313313番ゲット・Solo様リクエスト:真澄さんは 子供の頃のことがありすぎて英介氏に対して30を過ぎた今でもまだ
 怒りの感情を捨てていません。そこでその心の軌跡と 癒し・英介への許しといった形のものを読みたいです。
 できたら紫織さんとの別れを盛り込んで 金を使うだけ使った成金趣味的なやり方を一切拒否してしまう
 素のままの真澄様をお願いいたします。
 もちろん マヤとのからみがあったらとてもうれしいです・・・

 ・・・・・人を許し 癒されていく速水さんの姿を見たいのでお願いいたします

※Soloさん、いつも面白いお料理のお話、とっても楽しく拝見していますよ♪
※再アップにあたりまして:ああ、時間があれば、もっと別のお話を書きたかったです!本当に素敵なリクエスト頂きましたのに!
  全くの時間切れで、本当に無念です…。こう毎日忙しくては…。為す術もありません…。
  いずれ日を改めて書き直せればと願っています。





 マヤは聖に打ち明けていた。
「あたし、知っているんです。紫のバラの人が速水さんだ、って…。」
そして真澄への断ちがたい想いのすべてを、マヤは聖に切々と語った。
「あたしは速水さんを愛しているんです。心から…。」
「あたしには、速水さんしかいないんです…!。」



 マヤの告白を聞いた聖は、緊急に真澄に連絡を取った。
“マヤさまは紫のバラの人の正体をご存じです。その上で、あの『紅天女』の台本をお渡ししています。”
「何だって!?」
“至急、マヤさまとお会いになって下さい。”
“マヤさまの想いに応えて差し上げてください。さもなくば、『紅天女』の試演は失敗に終わります!”
“明日、僕がマヤさまを伊豆の別荘にお連れします。”
“マヤさまは、待っています。紫のバラの人が名乗りをあげてくれるのを。”
“真澄さま、マヤさまを救うのには今しかありません!”
「判った…明日、伊豆で待っている。聖、マヤを頼む。」
“お任せ下さい。”



 翌日。マヤは聖の車で、真澄の伊豆の別荘に向かった。
(速水さん…やっと逢える…。)
はやる想いを押さえて、マヤは道路から遥かに臨む伊豆の海を、空と海との境界線を眺めた。
車はついに真澄の別荘に到着した。
「マヤさん、どうぞ。」
聖がマヤを招き入れる。
「紹介しましょう、あなたの紫のバラの人です。」
真澄はマヤを見つめて、しずやかに口にした。
「マヤ、俺が紫のバラの人だ…。」
「速水さん…!」
マヤは迷わず真澄の胸に飛び込んでいった。
聖はそれを見届けて、そっと別荘を後にした。



「マヤ、きみは俺を許してくれるのか…?」
「母さんのことは、もう済んだことです。それに、母さんにはあたしがもっと早くきちんと連絡を取っていれば、行方不明にはならなかった。」
「あたしがお芝居に夢中で、母さんを捨ててしまったのはあたしなんです。」
「速水さんが母さんを殺したとは、今ではあたしは思っていません。」
「マヤ…。」
「速水さん、あたしはあなたを愛しています。…何があっても。」
「マヤ、俺もきみを愛している。心から。」




その夜、マヤと真澄は、長年の想いを伝え合い、初めて結ばれた。


傍らで無防備に眠るマヤを見つめながら、しみじみと幸せだと真澄は思った。


マヤ、愛している…生まれてきて良かった…!
今までのすべての出来事は、この愛の成就のためにあったことなのかもしれない…。
いっさいが俺を、この愛のもとに導く。
幸福だ…。
これほど幸福だと思ったことは無い…!
この幸福のために、自分は生まれてきたのた…。
はるかに――はるかに――時を越えて……。
そう思うと、真澄は過去の楔のいっさいを肯定できる気がしてきた。
英介との葛藤、英介への憎しみ、冷酷無比を極めた仕事の数々、紫織への虚無感と焦燥、
すべてが、このマヤへの唯一つの真実の愛によって、癒され、昇華してゆく思いが真澄にはした。

自分が幸福にならければ、人を許すことなど出来はしないのだ。

今日初めて、俺は、自分の幸せを望んだ。
そして、報われた。
人生は旅だと言うけれど、俺の旅の行程は、この愛へとひたすらに旅してきたのだ…。
俺のいっさいが、この愛への旅路…。
愛は十全に愛でありたい。
愛を為すということは「高い」ことなのだ…。
愛は、すべての憎しみにまさる…。
マヤ…、おまえが俺に教えてくれた。その身を挺して。
マヤ…俺は今、人生に感謝している…。
マヤ…きみのおかげだ…。
マヤ…俺は誓おう、おまえだけを愛している…。
マヤ…俺は今、判った…人を許すことが、自分も許されることなのだ…。
マヤ…なにがあっても、俺はこの愛を貫いていこう…。
マヤ…愛している…生まれてきてよかった…本当に…!




「真澄さま…?わたくしにお話とはいったい……?」
紫織が不安げに真澄を見あげる。
「紫織さん…いつかの言葉通り、あなたは本当に僕を愛してくれているのですか?」
「偽りなく、真澄さまだけを愛しておりますわ。」
「誓って真実の愛ですか?」
「ええ、誓って…!」
「では、紫織さん…愛はいとしい人の不幸せを望まないものだが…もちろん…」
「もちろんですわ…」
「紫織さん…ここにひとりの女性がいます。彼女はおそらく…僕が他の女性と結婚したら生きてはいけないだろうほどに僕を愛してくれていて…」
「もし彼女が生きていくことができなくなるなら…彼女が不幸せになるなら…」
「僕もまたこの世でもっとも不幸せな人間になってしまう……」
紫織は絶句した。
「北島マヤさんですの…?彼女のために一生誰とも結婚はしない、と…?」
「愛しているのですか…?」
「ええ。愛しています…。」
「お心は変えられませんの?わたくしを愛しては下さいませんの?」
「ええ。紫織さん…申し訳ありません…。」
「僕はあなたがマヤにした仕打ちの数々を、今はもう恨んではいません。」
「あの子を傷つけたあなたの仕打ちも、僕は許します。」
「真澄さま…」
「…あの子が不幸になれば真澄さまもまた不幸になる…」
「…それだけで紫織は十分です。納得しましょう…。」
「紫織もまた…真澄さまが不幸になるなら、この世で最も不幸な人間になってしまうからです…。」
「紫織さん…」
「受け取ってください…紫織の、唯一つの愛の証です…身を引きましょう…。」
「真澄さま…あなたに愛されることを紫織は望んできました。けれどもう、愛されることは望みません…。」
「真澄さま…愛していますわ。あなたのお幸せだけを、紫織はお祈りしています。」
「お別れしましょう…真澄さま…。」
「真澄さま、どうかお幸せに…。」
「紫織さん…ありがとう…あなたもどうか幸せになって下さい…。」
真澄は深々と紫織に頭を下げた。
紫織は席を立ち、二度と真澄を振り返ることは無かった。



身を引くことが唯一つの愛の証…。
人間であればこそ、そんな愛もある…。
人間であればこそ…。




「真澄!一体何を考えておる!よりにもよって鷹宮家と婚約解消だと!?勝手な真似を!」
激昂する英介に、真澄は穏やかに答えた。
「お義父さん…子どもの頃あなたに見捨てられたあの時から、僕は誰も愛したことはありませんでした。」
「誰に心惹かれることもなかった。」
「だが、今は違います。僕は初めて、人を愛し、愛されました。」
「いつか『紅天女』をこの僕があなたから奪ってみせよう、あなたが築き上げたもの何もかもを。そう思っていました。」
「あなたとの戦いはまだ終わっていない。」
「けれど、真実、人を愛して、僕は人間としての真実を見誤る過ちを犯さずに済みました。」
「お義父さん、今となっては、もうあなたを恨んではいません。」
真澄の言葉は真摯だった。
「真澄…!」
英介は言葉を失った。
「北島マヤ、あの子が僕に与えてくれた愛、それが僕の人生のすべてです。」
「あの子の愛が、僕を癒してくれた。僕はもう迷いませんよ。」
「お義父さん、あなたとは『紅天女』を巡って親子二代して葛藤してきました。そのすべても、今、僕には許せる気がしています。」
「お義父さん、あなたが犯した過ちのすべてを、僕は許します。それが、同時に僕が許されることですから。」
「真澄…」
「僕は北島マヤを愛しまたマヤに愛されて、僕はいっさいが癒されました。」
「お義父さん、僕のこの幸せを、どうか許してください…。」
そう告げて、真澄は英介の前を辞した。
英介はがっくりと頭を垂れて、膝の上で拳を握りしめていた。




夢。マヤを愛して、胸痛むほど
俺は夢を見てきた…
そして、破れてなお悔いない夢に 初めて出逢ったとき
俺は躊躇なく 自分が生まれてきたことの意味を
それに賭けた。
もしも、ただ一度でも
自らの真実にせまり得た時こそ
おそらく愛惜にみたされた 人生の長い夢は
解き放たれ
購われるのだろうか―――


愛しながら
愛する者から身を解き放ち
戦きながら
そのことに堪え抜くときが来ているのではないか
ちょうど張りつめた弦に堪えぬいた矢が
集中した力をもって飛び立つとき
自分「以上のもの」になっているように。


言葉がある。
言葉は俺の裡から出て俺を見つめている。
まだなお心の中にある
もう一つの言葉を見つめている。


風。
  風が吹き
  あのきびしく大きな風が吹き
  いつか 幼い雲たちは逃げしまった
  ただ苦しいだけの追憶を残して
       白い炎暑
       静かな弦楽
       底のない成層圏……
     困難な風土のなかで俺は知り始めている
     もう小さな神話時代を懐かしむのはよそう
     今は。
     俺はひとりであるということだけが正しい
  風が吹き
  あのきびしく大きな風が吹き
  俺は一つの海をめざしている。


ほとんどあらゆるものが
俺を感受へとさしまねく
すべての転向からそよいでくる囁きがある 思い出せよと
俺たちがよそよそしく素通りした一日が
いつかふいに 俺たちへの贈り物となる
  俺たちの収得を計るものは誰なのか? 俺たちを
  むかしの過ぎ去った年月から切りはなすことが
  誰にできるのか?
  俺たちがこの世に生まれてから知ったのは
  一つが他のもののなかに
  自分を認めるということ
あらゆる存在を貫いて
一つの空間が広がっている
「世界・内部・空間」が。俺たちのなかを通りぬけて
鳥達が静かに飛んでいる
ああ 俺が延びようとして
窓のそとをのぞくと
すでに俺のなかに 一本の樹が伸びている―――


昨日憎んだものも 今日出逢うものも 明日をわかつものも
どれをも皆愛せそうな、そんな思い。
いつか、そうした優しさを
いつも この身体のなかに支えていられる強さを持てるよう。


これが俺の戦いだ
憧憬に身を清め 日々をつらぬきすすむことが。
それから強くしっかり幾千の根をはって
生に深く喰い入ることが。
そして苦しみを通して成熟し
はるかに生から立ちいでることが。
はるかに時間から立ちいでることが。


かつて青海原は孕んでいた
たゆたいながら
その胎へ俺を誘った
   もし
   まさに
   餓えたひとであるならば
   今はもう
   待つことをやめ
君よ
   駿馬を駆り
   あの青海原へ向かいたまえ
     俺の見た夢の続きを
     きみは見いだすだろう
    隻眼にたたえるものは
    海の青さにもまして輝く
    豊沃の胎
    焦がれ続けたその青さは
    無限の真理へ続くことを
    信じたまえ
人は誰もひとり
いちどはこの汀に立ったのだ




愛するものよ
愛する 愛するものよ

マヤ、おまえの笑顔
マヤ、おまえの あの目のまたたき
思わず流れてきた視線
ほんの僅かな微笑み
表情
しぐさの数々
そんなものに心を奪われるようになった
幕が下りたあとも胸の中には熱い想いだけが残った…
商品だとばかり思っていた女優に…
どうしてよいかわからぬまま感動を伝えたくて紫のバラを贈った
こんな思いは生まれて初めてだった
この自分が誰かのファンになるなどと…
子どもの頃義父に見捨てられたあの時から
誰も愛したことはなかった
誰に心惹かれることもなかった
それが…
芸能社の社長が特定の誰かのファンになるなど立場上公にできることではない
また商品であるべきはずの女優に特別の感情を抱くなど許されるものではない…
まして相手は11歳も年下の少女だ…
俺に出来ることは影のファンとして成長を見守り続けるだけだった…
誰にも気づかれてはならない
秘めていなければならない
この思いを…

マヤ…そうして俺は長いこと、おまえだけを見つめてきた。
長く苦しい、心の旅だった。
今は、マヤ、おまえが俺を愛してくれる。
今こそ、すべての人の過ちを、俺は許そう。
そして、マヤ、許してくれ。
俺の犯した過ちを。
俺はもう二度と誤るまい。
マヤ、おまえの真実、おまえの真情を、俺は二度と見誤るまい。




真澄との想いを叶えて、マヤは阿古夜の演技を完成させ、試演に臨んだ。
無償の愛を貫くマヤの阿古夜は、試演の舞台の上で光り輝いた。


マヤ、思えば長い旅だったな。
これからは俺と一緒に旅路を行こう。
愛こそ、旅路を導く杖。
心弱きを強める力。
心勇ましく、旅を続けて行こう。ふたりで。
この世の何物をも懼れることはない。
マヤ、愛している…!


「信仰こそ旅路を導く杖。弱きを強むる力なれや。心勇ましく旅を続けゆかん。この世の危うき、恐るべしや。
 我が主をかしらと仰ぎ見れば、力の泉は湧きて尽きず。恵み深き主の、み傷見まつれば、僅かに残る火、再び燃ゆ。
 主イェスのみ跡を辿りゆけば、険しき山路も、安けき道。いかで迷うべき、などて疲るべき。ますぐにみ神へ、近づきゆかん。
 信仰をぞ我が身の杖と頼まん。鋭き剣も、くらぶべしや。代々(よよ)の聖徒らを強く生かしたる御霊(みたま)を我にも与えたまえ。」
(讃美歌第270番。『信仰』)



晴れて積年の想いを叶え、マヤは『紅天女』の後継者となった。
そして、真澄はマヤとの愛を深め、ふたり、手を携えて、長い新しき人生の旅に旅立っていった。











終わり






2002/11/14

SEO [PR] おまとめローン 冷え性対策 坂本龍馬 動画掲示板 レンタルサーバー SEO