評判くらいは聞いているだろう?」
「連日超満員で、すでに切符は楽日まで売り切れ。100名まで立ち見を許しているが、運が良ければ補助席に座れる。」
「たまには立ち見もいいだろう。開演は6時半だ。ここからなら車を飛ばせば10分で着く。」
鋭く真澄はマヤを見おろした。
「いや!いやです!あたし劇場になんか行きません!」
「行って下さい!ひとりで!あたしには構わないで!」
マヤの拒絶に真澄は穏やかに答えた。
「もしも…俺と一緒に行くのが嫌だというのなら、俺はきみを劇場まで送り届けるだけにしよう。」
「いいえ…!いいえ、あたし、亜弓さんの舞台を観になんか…!」
マヤは蒼白な顔で、真澄から目を背けた。
「亜弓くんが恐いのか?」
「現実に目を向けたまえ!きみと『紅天女』を競おうとしている少女が今どんな演技をしているか、しっかりその目で見届けようとは思わないのか!」
そして、真澄は皮相に言葉を継いだ。
「それともきみは姫川亜弓などは問題にしないほどの天才なのか。」
(なんてイヤミな人なの!)
その皮肉に、マヤは反射的に真澄にくってかかった。
「い…行けばいいんでしょう!行けば!」
真澄の挑発にマヤは真澄の意図通り乗せられてしまった。
「よろしい!今から飛ばせばギリギリで間に合う。」
真澄は腕時計を確認した。
「チビちゃんを借りていきますよ。帰りはちゃんと送り届けますからご心配なく。」
真澄は麗に声をかけて、マヤを劇場へと連れて行った。



マヤは亜弓の『ジュリエット』を立ち見で観劇し、大きな衝撃を受けていた。
ガクガクと震えながら真澄の腕に取り縋り、亜弓の上達ぶりと今の自分を比べ、ポロポロと涙を零した。
アンコールも終え、観客達も引き揚げたガランとした劇場の片隅。
「まだ俺の腕が必要なら、このまま歩いて行こうか?」
マヤはハタと我に帰り、慌てて真澄から身体を離した。
「あっ!あたし…いつのまに…」
「光栄だな。舞台の間中きみに頼りにされるとは。」
「舞台の間中…?そんなに長く…あたし…」
「おっと。」
マヤはフラリとよろけた。真澄が抱きとめる。
「大丈夫か?家まで送ろう。閉館だ。」
「いいえ…!いいえ、アパートには帰らない…あたし…月影先生の元へ…あたしを月影先生のもとへ連れていって下さい…。」
蒼白な顔に震える声で、マヤは真澄に哀願していた。
「チビちゃん…。」
「月影先生のもとへ…お願い…。」

(ああ、どうしよう…?どうすればいいんだろう…!亜弓さんには敵わない…どうすればいいの?あたし…どうすれば…月影先生…!)

マヤの動揺は激しかった。


アクターズ・スタジオ。
月影千草は、マヤに『ジュリエット』を演じるよう命じた。
ちょうどそこへ亜弓が千草との約束で訪れた。
マヤは亜弓に稽古を目撃され、思わずその場から飛び出した。



「チビちゃん!待ちたまえ、どこへ行くんだ!」
「ほっといて下さい!あたしもう亜弓さんと顔を合わせられない…!」
マヤは亜弓との厳然たる実力の差を痛感し、羞恥と嘆きに、激しく泣いた。
「チビちゃん…立つんだ。もう時刻も遅い。」
「ほっといてよ!あたし…あたし…死んじゃいたい…!」
「それで、どうすると言うんだ?きみは『紅天女』を目指すんだろう?」
涙ながらにマヤは真澄に反抗した。
「亜弓さんには敵わないんですっ…!」
「そんなことできみは『紅天女』を諦めるのか?きみの信念はそんなに簡単に曲げられるものだったのか。」
「諦めることなんて…できません!あたしのただ一つの夢…でも、でも亜弓さんに比べたら今のあたしなんか…、あたしなんか…!」
「努力することだ。亜弓くんのように。」
「あたし、精一杯やってるんです!なのに、なのに…!」
真澄は皮肉な口調でマヤを突き放した。
「『ジュリエット』では亜弓くんは大変な稽古を積んだと聞く。きみも、せいぜい稽古に励むんだな。」
「意地悪!あたしが傷ついているのがそんなに面白いんですか!?」
「きみなりの意地を通せばいいだろう?やってみるがいい。」
真澄はマヤを更に挑発した。
「冷血漢!意地悪!いくらあたしが亜弓さんに敵わないからって、そんなに冷たくしなくたっていいじゃない!」
「俺に八つ当たりか?小学生じゃあるまいし。いい加減にしたまえ。」
「あなたなんか、あなたなんか、大っ嫌い!大っ嫌いよっ!」
マヤはその場に泣き伏した。
「さ、送ろう。立ちなさい。」
真澄はマヤの腕を取った。
「嫌!離して!」
真澄の手を振り払ってマヤはひとしきり、大声で泣き続けた。
真澄には嘆くマヤの心情は易々と理解することができた。

(この子は…。可哀相だが、確かに今の姫川亜弓には敵うまい…。)

ひとりマヤを見おろす真澄の瞳は穏やかに澄んで、それは、真澄の隠された本心からの優しさに満ちていた。
そう、真澄自身も、自らは知らない。その眼差しを。


(ひばりが羨ましかった…マヤ…!私があなたより優れているのは演技の技術だけかもしれない…私はあなたの本能が恐い…。)
千草はマヤと亜弓、ふたりの本心を見抜いて、密かに微笑んだ。



「マヤは?」
「宥めて帰しましたよ。家まで送り届けるよう運転手に命じて車に乗せました。心配は要りません。」
「さっきは何故あんなことを?」
真澄は千草に尋ねた。
「亜弓さんのジュリエットをあの子に演らせたこと?」
「そうです。しかもあの時刻に亜弓くんが来ると判っていて、わざと?」
千草は紅茶を飲みながら、フッと笑った。
「マヤに今の自分の実力の程を思い知らせたかったのよ。」
「亜弓さんのジュリエットを演ることで、現在の亜弓さんとの差をはっきり思い知ったことでしょう。」
「それを亜弓さんに知られてしまったことはマヤには大変な打撃になっているでしょう。」
「姫川亜弓…素晴らしい少女だわ。『紅天女』を演るのに申し分のない少女よ…。」
「真澄さん、マヤと亜弓さんの差は何だと思って…?」
千草は真澄を振り返った。
「差?」
真澄は千草の思いがけない問いに、千草に問い質した。
「自信と闘争心。亜弓さんにあって、マヤに無いもの。」
「才能を活かすも殺すもこの二つにかかっているといっても過言ではないわ。」
「今のままではマヤは決して亜弓さんを越えることなどできやしない…。」
「亜弓さんの『紅天女』は、さぞかし美しいことでしょうね。観客の目をきっと釘付けにしてくれることでしょうよ。真澄さん。」
「月影先生!」
千草はふと、笑みを漏らした。
「マヤには荒療治が必要です。」
「荒療治?」

(何を考えているんですか?月影先生、あなたは一体…)

真澄はじっと千草を見つめた。そして口にした。
「ただ一つ聞かせて下さい、月影先生。」
「あなたは北島マヤの演技の才能を、どんなものだと思ってらっしゃるんですか?」
「演技の才能?あの子の…?北島マヤの?あの子の才能ですって?」
千草は高笑いした。そして断言した。

「北島マヤ…あの子は天才よ…!」

真澄はゾッと総身に鳥肌が立った。




 聖は一ツ星学園の校長室を訪れていた。
聖は大学進学をマヤに勧めたが、マヤはそれを辞した。
「わかりました。あの方にそう伝えておきましょう。」
「それでは、わたしはこれで…。」
「聖さん!」
「何か?」
「あたしの…卒業式の日にもう一度会ってもらえますか?」
「卒業式の日に?」
「ええ…。あたし、紫のバラのひとに差し上げたいものがあるんです。それを預かって、その方に渡して頂きたいんです。」


マヤは聖の車まで、聖を見送った。
車の助手席には、紫のバラが一輪、落ちていた。
「あ、紫のバラ…!」
「ああ、花束から一輪、落ちましたね。」
「そういえば…この学園に入学したばかりの頃、大都芸能の車の中にも、紫のバラが落ちていたわ…。」
聖はマヤの口から出た「大都芸能」の言葉に、咄嗟に狼狽した。

(まさか…気づいているのか?)

聖は息を詰めて、マヤの言葉に耳を傾けた。
「紫のバラのひとは、こんなに親切で優しいのに、あの大都芸能の冷血仕事虫ったら…!」
「このあいだだって、あたしが嫌だって言うのに、あたしをからかって亜弓さんの舞台に無理矢理連れて行って…。」
「亜弓さんにあたしのぶざまな稽古を見られて、あたし恥ずかしくて死にそうだったのに、あいつ、冷たくって!」
「ああ!もう、思い出すだけで腹が立つ!速水真澄!なんて酷いやつなの…!」
聖は注意深く、愚痴を言うマヤの言葉を聞いていた。
「聖さんは、あの大都芸能の冷血漢と違って、優しくてご親切で、あたし、とっても聖さんが好きです。いつも本当にありがとう。」
聖は複雑な気持ちで、マヤの言葉を聞いた。
「いいえ。僕はあの方のご意志で動いているだけですよ。」
聖の穏やかな物腰は、マヤの憤懣やるかたない心を、やさしく宥めた。
「聖さん、じゃあ、卒業式の日にまた来てください。お願いします。」
「判りました。」
マヤは聖から渡された紫のバラを愛おしそうに抱えると、聖に満面の笑顔を向けて、走り去っていった。





 深夜。隣に眠るマヤのむせび泣く声で、真澄は飛び起きた。
「マヤ…マヤ!」
真澄は魘されるマヤを揺り起こした。
「あ…う…ん…」
「マヤ!どうした!?」
「あ…はやみ、さん…。」
「目が醒めたか。悪い夢でも見たか?」
マヤはまだ、しゃくりあげていた。
真澄はマヤを抱き締めて、子どもをあやすように神経を高ぶらせたマヤを慰めた。
「夢、夢を見たの…昔の夢を…悲しい夢だった…。」
真澄はベッドから身を起こすと、リビングに足を運び、ブランデーをグラスに注いで、寝室に持ってきた。
そして、口移しで、マヤにブランデーを飲ませた。マヤがプランデーに噎せて咳こんだ。その背中を、真澄はゆっくりさすってやる。
マヤの頬の涙の痕を真澄は指で拭ってやり、マヤの瞳を覗き込んだ。
「どんな夢だったんだ?」
「あたしが高校生の頃…。亜弓さんの『ジュリエット』を見て、絶望した日のことだったわ…。」
「あの頃の速水さんは、いつも冷たくて、あたし、まだ速水さんの心を知らずにいたの…。」
晴れて真澄と結婚して、3ヶ月も過ぎた夜のことである。
「もう、遠い日のことだ、マヤ。そんな日もあったな…。」
「マヤが安心して、幸福に暮らすことが出来れば、そんな悲しい夢は見なくて済むようになるさ。」
「過ぎてしまえば、みんないい思い出だ。」
真澄は静かな声音で、マヤを諭した。マヤには真澄の優しさが身に浸みた。
「うん…月影先生も聖さんも、夢に出てきた…。月影先生…懐かしい…もうお会いできないのね…。」
「速水さん、あたし、せめて聖さんに会いたいわ…。」
「よし。近々、聖を呼ぼうな。」
「月影先生…聖さん…麗…みんな、みんな、…懐かしいわ…。」
「ああ。もう、遠い日だ。」
「うん、ほんとに…。」
「マヤ、今を大切にしてくれ…。今も、これからも、俺がずっと一緒だ…俺がきみを守る…。」
「ええ、ええ。速水さん…。」
「さ、マヤ、眠るんだ。朝はまだ遠い。」
真澄はプランデーグラスをサイドテーブルに置くと、ベッドに横になった。
真澄の腕枕に、マヤはそっと身を寄せた。
そのマヤの華奢な肩を、真澄は片腕でしっかりと抱き締めてやった。
真澄の肌の暖かな温もりはしずやかにマヤの心に滲みて、マヤはやがて、再び眠りに落ちていった。



 それからマヤは真澄と、繰り返し、繰り返し、思い出話に興じた。
真澄と語ることで、マヤは過去のすべてを人生の佳き思い出へと昇華させていった。
結婚までの長い年月に積み重ねられた遠い日の思い出の数々は、尽きることがなく、ふたりの間にいつまでもふり積もっていった。







終わり







2002/12/1

SEO [PR] おまとめローン 冷え性対策 坂本龍馬 動画掲示板 レンタルサーバー SEO