318500番ゲット・いずみ様リクエスト:リクエストですが、これまでキリ番を踏まれた方が、
 素晴らしいお話をリクエストされていて、悩みました。
 リクエストですが、マヤちゃんと真澄さんが、結婚して赤ちゃんが産まれてからの
 子育てのお話をお願い致します。
 初めての子育てであたふたするマヤちゃんや、赤ちゃんにメロメロな真澄さん、
 最後は、2人で幸せだな〜と感じる・・・。というお話を読んでみたいです。


※ギョギョ!あのーー、私、独身で結婚もしていませんし出産の経験も無いんですけど…
  それでもよろしいですか?何とかやってみます(汗)





 晴れてマヤと真澄が結婚して3年。マヤは23歳。
『紅天女』女優としての地位も確立し、真澄に支えられて公私ともに充実し、順風満帆の芸能生活を送っていた。



 或る夜、真澄がマヤに囁いた。
「マヤ、そろそろ子どもが欲しくないか?」
「そうねぇ。でも、仕事も順調だし、あたしはまだお母さんになる自信なんてないわ…。」
「大丈夫だ。俺に出来る限りのことはするさ。来年の舞台スケジュールは決まっているんだろう?」
「うん。『紅天女』は決まっているわ。」
「舞台に合わせて復帰できるようにスケジュールを合わせよう。基礎体温表を見せてごらん。」
真澄は枕元のマヤの基礎体温表を確認した。
「これでいくと、来週中だな。マヤ、体温はきちんと測っておくんだぞ。」
有無を言わせず真澄は念を押した。
「いつもちゃんと測ってるわよ。」
不承不承、マヤは答える。
「俺はそろそろ子どもが欲しい。マヤ、体温が下がったら教えてくれ。」
真澄の断固とした物言いにマヤは内心舌を巻いた。
「…はい。」


 翌週の朝。マヤが基礎体温を測ると、体温計は最も低い数値をはじき出した。
「真澄さん、起きて。真澄さん。」
「うん…何だ?」
朝まだきに揺り起こされて、ようよう真澄は目覚めた。
「下がった。体温。今日、排卵日だわ。」
その言葉を聞いて、真澄は跳ね起きた。
「そうか!じゃあ、今日は出来るだけ早く帰る。今夜はゆっくりしような。」
「…ええ、そうね…」
マヤの気のない返事に、真澄は意外そうに尋ねた。
「なんだ、嬉しくないのか?」
「なんだか…あたし、自信なくて…」
「俺がついている。マヤは何も心配することはない。」
真澄はきっぱりと断言した。
「とにかく今夜は特別の日だ。早く帰るから。」
「はい…。…あたしも舞台がはねたら真っ直ぐ帰るわ。」
「よし。さて、起きるとするか。奥さん。」
マヤに軽く接吻すると真澄はダブルベッドから身を起こした。


ふたりは朝食をとり、それぞれの仕事へ出かけていった。
その夜。
自然の摂理とは、良く出来たものである。
マヤはかつて無い深い性愛の悦びに震え、熱く狂おしく真澄を求めた。
真澄も溜飲を下げる思いで、繰り返し夜更けまで、何度もマヤを愛した。



 それから1ヶ月。マヤは基礎体温表を持参して産婦人科を受診した。
妊娠反応は陽性。マヤは無事受胎していた。
会社の真澄に、結果報告の連絡を入れる。
“そうか!やったな、マヤ!今日は早く帰る。”
電話口の真澄の声は、明るく弾んでいた。

その夜更け、マヤのネグリジェを脱がせた真澄は、マヤの腹部をそっと撫でた。
「この中に、俺とマヤの子がいるんだな…」
感慨深げに真澄は呟いた。
「あたしだって、まだ実感が湧かないわ。真澄さん、優しくしてね。赤ちゃんがびっくりしないように…」
「ああ、判っている。」
真澄はそっと、静かに、マヤを抱いた。
「あ…あ…真澄さん…」
「マヤ…愛しているよ…」
真情こめて、真澄はマヤに囁いた。


 それから安定期に入るまで、マヤは仕事を減らし、養生に務めた。
幸い悪阻も軽く、妊娠の経過は順調だった。
真澄が山と積まれた本を、夫婦のリビングに運んできた。
「なあに、それ?」
「育児書だ。俺も読もうと思って。」
マヤは夜食をリビングに運ばせた。
「あたしって、よっぽどたくましく出来てるんだわ。今日、これで5食目よ。もう、お腹空いてたまんないの。」
「経過が良くて何よりだ。」
真澄は運んできた育児書を読み耽った。



 1か月ごとの検診には、真澄も必ずついて行った。
超音波で撮影した胎児の写真を貰ってきて、真澄はしげしげと写真に眺め入った。
マヤは母親学級にも通い、次第に母の自覚も育ってきた。
「男の子が産まれるかしら。女の子が産まれるかしら。」
病院の主旨で、男女の性別は、出産まで明らかにはされていない。
「マヤの顔つきが優しくなったからな。女の子かもしれないな。」
「あ、動いた!」
「本当か?どれどれ。」
真澄はマヤの、6ヶ月に入った腹部に手を当てた。
「おっ、足で蹴るな…。良かった、足はある。」
「元気で無事に産まれてこいよ。」
真澄はマヤの胎児に話しかけた。
真澄はソファに腰掛け、膝の上にマヤを座らせた。
そして、マヤの腹部を愛撫した。
「こうすると、マヤと赤ん坊のふたりを抱ける。」
言って真澄は優しく微笑んだ。



 やがて臨月。小柄なマヤには、はち切れんばかりに、腹部が目立った。
真澄は子ども部屋を新築させ、乳母を新たに雇った。
マヤは破水し、急ぎ入院が決まった。
乳母が付き添い、マヤは大都芸能にほど近い東京女子医大に入院した。
入院から20時間かかって、初産のマヤは無事3000グラムの女の子を出産した。
真澄は連絡を受けると、会社を飛び出し、女子医大に駆け込んだ。

「マヤ!よくやってくれた!」
「ごめんなさい、男の子じゃなくって…」
「男の子なんて、沢山さ。俺がいい例だ。」
「赤ちゃん、見てきた?」
「ああ。マヤにそっくりだ。」
「あら、真澄さんにそっくりだと思ったけど?」
まだ顔立ちもはっきりしない新生児の顔を話題にするふたりは、この時まさしく幸福であった。


個室をとったマヤの病室に、毎日山のように祝いの品や花が届く。
付き添いの乳母が、荷物を整理して、自宅へ送らせた。
「速水さん、授乳のお時間ですよ。」
「あ、はい、今行きます。」
看護婦に呼ばれて、マヤは授乳室に入った。
慣れない手つきで赤ん坊を抱き、乳を含ませる。赤ん坊は元気にマヤの乳を吸った。
「はい、赤ちゃん、お腹いっぱいね、ゲップしましょ。」
赤ん坊はゲップと一緒に母乳も吐き出し、マヤのネグリジェの肩を濡らした。
「あん、またこっちまで濡らしてくれちゃってぇ…」
マヤは看護婦に赤ん坊を返すと、個室に戻って着替えた。

麗とさやか、美奈、泰子が揃って、マヤを見舞いにきた。
「わあ、みんな、来てくれたの!」
マヤが声を弾ませる。
「赤ちゃん、見てきたよ。マヤ、おめでとう。」
「可愛い赤ちゃんね。速水さんに似て、美人になるわよ。」
「速水さんは?仕事かい?」
麗が尋ねる。
「うん。でも毎日覗きに来るの。」
「マヤと速水社長の子かぁ。どんな子になるんだろうね。」
「素直で優しい子に育ってくれればいいなと思う。」
マヤはごく単純に答えた。
「そうしてるとマヤ、マヤもすっかりお母さんの顔だわね。」
美奈がひとしきり感心する。
「そ、そう?あたし、まだ自信なくて…」
「子どもと一緒に親も育つって言うじゃない。大丈夫よ。」
泰子がいつもの彼女の元気な口調でマヤを励ました。

しばらく歓談すると、つきかげの旧友たちは辞していった。
「速水社長によろしくね。」
「今日はみんな、ありがとう。」

ほどなくして、入れ替わりに真澄がやってきた。
「マヤ、具合はどうだ?」
「うん。大丈夫。さっき授乳した。」
「そうか。来週には退院できるそうだ。楽しみだな。」
「うん。名前、決めなきゃね。」
「女の子なら『愛』に『子』で『愛子』、男の子なら『雄大』と書いて『たけひろ』と決めていたんだ。どうだ、マヤは?」
「字画もバッチリだぞ。」
「愛子ちゃんかぁ。素敵だわね。」
「文字通り、俺とマヤの愛の結晶だからな。」
マヤは含羞んで、微笑んだ。真澄の愛に守られて、マヤの微笑みは美しく輝いた。



 それから1週間、マヤは赤子を連れて、速水邸に戻った。
英介は真澄以上に喜んで、親子を迎えた。
「この家で赤ん坊の声が聞けるとはな。マヤさん、よくやってくれた。どれ、わしにも抱かせてくれ。」
すやすやと眠る赤子を英介は膝に抱き上げた。
「うん、この子は美人になるぞ。赤ん坊にしては整った目鼻立ちだ。」
「わしに孫ができるとは…。マヤさん、いい子に育ててくれ。」
「はい。お義父さま。」
英介に頬ずりされて、赤ん坊は目を覚まし、火のついたように泣き出した。
「おお、元気な鳴き声だの。」
「さ、御前さま、赤ちゃんをこちらへ。育児室にお連れします。」
乳母が赤子を抱き取った。
「おう。よく世話をしてやってくれ。」



 その日から、速水邸で、マヤの育児が始まった。
産休は2ヶ月の予定で、その後は乳母任せになる。
それまでは、マヤはせめて24時間、赤子についていてやりたいと願った。
真澄も早く帰宅しては、飽くことなく赤子に見入った。
「マヤ、泣いているぞ。」
「はいはい。お襁褓は濡れてないわね。じゃ、お乳をあげましょ。」
マヤはまだ首のすわらない赤子をこわごわ抱くと、ブラウスをはだけて、赤子に乳を含ませた。
赤子はその小さな手を振り上げて、マヤの乳首に吸いつく。
「マヤ、そうしていると、すっかりきみも母親だな。」
真澄が感慨深げにマヤの顔を覗き込んだ。
「あら、そう?赤ちゃん、可愛いでしょ。」
「ああ。可愛いとも。」
やがて満腹となったらしい赤子は、マヤの乳首から口を離した。
ゲップを吐かせて、マヤはベビーベッドに赤子を寝かせた。
「俺にも抱かせてくれ。」
真澄は赤子をそっと抱き上げた。
赤子はフワリと軽く、小さく、そして愛おしかった。
子どもがこれほど愛おしいものだとは、真澄は初めて知った気がした。
「なんだか神々しいな…。」
「生まれたての赤ちゃんって、ほんと、そうね。」
「不思議だ…こんなに小さいのに、ちゃんと爪もついている…」
「生命の神秘だな…。」
真澄は感動に震える声で話した。
「マヤ…この俺にも、子どもができた…こんなに嬉しいことはない…。」
「ありがとう、マヤ…いい子を産んでくれて…」
真澄は赤子を静かにベッドに寝かせた。
そして、飽かず、赤子の寝顔に見入っていた。
「真澄さん…あたしは子ども部屋で寝るわ。真澄さん、もう寝ないと。明日も忙しいんでしょ?」
「ああ。明日は出生届を出しに行ってくる。お休み、マヤ。」
真澄はマヤの頬をそっと撫でた。
「お休みなさい。」


真澄は区役所に出生届を出し、赤子は晴れて「愛子」の命名を受けた。



 3時間ごとの授乳で寝不足のマヤが昼間のうたた寝から醒めると、赤子の顔中に発疹ができていた。
「佐藤さん、佐藤さん!」
マヤは慌てて乳母を呼んだ。
「奥様、どうなさいました?」
「赤ちゃんが…!顔中ポツポツだらけになっちゃった…!」
マヤは酷く動揺して半分泣き顔である。
乳母は赤子を覗き込んだ。
「ああ、新生児発疹じゃないでしょうかね。2、3日で治りますよ。」
「そうなの?でも…」
マヤはおろおろと、ベビーベッドの回りをウロウロした。
そしてマヤはついつい会社の真澄に電話を入れていた。
「真澄さん、愛子ちゃんが…」
“どうした!?何かあったのか!?”
「顔中ポツポツだらけになっちゃったの…。」
“新生児発疹じゃないのか?”
育児書を読破している真澄の方が、マヤより詳しかった。
「うん、佐藤さんもそう言うんだけど…」
“マヤが心配なら小児科に行くといい。俺は今日は早く帰れないんだ。医者によく診てもらってくれ。”
「うん、そうする…。ごめんなさい、電話しちゃって。」
“いいさ。愛子を頼む。”
「はい…」
マヤは不安でいっぱいになり、車を手配させると、女子医大へ赤子を連れて行った。
診察の結果は、やはり新生児発疹。発熱には注意するようにとだけ、指示を受けた。
マヤは全身の力が抜ける思いで、速水邸に戻った。



 赤子の予後の経過は良く、1週間もすると元通りのすべすべした肌に戻った。
発育も順調で、1か月検診では、標準の新生児よりずっと大きかった。

日曜日。
真澄は日がな一日、子どもとマヤとともに過ごした。
「愛子、愛子、愛(めぐ)し子よ…」
真澄は節回しをつけて子どもの名を呼んだ。
「やあ、可愛いね、愛子ちゃん。」
真澄は子どもに夢中だった。真澄は子どもを抱き上げ、ゆっくり揺さぶった。
「おっ、笑ったぞ。そうか、そうか、パパが好きか。」
真澄はとろけるような笑顔で子どもを見つめた。
実際、玉のように美しい赤子だった。


「日光浴させるか。」
真澄は子どもをベビーカーに乗せると、速水邸の芝生の庭に出た。
芝生に真澄は頬杖をついて寝転び、マヤは真澄の腰を枕に横になった。
ふたりの横には、ベビーカーに乗って、すやすやと愛子が眠っている。
「真澄さんがこんなに子煩悩だって、あたし知らなかったわ。」
「冷血漢。そう呼ばれたこの俺も、初めて自分が親になってみて世の中が新しく見えた気がするよ。」
「生まれ変わったような気持ちだ。」
「マヤ、愛子、ふたりとも、俺の大切な宝だ。」
真澄は真情こめて囁いた。
「真澄さん…あたし幸せよ…。」
「ああ。俺も幸せだ…。」
「出逢った頃はこんな日が来るとは思わずにいた。マヤ…愛している…」
「愛しているわ…真澄さん…」
ふたりは、このうえない幸福のさなかにあった。
春の陽差しが、柔らかくふたりの上に降り注ぎ、春風は心地よくふたりの頬を撫でて吹き抜けていった。



 それから2年後、マヤは真澄との間に、長男を出産した。
嫡男誕生を得て、真澄はますます仕事に精を出した。家族の絆はいっそう深まった。


幸福な家族の肖像が、速水邸に刻まれていった。






終わり






2002/11/17

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