322800番ゲット・HUYU様リクエスト:高校生のマヤちゃんはテストが近く、鉛筆に全ての運を任せ、
 ヤマを張っていた所へ水城さん登場。留年はさせられないと、真澄様の気持ちも考慮に入れ、
 彼に指導役をお願いする。真澄様はマヤちゃんに教える内に、自分の気持ちに確信をもち始める
 折りしも時は夏。薄手の制服姿に真澄様悶々。理性が危なくなってしまいます
 (マヤちゃんも高校生ですのでちょっとにしてあげてくださいませ)
 その後の展開、及びその他のことは全てお任せ致します

※HUYUさん、いつも新鮮なリクエストありがとうございます。





「何の真似だ?」
「何がでございます。」
「紫のバラだ。きみが贈ったんだろう?」
「それがお判りになるのは当の紫のバラのひと本人しかいませんわね。ついに語るに落ちるというわけですか。」
「大都芸能の若社長。仕事の鬼。誰にも心を許さぬ冷血漢。恋などしたこともない…。」
「…あの子を愛してらっしゃるのね。」
「!」
「…なにを、ば…」
「ばかなことを言うと仰るの?ばかなのはあなたの方ですわ。」
「ただのファンだなどとは仰いますな!いつもあなたがあの子を気にかけているのは判っています。」
「あなたはあの子に恋しているんですわ!」
「11も年下の少女だぞ!それもあんな小さな…」
「だから何だというのです?今までそう思ってご自分の気持ちを誤魔化してこられたのでしょう?」
「あなたはあの子を愛してらっしゃるのよ!」
「よさないか!」
真澄は思わず水城の頬を叩いていた。
「…すまない…。」
「…いいえ。」
「あの子もすぐ大人になりますわ。恋をするのに相応しい年に…。」
端的にそう言うと、水城は社長室を後にした。


(愛しているだと…?11も年下のあの小さな少女を…)
真澄は水城の鋭い指摘に、激しく動揺していた。
(愛しているだと…!?11も年下のあの少女を…この俺が。愛しているだと…!?)
真澄は自問自答を繰り返した。




 おりしもマヤは月影千草の意志で大都芸能入りし、MBAテレビの大河ドラマ・紗都子役に取り組み、忙しい学園生活を送っていた。
大都芸能の北島マヤ・プロジェクトは順調に進み、マヤはスター街道をまっしぐらに驀進していた。
高校2年、一学期の期末テストも近づいた。
ドラマ撮影で授業も休みがちなマヤには、荷が重い期末テストであった。
「この鉛筆が倒れたところが、テストのヤマ。えいっ!」
マヤはスカイハイツマンションの自室で、教科書に鉛筆を転がしていた。
「マヤちゃん、入るわよ。」
水城がマヤのマンションを訪れた。
「あ、水城さん。」
「何をやってるの。」
「テストのヤマかけしてるんです。ロクに授業受けてないから、テストなんてさっぱり判らなくて…。」
「そう。では、テストまで、家庭教師をお願いしましょうか。明日からここに来て貰うことにするわ。」
「テストの時間割は決まっているのね?」
「ええ。テスト、単位がとれないと留年しちゃうかも…。」
「留年はさせられないわ。あなたは高校生スターなのよ。家庭教師の先生について貰って、しっかり勉強してちょうだい。」
「あーあ、大変だわ…。」
「マヤちゃん、あなたは大都芸能の大事なスターよ。だからこそ学校の勉強も大切にすることね。」
「はい…。」
マヤは項垂れた。
「明日、スタジオから戻ったら、家庭教師が来ます。ちゃんと勉強するのよ。いいわね?」
マヤに有無を言わさぬ口調で水城はマヤに告げると、マヤのマンションを出て、大都芸能本社に向かった。



 社長室にはまだ灯りが灯っているのを確認して、水城は真澄の社長室に上がった。
「失礼します。」
「やあ、きみか。どうした、こんな遅くに。」
真澄は水城の瞳をサングラス越しに覗き込んだ。
「マヤちゃんですが、期末テストの勉強が捗らず苦労していますわ。真澄さま、あの子のテスト勉強を見てやっていただけませんこと?」
「それは…高校生の勉強くらい、わけは無いことだが…」
「赤点で留年はさせられませんわ。今は真澄さまが、最も適役かと。」
真澄はふと笑うと、水城に答えた。
「いいだろう。俺が見てやる。」
「夜10時には、マヤちゃんは部屋に戻りますわ。それから2時間、勉強を見てやって下さい。これがテストの時間割です。」
水城は真澄に時間割を書いたメモを渡した。
「では、私はこれで。真澄さま、宜しくお願いしますわね。」
「了解だ。」
水城の辞していった後、真澄は愉しげに微笑んでいた。
水城にはその真澄の心中は手に取るように判る気がしていた。



 翌日。MBAスタジオから帰宅したマヤが勉強机で教科書を睨みつけていると、玄関のチャイムが鳴った。
(水城さんの言ってた家庭教師かしら…。)
「はい。今開けます。」
マヤはマンションのドアの鍵を開けた。そこには。
「速水真澄…!」
「やあ、チビちゃん。毎日撮影ご苦労だな。水城くんに頼まれた。俺が勉強を見てやる。」
「そっそれは…何もあなたが、なんで…」
「きみは大都芸能の大事な金の卵だ。赤点で留年させるわけにはいかない。」
マヤは唖然として、真澄を喰い入るように凝視した。
「あなたになんか教えて貰わなくたって、いいです!」
真澄は問答無用で、マヤを促した。
「さて、さっさと始めるぞ。テスト1日目は英語、数学、世界史だな?」
真澄は椅子をマヤの机に並べると、呆然と真澄を睨みつけているマヤの腕を取ってマヤを机に座らせた。ふたりは並んで机に向かった。
「英語から行くぞ。この範囲なら、まず英単語を暗記する。新出単語の辞書を引くんだ。」
マヤはまだ怪訝そうに真澄を見つめていたが、言われるがまま、英単語を辞書で調べ、ノートに記入していった。
「範囲の新出単語は丸暗記する。文法はここと、ここ。サマリーに出てくる問題も丸暗記する。」
真澄は流暢な発音で、英語のリーダーを朗読した。
「速水さん、英語、巧いんですね…。」
「一応大学まで出ているんでね。」
「リーダーは10回読む。きみならそれで頭に入るだろう。台本だと思えばいいんだ。ほら、10回、読んでごらん。」
「えーと、えーと…。」
マヤは、つっかえつっかえ、なんとかリーダーを読み上げた。真澄が所々、発音を修正してやる。
「よし。英語の試験範囲はこれでいいだろう。次、数学行くぞ。何処が範囲だ?」
「えっと、複素数と方程式…。」
真澄は複素数の説明を詳細に教示してやった。
方程式は問題集をマヤと一緒に解いていく。
「そこで式を展開する。そうだ。」
「わあ!できた!」
マヤがパッと顔を輝かせて、真澄を振り返った。
マヤのその明るい笑顔に、真澄は一瞬不意に胸が詰まった。が、すぐ気を取り直す。
「試験範囲の問題集、一通り解いてしまおう。」
真澄は方程式を次々と解いていく。マヤは真澄について、必死で式の解題をノートに写しとった。
真澄はふと、真剣なマヤの横顔に見入った。
言葉にならない想いが、真澄の胸を仄かに暖めた。
真澄はフッと笑って、マヤを見つめた。
「何ですか?あたしの顔に何かついてます?」
「いや、なんでもない。そうやって素直に勉強していると、いかにも高校生らしい。」
「あたしは高校生ですよーだ。速水さんなんかには大昔のことでしょ!」
「こら!高校生は素直に勉強する!次の問題、行くぞ。」
「はいはい。」
真澄は試験範囲の方程式を一通り解き終えた。マヤも真澄に習って、ノートに問題を解いていく。
「数学、あんなに難しかったのが嘘みたい。速水さん、教えて貰って良かった!」
マヤは素直に喜びを表現する。マヤのその率直な明るさは真澄の胸にじんわりと滲みた。
「世界史は、歴史の流れと地域の連動がポイントだ。」
「一つの国で起こった出来事が他の地域にどう伝播してゆくか。その視点で覚えれば、難しい暗記じゃない。」
「重要な年号はこれとこれ、それにこれ。」
真澄は年表に次々にアンダーラインを引いていく。
「年号、これだけは全部覚えるんだぞ。」
「えーー、こんなに沢山!?」
「台本を覚えるより、よっぽど簡単じゃないか。」
「年号と事件をノートに10回、写して。」
真澄の指導は的確だった。マヤは学校の授業よりはるかに分かり易く、試験範囲を理解していった。

「よし。今日はこれまで。明日は今日の復習をするからな。」
「はぁい。ありがとうごさいました。」
「もう遅い。明日も学校から撮影だろう?早く休むんだな。」
「俺はこれで帰る。また明日来るからな。おやすみ。」
「…おやすみなさい、速水さん。」
真澄はマヤのマンションを後にした。



(あたし…どうしちゃったのかしら…あの速水真澄と、こんなに楽しく勉強なんかして…)

マヤはシャワーを浴びると、早々にベッドに潜りこんだ。
忙しい一日の疲れから、マヤは深く考えることもなく、あっという間に眠りに落ちていった。




(あの子が愛おしい…。それが、俺にとって、唯一つの真実かもしれない…。)
夜を徹して真澄は、マヤへの想いをひとり、反芻していた。




 翌日も、真澄は夜遅くマヤのマンションにやってきた。
マヤは学校からMBAに直行し、稽古着に着替えてカメリハにあたり、また制服に着替えてマンションに戻る。
真澄はスーツの上着を脱ぎ、ネクタイを緩めた。
ふたりは昨日の復習を進めた。
マンションの部屋には冷房が効いていた。
マヤがくしゃみをした。
「冷房が効き過ぎじゃないか?窓を開けよう。大事な商品に風邪でもひかせる訳にはいかない。」
真澄は言って、席を立つと、マンションの窓を開けて網戸にした。
夏の夜風が、さあっと部屋に入ってくる。
その夜風でマヤの薄い夏の制服を通して、干し草のようなマヤの肌の香りが、香り立った。
真澄は不意に頭を擡げてくる激しい想いに、我を忘れた。

(抱き締めてしまいたい…!)

「速水さん?」
立ち尽くす真澄を、不思議そうにマヤが見あげた。その瞳の、愛くるしいまでの、明るい輝き。
「あ、ああ。続きを。チビちゃん。」
真澄はマヤの横に腰掛けた。傍に寄ると、マヤの香りが、はっきりと香ってくる。
真澄は動揺していた。

(なんてざまだ…速水真澄…俺ともあろうものが…)
(この小さな少女の細い肩を、抱き締めてしまいたい…)
突き上げてくる衝動に、真澄は危うく駆られそうになる。

「速水さん、出来ました!」
マヤの楽しげな声に、真澄はハッと我に帰った。
「よし。よくできたな。今日はこれまでだ。明日は現国、化学、地理だな?。」
「そうです。」
「ご苦労。チビちゃん。明日また来る。早く休むんだぞ。」
「はーい。ありがとうございました!」
真澄は脱いだ上着を手に取ると、マヤのマンションを出た。



(速水真澄…俺としたことが…相手は11も年下の小さな少女だぞ…)
(これが俺の本心なのか…俺の真実なのか……。)
真澄はマヤへの募る想いに、ひとり胸を熱くしていた。




 それからマヤのテスト終了まで一週間、真澄はマヤのマンションに通った。
マヤは素直に、真澄の指導についてきた。
或る夜は、マヤが疲れて机に突っ伏して眠ってしまい、真澄はマヤを抱き上げてベッドに寝かせた。
あどけなく無垢なマヤの寝顔に、真澄はしばし見入った。
(チビちゃん…いや、マヤ…俺は…おまえが愛おしい…。それだけが、俺の真実……。)




 真澄の“家庭教師”は見事功を奏し、マヤは期末テスト全科目をほぼ平均点で通過した。
一方、映画『白いジャングル』も無事完成し、マヤは大都芸能の企画通り順調にスターの階段を登って行った。
真澄はマヤの母親を監禁することに、初めて躊躇いを覚えていた。
部下には「女優は商品」と厳命しながらも。




 真澄もマヤも、いまだ知らない。このあと訪れる運命の歯車の軋む音を。
運命は音もなく、その両輪を進めていた。
北島春の死。
乙部のりえの策略。
水城に責められて真澄は母親の遺骨を抱いて離さないマヤの姿を目にした。
そのとき、真澄は生まれて初めて深い罪悪感を覚えた。
それは、大都芸能の仕事の鬼、冷血漢と呼ばれてきた真澄の、今まで崩れることのなかった心を大きく揺さぶった。
そして北島春の死はその後のマヤの運命を大きく揺り動かすことになった…。




真澄はやがて知ることになる。唯一つの、真澄の真実を。
何一つ演技出来なくなった行方不明のマヤを探し出し、しのつく雨に打たれて真澄はマヤを速水邸に連れて帰った。
高熱に呼吸を乱すマヤを見つめながら、真澄は真正面から、自らの真実に向き合った。

そうとも!
今こそ認めよう…!
俺はおまえを愛している!
マヤ…!



そして、真澄の長く苦しい恋の道程が始まった。
紫の影としての、長い片恋が。

秘めていなければならない、この想いを。
俺の中で、一生紫のバラは枯れることは無い…!

それだけが、真澄にとって、唯一の真実だった。


運命と、そして、真実。
マヤと真澄、ふたりを巡る運命の歯車は、今は秘やかに音をひそめ、その行く先を、今なお誰の一人も知ることはなかった。









終わり







2002/11/21

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