310310番ゲット・天使の羽根様リクエスト:そろそろ冬本番ですし、今回は2人にウィンタースポーツを楽しんでいただきたいです。
 結婚して初めて、2人揃って冬の休日を過ごせる事になり、真澄様がマヤちゃんをスキーに誘います。
 しかしスキーは初めてのマヤちゃんの為に、ウェアからスキーまで全てをコーディーネートし、
 スキー場でも優しく時にはイジワルにからかいながら正に手取り足取り教える真澄様。
 お泊りは誰にも邪魔されず2人きりになれるコテージで、ナイタースキーも楽しんで、
 冷えた身体を暖炉の火の前で暖め、窓から深々と降る雪を見て愛を語らって下さい。

※天使の羽根さん、いつもレッスンシリーズリクエストありがとうございます。



 晴れて積年の想いを叶え、華燭の典を挙げた真澄とマヤ。
結婚して、初めて迎える冬も間近に迫ったある日。



「マヤ、1月には連休が取れるぞ。マヤのスケジュールを調整してくれ。2泊3日だ。一緒に休暇を過ごそう。」
「ほんと?嬉しい。ふたり揃ってゆっくりできるのね!」
マヤの声が明るく弾む。
「ああ。珍しいたまの休暇だから、スキーに行かないか?」
「スキー?あたし、やったことないわ…。」
「俺が教えてやる。マヤは心配しなくていい。今度の日曜、スキーショップに行こう。道具を揃えるから。」

日曜日。真澄は自分の車を出して、マヤとふたり、お茶の水のスキーショップ専門店を訪れた。
「わあ、綺麗!」
棚にズラリと並ぶ色とりどりのウェアに、マヤは歓声を上げる。
「せっかくだからお揃いのウェアにするか。」
真澄は蛍光色も鮮やかな派手な柄物のウェアを選んだ。
「俺のスキー板も新調するかな。」
マヤには身長に合わせた赤いスキー板。真澄は上級者用のスキーを選ぶ。
靴、ウェア、板、スティック、手袋、帽子、ゴーグル、ワックス、とひと揃い、真澄はすべて高級品をコーディネイトした。
マヤは物珍しそうに、真澄の買い物に付いて歩いた。

一通り買い物を済ませると、車にスキー板を固定し、ふたりは銀座に食事に出かけた。
銀座でも一番のステーキ店で、ふたりは上質の松阪牛ステーキに舌鼓を打った。
「どこのスキー場に行くの?」
「八ヶ岳だよ。宿泊先も、もう押さえてある。」
「楽しみだわ。あたしのスケジュールも調整ついたし。早く1月になればいいのに。」
「年末年始が過ぎれば、あっという間さ。」
「12月はあたしも忙しいしね。」
師走は正月番組のテレビ収録で、マヤのスケジュールはいっぱいに押していた。
大晦日には、生出演のテレビ番組もある。
年始には、結婚して初めてふたりで回る挨拶回りも控えていた。
実質、真澄が確保した1月の休暇が、ふたりでゆっくりできる、唯一の冬の休暇だった。



 目の回るように忙しい師走と年末年始を過ごし、約束の休暇はあっという間にその日を迎えた。
前日、支度を整え、翌早朝の早出に備えて、ふたりは早めに眠りについた。
翌朝、まだ夜の明けない暗い早朝の内に、真澄は車にスキーを積み、マヤを従えて出発した。
車は軽快に中央道を走り、約2時間半で八ヶ岳の麓、ザイラーバレースキー場に到着した。
冬の遅い日の出。朝日に燦々と輝く八ヶ岳の雪の白さが眩しい。
スキー場にほど近いコテージに真澄は車を停めた。
「マヤ、ここが宿だ。」
「わぁ素敵!」
木造の瀟洒なコテージは新築されたばかりで、また木の香も芳しい。
真澄はトランクから荷物を運び出す。
持参した珈琲を淹れて一息つくと、ふたりはスキーウェアに着替え、板を持ってゲレンデに出た。



 今日は絶好のスキー日和。空は青く澄み渡り、滑りやすい粉雪の雪質の調子も良さそうだった。
真澄は初心者コースにマヤを連れて行った。
休日ともあって、スキー場は人で賑わっていた。
マヤにスキー板を履かせる。
「そう、その金具を靴に留めて。」
「ああーー、歩けないーーー!」
マヤはスキー板を持ち上げようと、腐心していた。
「マヤ、スキーを履いたら、歩くんじゃない。スティックで雪を蹴って、板を滑らせる。」
「昇る時は横向きに。板を交互に横歩きさせる。」
「こ、こう?」
「そうだ。その調子。」
ごくごく緩やかな斜面を少し登ると、真澄はマヤに滑り方を教えた。
「スキーは並行に。ゆっくり滑る時はスキーを八の時にして。」
「きゃあっ!滑っちゃうーーー!」
勝手に滑り出したスキーに、マヤは驚いて叫んだ。
あっという間にマヤはバランスを崩し、尻餅をついて転んだ。
「ハハハハ…滑るからスキーと言うんだ。」
「やだもう。急に滑るんだから…!」
真澄はマヤを助け起こして、再び斜面を登らせる。
「スティックでバランスを取って。」
「軽く膝を曲げる。前傾姿勢。重心は低く。腰でバランスを取る。」
「止まるときはスキーを合わせて。」
四苦八苦して、マヤはなんとか真っ直ぐ滑れるようになった。
緩やかな斜面を、真澄と一緒に滑り降りる。
マヤは歓声を上げた。
「キャー!気持ちいいー!」
「そうだろう?」
「今度はターンだ。」
真澄はボーゲン(左右両板の開閉でスピード調節)、外脚ターン(内側の足を持ち上げ外側の脚一本でターン)、
内脚ターン(外側の足を持ち上げ内側の脚一本でターン)、片脚ターン(片脚一本でターンしながら滑る)、両脚ターン(両脚をうまく使って滑る)を順を追って、手取り足取り、マヤに教え込んだ。
始めは片脚で滑るのは怖いのだが、初級コースでゆっくりと転びながら楽しめばバランスがとれるようになる。
片脚でバランスがとれるようになると、スロースピードではあるがスキーがたわみ弧を描いてゆくのが感じられるようになる。
ターン時には体の使い方のうまさが要求される。
初級コースでスロースピードであってもスムーズに美しく滑ることができる、ということに価値を見出せるかどうかが上達のポイントである。
マヤは何度も転びながら、額に汗して、教えられた通り悪戦苦闘した。
「そうそう、うまいじゃないか。」
「ああ、もう大変…!」
「おいおい、そんなに腰を突き出すんじゃない。それじゃあ猿だぞ。」
「いやーん!速水さんの意地悪!」
「俺が滑ってみせるから、ちょっと見ておけ。」
言うと、真澄は巧みに左右にターンを切って美しいフォームで滑り降りた。
「マヤ!降りておいで!」
真澄が斜面の下から呼ぶ。
マヤはこわごわ、ゆっくりとスキーを滑らせて滑り降りた。
「なんとか滑れるようになったな。」
「マヤ、悪いが、このコースで練習していてくれ。せっかくだから、俺は上級者のゲレンデで滑ってくる。」
「あ、ずるいんだから。しょうがないなあ。行ってらっしゃい。」
「ターンの練習をしておけよ。」
「判ってる!」

真澄は上級者ゲレンデのリフトに向かって滑っていった。
マヤは見よう見真似で、何度も転んでは、左右のターンを練習した。
斜面を登るのもたいそうな運動で、マヤは疲れて初心者コースの頂上でひと休みした。
上級者ゲレンデを眺望すると、急なアルペンの斜面を人々が勢いよく滑り降りてくる。
ゲレンデでひときわ目立つウェアを着た真澄の姿も、遠くに小さく見えた。
(速水さん、巧いんだわ)
真澄は一気に麓まで800mを滑り降りた。
八ヶ岳の天然の斜面を活かしたゲレンデ。
自然を満喫するスポーツ、スキー。
真澄は久々に野山を滑って、心が天地自然に向かって解放されていく思いだった。

真澄は上機嫌で、マヤのもとに戻ってきた。
「疲れたか?ひと休みするか。マヤ、スキーを脱ぐんだ。」
スキー板を靴から外し、雪の上を歩くと、マヤは膝がガクガクした。
「なんだか、歩くのが変だわ。」
「今まで滑っていたからな。」
スキー場付属施設のリゾート感覚溢れるカフェテリアレストランにふたりは出向いた。
スキー専用のロッカーに板を固定すると、ふたりはレストランに入った。
時刻も昼近くになっていた。
真澄は八ヶ岳を眺望できる窓際の席をとった。
「ああ、お腹空いちゃった。」
「好きなものを頼んでいいぞ。」
「じゃあ、これとこれ。」
マヤは豊富なメニューに目移りしていたが、ハンバーグランチにチョコレートパフェを注文した。
真澄は日替わりランチと珈琲にした。
雪を頂いた八ヶ岳は真冬の陽差しに遠く煌めき、その山容は威容を湛えて、冬空に険しく聳え立っていた。
ふたりはゆっくり食事を済ませた。真澄はウェアのポケットから煙草を取り出し、煙草に火を点けた。
珈琲を飲みながら、真澄は旨そうに煙草を燻らす。
「いい気分だな。」
「ほんと。来てよかったわ。」
マヤは景色を眺めながら、楽しげに真澄に微笑みかけた。
真澄も優しい笑顔で、マヤに応えた。


たっぷり休憩を取ると、ふたりは再びゲレンデに降りた。
午後は初心者向けバレーで、真澄はマヤを特訓した。
夕刻近く、真澄はまたひとりで上級者アルペンに出向き、スキーをひととき満喫した。
真冬の早い黄昏が、スキー場に訪れる。
「さて、そろそろ引き揚げるか。」
「ああ、疲れたぁ。」


ふたりはコテージに戻り平服に着替えてウェアを干すと、夕食に出かけた。
真澄は清里まで車を走らせ、清里ペンション村のレストランに入った。
レストランではフランス料理のフルコースを、ふたりは綺麗にたいらげた。
真澄はレストランの赤ワインを一本買って、予め栓を開けて貰い、ふたりはコテージに戻った。

コテージにはワイングラスは備え付けていなかったので、普通のグラスに真澄はワインを注いだ。
真澄はリビングの暖炉に火を点けた。暖炉の前にはムートンの敷物があり、ふたりは敷物に腰を下ろして、ワインを味わった。
コテージの窓からは、ナイタースキーの灯火が遠くに煌めいているのが見える。
窓の外は雪。
しんしんと、音もなく雪が降りつもる。
「静かね…」
暖炉の火を見つめながら、マヤが囁いた。
「ああ。」
「毎日忙しく過ごしているのが夢のようだ。」
「速水さんとふたりだけでこうしていられるなんて、あたし、幸せだわ…」
真澄はマヤの大腿に頭を乗せて横になった。
マヤの膝枕。マヤは真澄の髪を愛撫した。
「明日の朝はゆっくりして、明日はナイタースキーをしよう。ナイターもいいぞ。」
「そうね…」
ゆったりと、静かな時間が贅沢に流れていく。
「マヤ、先に風呂に入っておいで。俺は後からでいい。」
「そう?じゃあ。」
マヤはそっと真澄の膝枕を外すと、荷物から着替えを出して、浴室に消えた。
暖炉の薪は赤々と燃え、炎はうつくしく揺らめいた。
真澄は僅かの間、いつの間にか、うたた寝をしていた。
マヤは浴槽に湯を張ると、思い切り手足を伸ばし、昼間の疲れを癒した。

「速水さん、交替。」
マヤの声で、真澄は浅い眠りから覚めた。
「あ、ああ。」
「お湯入れてあるから、ゆっくり温まってね。」
「ありがとう。入ってくる。」

真澄が風呂から上がってきた。
マヤはネグリジェ姿で暖炉の火を見つめていた。
「待たせたな。寝ようか。」
「うん。」
真澄は暖炉の火を消すと、寝室に入り、寝室の暖房をつけた。
「おいで。マヤ…」
「速水さん…」

昼間の疲れも忘れて、ふたりは雪の夜の中、飽くことを知らずいつまでも深く愛し合った。
そして、いつか知らず、どちらからともなく深い眠りに落ちていった。



 翌朝遅く、マヤが目覚めると、昨夜の雪はすっかり止んで、青空が窓いっぱいに広がっていた。
マヤが身じろぎしたので、真澄も目を覚ました。
ふたりは交替で洗面を済ますと、遅い朝食に出た。
昨夜と同じ清里のペンション村。集う人々の間で、ふたりはひたすらにひとときの幸福を分かち合った。

しっかりと食事を済ませると、ふたりはコテージに戻り、ウェアに着替えて板を持ち、午後のゲレンデに出た。
休日に賑わうスキー場。人々の歓声があがる。
真澄はマヤに合わせて、ゆっくりとゲレンデを滑り降りた。
時折オープンテラスで休憩を取りながら、ふたりは2日目のスキーを楽しんだ。
マヤも大分慣れ、リフトに乗って中級者バレーで滑れるようになった。
真澄は、マヤに断って、またひとり、上級者アルペンに向かい、豪快な滑りを堪能した。

夕食はスキー場のカフェテリアレストランで取り、ゆっくり休憩すると、ふたりはナイタースキーに向かった。
雪は照明に照らし出されていよいよ白く映え、目映いばかりに輝いていた。
昼間とは一変した、幻想的な雪景色。
そのうつくしい雪の上を、勢いよく滑り降りる。
マヤは歓声をあげながら、真澄について、スキーを滑らせた。

やがてナイター終了時刻。
たっぷり半日、スキーを楽しみ、ふたりはコテージに戻った。



 真澄が暖炉に火を入れる。
ふたりはウェアを脱いで干し、冷えた身体を暖炉で暖めた。
昨夜のワインを真澄はグラスに注ぐ。
外はまた雪が降り出した。
雪が降る。音もなく。
過ぎ行く時のように、雪は降る。
雪は、ふたりを世界から遠く隔て、ふたりだけの愛の園にふたりを導いていく。
愛しているわ、とマヤが呟く。
愛しているよ、と真澄が囁く。
暖炉の火は煌々と燃え、ふたりを赤く照らし出した。
そして、ふふたび、夜をこめて、ふたりの愛の世界が、果てしもなく広がっていった。
求め合い、与え合い、愛し合う。
雪に隔てられたふたりだけの世界で、ふたりは確かな愛の時を刻んでいった。



翌朝。
昼近くまで、ふたりは眠っていた。
これで、休暇は終わりだ。ふたりは荷物を整え、真澄の車に積んで、帰途についた。



幸福な冬の日は、こうして過ぎていった。









終わり






2002/11/12

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