297297番ゲット・天使の羽根様リクエスト:もうすぐ真澄様のお誕生日ですね。というわけで、
 マヤちゃんがお祝いをしてあげると言い出しデートの約束をしていたんですが、当日売れっ子マヤちゃんは 
 時間になっても約束の場所(ホテルでもマンションでも、どこでもOK)に現れず、
 先に到着して待ち切れない真澄様があれこれ想像してまたモンモンとする。
 そこへ、やっと現れたマヤちゃんに真澄様は爆発・・・。あとはユーリさんにお任せです。好きにして下さい。

※ということで、好きにして下さいと言われましても…(苦笑)。





 11月3日は真澄の誕生日。
早くからマヤは、その日はお祝いのデート、との約束をとりつけていた。
「お誕生日なんだから、お祝いをしてあげるわ。」
「絶対、スケジュール、空けておいてね。大事なプレゼントをするから。」
「ああ。判った。会議も会食もパーティも外しておくさ。」
「ほんとね?絶対よ?」
「ああ、ああ。」
「楽しみにしててね。逢うのも久しぶりなんだし。」
「随分逢わなかったな。楽しみにしているよ。」
「じゃあね。約束よ。」
「判った判った。もう遅い。早く寝るんだな。」
「うん。お休みなさい」
「おやすみ。」



 いよいよ誕生日の前日、という日。
マヤから連絡が入った。
「速水さん、本当にご免なさい、明日ね、夜、急にCF撮りの打ち合わせが入っちゃったの。西園寺さんの会社のCFなんだけど。」
「食事は無理そう。残念だわ。ご免ね…」
マヤの、真から済まなそうな情けない声音に、真澄はついついほだされていた。そして、気軽に言ってのける。
「いいさ、仕方がない。食事はキャンセルして、いつものホテルの部屋で逢おう。却って人目に立たなくていい。」
真澄のその明快な言葉にマヤはほっと安堵した。
「よかった、そう言ってもらえて。」
「俺の方は、すっかり予定は空けてあるから。食事は済ませて行く。」
「あたしは8時には上がれると思う。9時に、部屋で待ってるわね。」
「了解だ。」
「楽しみにしてる。」
「ああ。俺もだ。」
「じゃあね。お休みなさい。」
「おやすみ。よく寝ておくんだぞ。」
「はぁい。」
電話口のマヤの明るい声が、真澄の耳に心地よかった。
久しぶりの逢瀬。
マヤの素肌を想って、ひととき真澄は胸を熱くした。



 約束の11月3日、夜9時。真澄は時間ちょうどに、いつも密会している皇居前のホテルのダブルルームのドアをノックした。
すぐにマヤがドアに走り寄って、鍵を開けるかと真澄は一瞬、待った。
だが、返事がない。
「?」
真澄は再度ドアをノックして、待った。
ドアは沈黙している。
真澄はドアノブを回してみた。鍵がかかっているままだ。
部屋の中にマヤの居る気配はなく、ドアは無意味に真澄を拒否して沈黙していた。
(まだマヤは着いていないのか?)
真澄はいったんフロントに降りた。
「504号室だが。」
「ご予約頂いた北島さまですね。チェックインなさいますか?」
「あ、ああ。頼む。」
真澄は書類に偽名を記入し、支払いを済ませて鍵を受け取った。
(なんだ。マヤはまだか。)
憮然とした思いで、真澄は再びエレベーターを上がった。
いつものダブルの部屋の鍵を開け、室内に入る。真澄は内鍵をかけた。


(マヤはどうしたんだ?)
真澄はとりあえず着替え、手早くシャワーを済ませた。
真澄はバスローブを纏ってルームバーからジンライムを取り出し、リビングのソファに腰を下ろしてグラスにジンライムを注いだ。
真澄は一息にジンライムを呷ると、口寂しくなった。
クロゼットに仕舞った上着のポケットから、煙草とライターを取り出す。
手持ち無沙汰に、真澄は煙草を立て続けに吸った。
(マヤは打ち合わせが延びているのか?)
時計を見ると9時半を回っている。
真澄はルームサービスでスコッチの水割りを注文した。
自分で注文しておいて、ドアベルが鳴ると、マヤが着いたのかと錯覚し、ドアに駆け寄った。
「ご注文の品です。」
ホテルボーイがワゴンを運んできた。
「あ、ああ。ご苦労。」
真澄はワゴンを受け取ると、バタンとドアを締め、鍵をかけた。
水割りを傾けながら、イライラと煙草を吸う。
15分、20分。
マヤが約束の時間に遅れることはこれまで無かった。
いつも、真澄の方が、マヤを待たせるのが常だった。
(西園寺の会社の打ち合わせだと言っていたな。あの若造、またマヤにまとわりついているのか?)
「くそっ!」
真澄は自分の想像に嫌気がさして、唾棄する思いだった。
酒のピッチが早まる。
ホテルの部屋は、常と違い、妙に空々しい空間に感じられた。
十分広いダブルルームは、真澄だけの存在感を虚しく宙に浮かせているようで、真澄は落ち着きなく、部屋をウロウロと歩いて回った。
そして、ドカリとソファに腰かけると、次々水割りを作り、速いピッチでグラスを空にしていった。
時刻は10時を回っていた。

(マヤ…遅い…!)
マヤは、いつもこんな想いで、自分を待っているのだろうか。
いや、今日は特別の日のはず。
よほどのことが無い限り、マヤに限って、こうも遅れることはないだろう。
(いったいどうしたといんうだ…)
(まさか、事故でも…!?)

交通事故などに遭っていたとしたら、マヤと真澄の仲は厳然たる秘密の仲であるので、連絡の取りようがない。
謂われのない不安に駆られ、真澄はますます酒を呷った。

(まさか俺のマヤに限って、事故などあるわけがない…)
(西園寺が粘ってマヤを離さないんだろう…)
(忌々しい奴だ…)

苛々と、焦燥ばかりが募る。
(それにしても、マヤもマヤだ。電話の一本くらいあってもいいだろうに…)
真澄は苦々しい思いで、時計を睨んでいた。

時間の経つのが、酷く遅く感じられる。
次第に真澄は暗澹たる思いに囚われた。

(8時にはあがれると言っていたな。西園寺に1時間、引っぱられたとしても、もう着いてもいい頃じゃないか…)
(まさか万一のことが…)
真澄は居ても立ってもいられない思いで、立て続けに酒を呷り、煙草を吸った。
(マヤの身にもしものことがあったら…俺は、俺は…)
(俺はマヤなしでは、とても生きてはいけない…!)
「ああ…マヤ…」
真澄は声に出してマヤを呼んだ。
酒の酔いもそろそろ、回り始めている。

(そうだ!聖!マヤも聖になら連絡をとっているかもしれない。)
真澄は思い立って、聖に電話を入れた。

「ああ、聖か。俺だ。」
“あ、真澄さま!ちょうどご連絡しようとしたところです。”
「マヤに何か!?」
“はい、マヤさまからご連絡がありまして、乗っていたタクシーが人身事故を起こしたそうです。”
“警察の現場検証に立ち会わされたとのことで、これからタクシーを乗り換えて、そちらに向かうとのことでした。”
「マヤは無事なんだな!?」
“はい。何ともないとお伝えするようにとのことでした。”
「判った。ありがとう。」
“真澄さまもご心配でしょうが、マヤ様は大丈夫ですから。”
「そうか。無事ならいい…。了解だ。」
“真澄さま、お誕生日、おめでとうございます。どうぞよい夜をお過ごし下さいませ。”
「ありがとう。また連絡する。」
“はい、真澄さま。では。”
聖は電話を切った。
受話器を置いて真澄は心底から安堵した。急に酔いが回った気がして、真澄はソファに身を投げ出した。
急激に緊張が解け、酔いのせいもあって、真澄は俄に眠気に襲われた。



 ものの5分、ウトウトしただろうか。
遠慮がちに、部屋のドアがノックされた。
その物音は、ひどく大きく、真澄の耳に響いた。
(マヤ…!)
真澄は飛び起きて、ドアに駆け寄ると、内鍵を開けた。
「ごめん!速水さん!」
大荷物を抱えたマヤがするりと部屋に入った。真澄は鍵を掛け、物も言わずに、マヤを強く抱き締めた。そして、深く口づける。
荒々しいくちづけが、真澄の心情を物語るようで、マヤは身を竦めた。
真澄はマヤの手から荷物をもぎ取ると、テーブルに置き、悄然と立ちつくすマヤを軽々と抱き上げると、ベッドに運び、シーツを捲ってマヤを横たえた。


「待って、速水さん…」
「嫌だ。もう待てない!」
真澄はマヤのセーターごとブラジャーを捲り上げると、半分露わになった乳房に素早くくちびるを這わせた。
マヤの冷えた体に、真澄のくちびるが熱かった。
真澄はマヤに荒っぽくくちづけながらセーターを脱がし、後ろ手でブラジャーのホックを外した。
片手で乳房を揉みしだきながら、スカートのファスナーを下ろし、スカートとストッキングごと、下着も脱がせ、あっという間にマヤを全裸にしてしまう。
そして、自分もバスローブを脱ぎ捨てると、その熱した躰でマヤに覆い被さった。
前戯もそこそこに、真澄は勢い余って、早々にマヤに己を穿った。
マヤが身を捩る。
深く結ばれた一体感で、ようよう、真澄は募らせていた焦燥から逃れることができた。
マヤを征服し、マヤを確かに自分のものだと確かめる、そのひと刹那。
「はやみさ…」
真澄はマヤを征服しながら、マヤの言葉をくちづけで塞いだ。
真澄の熱情に圧倒されて、マヤは為されるがままだった。
やがてマヤの内部が柔らかく潤ってくる。
真澄は浅く、深く、マヤを蹂躙し、官能の高まるまま、マヤの奥深く、待ち焦がれた解放の時を迎えた。



 呼吸を弾ませて、真澄はマヤの横に躰を投げ出した。
そして、マヤの長い髪を愛撫する。
ようよう真澄の激しい動悸も治まる頃、マヤの脇腹に愛撫の指を滑らせながら、真澄は口にした。
「心配したんだぞ…俺もどうにかなるかと思った…」
「ごめんなさい…せっかくのお誕生日なのに…」
「マヤが無事で良かったよ。マヤにもしものことがあったら、俺は…」
「速水さん…」
「今さら、ひとりで生きていくのはご免だ、マヤ…」
「あたしだって…。」
ひととき、ふたりは眼差しを交わし、くちづけを交わした。
「シャワー浴びてくる。お誕生日、しましょ!」
言って、マヤは身を起こすと、素早くバスルームに消えた。

シャワーの水音が消え、ややあって、マヤがバスローブを纏って浴室から出てきた。
「速水さんもシャワー、浴びてきて。」
「よし。」
真澄は酔い覚ましを兼ねて、ゆっくり熱いシャワーを浴びた。

真澄が浴室に居る間、マヤは脱ぎ散らかした衣服を片づけ、ルームサービスで、予め依頼してあったケーキとシャンパンを部屋に運ばせた。
生ケーキを六切りにした二つの皿とシャンペングラスをダイニングのテーブルにセットし、マヤはケーキの一方に蝋燭を立てた。
真澄がシャワーから上がってきた。

「おっ、本格的だな。」
「お祝い、お祝い!」
マヤの声が明るく弾む。
マヤは真澄にバスローブを手渡すと、先にテーブルについた。
真澄が席につくと、マヤはシャンパンの栓を開けた。グラスに注ぐと、淡い琥珀色の泡沫が弾けた。
マヤはホテルのマッチで、ケーキの蝋燭に火を点けた。
背筋を伸ばしてマヤは椅子に座り直すと、最近習い始めた声楽を活かして、バースディソングを歌った。
「♪ハッピーバースディ ディア速水さん、ハッピーバースディ トゥ ユー!」
真澄はしばし、マヤの歌声に耳を傾けた。
「速水さん、蝋燭、吹き消して。」
真澄は促されて、一息、蝋燭に息を吹きかけた。蝋燭の明かりが消える。
「お誕生日おめでとう、速水さん!」
マヤが拍手をする。
「はい、乾杯!」
マヤがシャンパングラスを掲げる。真澄はマヤのグラスに杯を合わせた。
「誕生祝い、って年でもないんだがな。」
真澄は些か照れて、グラスを傾けた。
「あたしが速水さんと両想いになれて、初めてのお誕生日だもん、あたしだって嬉しいわ。」
マヤはつと、席を立つと、テーブルに置かれた荷物を持ってきた。
荷物の中から、大きな包みを、マヤは取り出す。
「はい、これ、あたしからプレゼント。」
水色と銀色のラッピングペーパーに紫のリボンをあしらい、包みは綺麗にラッピングされていた。
「何だろう?」
「開けてみて。」
真澄は丁寧にリボンを解き、ラッピングを開けていく。
白い薄紙を取り去ると、中からは白いフィッシャーマンズセーターが出てきた。
「これは?マヤ、きみが編んだのか?」
「うん。昔編み物をやったことがあって、随分時間かかっちゃったけど、なんとか間に合ったわ。」
「テレビ局のADさんで由美さんって人がいるのよ。彼女、編み物上手だから、教わりながら編んだの。」
「サイズは合うと思うんだけど。」
真澄は感慨深げにそのマヤ手編みのセーターを見つめた。
「ありがとう。嬉しいよ。大事にしよう。」
「それから、これと、これも。」
マヤは荷物からまた2つ、包みを取り出した。
それもまた綺麗にラッピングされた包みだった。
真澄はセーターを膝に置くと、順にふたつの包みを丁寧に開いていった。
ダンヒルのライターと、揃いのダンヒルの名刺入れが出てきた。
「プレゼント攻めだな。」
真澄が明るく笑った。
真澄の笑顔を、幸せそうにマヤが見つめる。
「紫のバラの人のプレゼントには負けるけどね。」
「ありがとう。早速使わせて貰おう。」
「これなら、お仕事している時も、あたしと一緒よ。」
「ああ、そうだな。」
真澄は身体を伸ばして、テーブル越しにマヤに軽く接吻した。
「ケーキ、食べない?」
「俺は少しでいい。マヤ、きみが食べてしまっていいぞ。」
マヤは真澄のケーキから蝋燭を取り去った。
真澄は一切れ、ケーキを口にすると、残りをマヤの側に置いた。
真澄は新品のライターで煙草に火を点けた。
マヤが二人分のケーキをきれいにたいらげた。
「きみは本当に甘い物が好きだな。」
「女の子って、大抵甘い物は好きよ。あたしは普通だと思うけど。」
マヤはシャンパンの瓶に栓をすると、テーブルを立った。
「速水さん、セーター、合わせてみて。」
真澄もテーブルを立ち、鏡の前で上半身にセーターを合わせてみた。
「うん、やっぱり速水さんは白が似合う。」
マヤの声が楽しげに弾む。
「丈はピッタリだ。」
「良かった!」
真澄はセーターを大事そうにラッピングに戻した。
残りの包み紙も丁寧に片づけると、真澄はマヤを抱き寄せて、ソファに並んで腰掛けた。

「ほんとは今日はイブニングドレスを着て来る筈だったのよ。」
「打ち合わせが終わったら一旦部屋に帰って、着替えて出てこようと思ってたの。」
「でも西園寺さんがなかなか離してくれなくて…。時間が無くてそのまま直行したら、タクシーが事故でしょ。」
「せっかくのお誕生日なのに、心配させてごめんなさい。」
素直に、マヤは謝った。
「ああ、もういいさ。済んだことだ。待っている間は長かったが…」
「マヤ、約束してくれ。女優としてだけではなく、自分の身体はくれぐれも大事にする、と。」
「もうきみの身体は、きみだけのものじゃない。俺のものでもあるんだ。」
「マヤ、きみは俺の宝だ…」
真澄はマヤの背に回した腕に力を込めた。
「うん、約束する。」
「あたしは、速水さんのものよ。これからも。いつまでも。」
「マヤ…。」

マヤは真澄に身をもたせかけた。真澄はマヤの髪の一束にそっと口づけた。
「編み物はね…『若草物語』のベス役の時にやったの。月影先生のご指導で、一週間、ベスとして暮らすこと、って。」
「子どもの頃に覚えたことって、忘れないものなのね。由美さんにも随分助けられたけど、編んでいて、色んなことを思い出したわ…」
「『若草物語』ベス役か。あれが最初だったな。紫のバラを贈ったのは。」
「うん。そのこととか。いろいろ。速水さんには本当に感謝してる。速水さんがいてくれなかったら、あたし、ここまで来られなかった…」
「俺は長いこときみに片思いしていたよ。」
「きみが俺を好きだと言ってくれるとは、夢にも考えなかった。」
「あたしだって…速水さんが紫のバラの人だって名乗ってくれるのをずっと待っていたわ。」
「きみが正体に気づいているとは、俺は全く考えていなかったよ。」
「速水さんのことが好きになって、阿古夜の演技ができなくて苦しかったこともあった…。」
「いろいろ、あったな。」
「ほんと。今、こうしていられるなんて、夢みたい。」
「あたし、幸せよ。速水さん、好きよ…」
「マヤ…俺はきみをいくらでも幸せにしてやりたい…」
「速水さん……」
「さあ、やり直しだ。さっきは強引で済まなかったな。」
マヤは含羞んで、幽かに頷いた。


真澄は軽々と華奢なマヤの身体を抱き上げると、宝物さながらにベッドに横たえ、寝室の灯りを絞った。
恋人たちの長い夜の甘い睦み合いが始まる。
マヤと真澄、ふたりは手を携えて恋人たちの森、深く分け入っていった。



真澄の誕生日。ふたりはまた、新たに恋の歴史を刻む。
長い夜の帳は深く、静謐の中にふたりを世界から隔て、ふたりだけの愛の交歓の時をしずやかに見守っていた。







終わり






2002/10/31

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