292929番ゲット・リヤ様リクエスト:ここしばらく濃厚ラブラブ路線が続いたので、元祖「悶マスラー」の私としては、
 久しぶりに眉間を苦しげにひそめながら、「何てことだ。あんな11も年下の少女に…。」とつぶやく真澄様が見たい。
 でも、これだけではあまりに抽象的なリクエストですよね。だいたい、これじゃ原作のママじゃん(^_^)。
 ここからは、かなり厚かましいお願いなのですが。
 「悩める真澄様一人称短編」が読みたい。
 まだ、マヤの気持ちには全然気づいてない時の真澄様が、紅天女の練習中のマヤを見つめながら、
 (あ、これは別にどういうシチュエーションでもいいんですけどね。)
 自分への自問自答、マヤとの思い出を辿りながら、ひょっとしてあの子も俺を…
 いや、まさか、俺はあの子の母親を殺した男だ。とか勝手に悶々する心中を、ユーリさんのあの絶妙の真澄言葉で綴っていただければ…。
 ごく、短くてもいいんです。いかがでしょうか。

 ※ということで、「悩める真澄様一人称短編」で参りたいと思います。





「聞かせてよ 愛の言葉を」 (PSRLEZ-MOI D'AMOUR)
                     シャンソン  歌:リシェンヌ・ボワイエ

聞かせてよ 好きな愛の言葉
話してね いつものお話を

何度でも いいのよこの言葉
「ジュヴーゼーム」

気心 許しちゃいないの
そのくせ 聞かされていたい
この言葉よ

甘い撫でるよな
囁く小声を聞けば夢見ごこち
またも気を許す

聞かせてよ 好きな愛の言葉
話してね いつものお話を
何度でも いいのよこの言葉
「ジュヴーゼーム」





「そこまで!」
黒沼さんが、マヤの演技を止めた。
俺は思わずマヤの頬に手を添えるところだった。
挨拶もそこそこに、俺はキッドスタジオを後にした。



あれは演技なんだ。演技の筈だ。芝居の稽古に過ぎない…。
しかし、阿古夜を通じて、マヤに本当に恋を告白されているようだった。
マヤ…あんな芝居ができるようになるとは……。
いつまでも少女だと思っていた。
出逢った頃は、マヤはまだ中学生。
ほんの小さな少女だった。
あれから、もう随分と長い年月が経った気がする。
長い夢でも見ていたようだ。


信じられないほどの情熱を秘めているあの小さな身体。
マヤに出逢って、俺はそれまでの自分の生き方を初めて疑った。
それまで、自分を晒け出して生きたことがあったか?
何かに情熱をかけて生きることがあったか?
いいや、無い。無かった。
少なくともマヤに出逢う前は、俺はそんな自分に何の疑問も持たなかった。
だが、マヤの芝居に出逢ってからは…。
舞台のうえの、ほんのひと笑み、なにげなく流れてきた視線、そんなものに、俺ともあろうものが、釘付けになった。
俺の立場上、誰かのファンになるなどということは許されることではなかった。
にも関わらず。
マヤの芝居は、俺を惹きつけてやまなかった。
そして、冷血漢と呼ばれたこの俺にたてつく唯一人の少女。
マヤ…舞台の上でひたむきに燃えあがるおまえが好きだった…
ずっとおまえの情熱に惹かれていた…!
影で紫のバラを贈り続けたのもそんな気持ちの現れだったんだ。
そうとも!
今こそ認めよう…!
俺はおまえを愛している!
マヤ…!
気づきたくはなかった、こんな気持ちに…
大都芸能一の堅物 仕事の鬼 冷血漢。
本気で誰を愛したこともなかった。
女優も歌手も商品だった。
大都芸能の速水真澄が誰かのファンになることなど許されることではなかったんだ…
それが10歳以上も年下のこの少女にこれほどまでに心を惹かれていたとは…!
なんてことだ 速水真澄…!
マヤ、おまえに何かあるたび、どうしようもなくおまえに心惹かれている自分を感じる。



今日まで、いろいろなことがあった…
40度の熱を隠して舞台に立った「若草物語」のベス。
あれが初めて紫のバラを贈った最初だった。
劇団つきかげを陥れようとしていたのに、マヤ、おまえの演技にはたまらなく魅せられた。
「たけくらべ」の美登利、たった独りで演じ抜いた「ジーナと青い壺」。
「嵐が丘」のキャサリン。
アドリブで切り抜けた「夢宴桜」。あの時は俺ともあろうものが取り乱したものだった。
そして、「奇跡の人」。何度観てもマヤ、おまえのヘレンは感動的だった。
月影先生の意志で、大都がマヤ、おまえを引き受けた。
芸能界での華やかな迷路は、マヤ、おまえにとって試練だっただろうか。
そして、ああ、俺がマヤ、おまえの母親を死に追いやった…。
あの時ほど、自分のしたことに罪悪感を覚えたことはない。
それまでどんな卑怯な手を使っても平気だった俺が。
おれのせいでおまえの母親が死んで、
その時からおまえの歯車狂い始め、演劇をやめる寸前までおまえを追い詰めた。
その最後ギリギリの一歩で、おまえは立ち直り、その演劇への情熱で、どん底から這い上がった。
「真夏の夜の夢」のパック、「ふたりの王女」のアルディス、「忘れられた荒野」のジェーン、
みんな好きだった。
学校で演じたという一人芝居、観たかったと思っている。
1パーセントの可能性に賭け、マヤ、おまえは『紅天女』への道を勝ち取った。
あの梅の谷の、雨の社務所の夜――。
どれほどマヤ、俺はおまえが愛おしかったか!
俺は一生、おまえの紫の影でいるしかない。
だが、マヤ、おまえが誰か他の男のものになる、そんなことになったら、俺は気が狂うかもしれない…!
愛している!
愛している!
愛している!
誰にも渡したくはない!
だが、今となっては…。
俺はどうすればいいんだ。
あの梅の谷で、紅梅の木を渡された。
紅天女の恋、だと、おまえは言った。
まさか、マヤ、おまえも、俺を想ってくれているのか?
ならば、俺はもう躊躇いはしない!
いや、だが、まさか…俺はおまえの母親を死に追いやった男だ…。
マヤ、おまえは俺を憎んでいる筈…。
しかし、憎んでいる男相手に、今日のような芝居ができるだろうか?
演技を通じて、マヤ、おまえの本心が伝わってきたというのは、俺の思い過ごしだろうか?
ああ、マヤ、おまえの本心が聞きたい。
確かめたい。
本当のことを!



北斗プロが差し向けた暴漢からマヤを庇って、俺は気を失った。
虚ろな意識の中で、マヤ、おまえの涙、おまえの唇、おまえの愛の囁きが、この耳に頬に額に、朧気に残っている。
あれは夢だったのだろうか?
夢にしては、涙も唇の感触も、はっきりとこの俺の感覚に残っている。
確かめたい。本当のことを!
だが確かめたところで、俺には紫織さんが…。
もうすべては遅いのか…。
いや!
マヤの気持ちが本心であるならば、俺は今度こそ躊躇いはしない!
たとえ茨の道でも、マヤとならば、歩いていける!
マヤ、聞かせてくれ、愛の言葉を…。
それとも、これも、俺の片恋の思い込みなのだろうか?
愛している!苦しいほど。
狂おしいほど、愛している!マヤ!俺の、マヤ!
俺の腕にすっぽり収まったその華奢な身体も、柔らかな頬も、小さなくちびるも、つややかな長い髪も、輝く瞳も、豊かな表情も、
すべてが愛おしい…!
この想いに、出口は無いのか?
それが苦しい。
マヤ、おまえを想うと、この胸が熱い。
マヤ、おまえを想うほどに、苦しくてならない。
この懊悩から、解放される時は果たして来るのか。
いっそ、打ち明けてしまおうか、
紫のバラの人は俺だ、と。
だが、拒絶されることが、何より恐ろしい。
かけがえのない唯一の絆を失ってしまうことは、何物にも代え難く耐えがたい。
拒絶されることを懼れて、11も年下の少女に、手も足も出ないとは…。
速水真澄ともあろうものが。
この数年、秘めていた、この想い。
俺の夢は、一生叶わない。
そう覚悟していた。
だが、マヤ、今こそ確かめたい。
あれは夢だったのか?
それとも、本当の出来事だったのか?


俺は不器用な男だ。そうそう簡単に心は変えられない。
紫のバラは、俺の中で一生枯れることはない。


マヤ、おまえの気持ちを確かめたら、
数年間のこの想いをすべて打ち明けよう。
そして、名乗りをあげよう。
紫のバラの人は俺だったと。
思いを込めて、マヤ、おまえをこの腕に抱き締めよう。
誓おう。もう、決して離れはしないと。
ありったけの思いをこめて、この愛を誓おう。
マヤ、おまえは受け止めてくれるだろうか?
マヤ、おまえもまた、誓ってくれるだろうか?
あの夜から、繰り返し、夢に見る。
マヤ、おまえの愛の囁きを。
果てしもない夢。
見果てぬ夢。
夢から醒めたら、マヤ、俺はおまえのもとに駆けて行こう。
この、唯一つの想いを、貫き通すために。
たとえ、どんな障壁が待ち受けていようとも、マヤ、俺はおまえを愛する。
全身全霊を賭けて。
魂の片割れ。
マヤ、おまえを想うと、魂と魂が触れ合うような気がする。
たったひとりの、恋しい女。
愛する者よ。
愛する、愛する者よ。
今、マヤ、おまえはこの長い夜をどうして過ごしているだろうか。
マヤ、おまえの科白が聞こえてくる。
“おまえさまが好きじゃ”
ああ、俺もだよ。
“はやくひとつになりたくて、狂おしいほど相手の魂を乞う、それが恋じゃと”
ああ、俺も恋している。愚かしいほど。
初めてだ、こんな想いは。
マヤ、おまえが愛おしい…!
マヤ、おまえの芝居、おまえの情熱、おまえのすべてが、愛おしい!
耐えに耐えてきた、この想い。
マヤ、おまえに駆け寄って、おまえをこの腕に抱き、俺はおまえに告げよう、愛していると。
それを想うだけで、胸が切ない。
叶わぬ恋とは知りながら、この胸に溢れる愛は熱く切ない。
マヤ、おまえを抱き寄せたい。
マヤ、おまえを奪いたい。
くちびるを重ねれば、マヤ、おまえのくちびるはどんな味がするだろう。
マヤ、おまえは俺の腕の中で、小鳥のように震えているだろうか。
ああ、マヤ!マヤ!
俺に微笑みかけてくれ。
その眩しい輝く瞳で俺を見つめてくれ。
そうすれば俺は、もう躊躇うことなく、この胸におまえをしっかり抱き締めよう!
そして俺は告げるだろう、真実の、この愛の言葉を。
ああ、幾度、それを夢に見たことか。
夢の中で、マヤ、おまえは輝いていた。
その眩しい瞳をいっぱいに見開いて、マヤ、おまえは俺に愛を語った。
夢だった。すべてが夢だった。だがどこに、夢でない真実があるのか。
巡るとしつき、日々、ありったけの想いひとつで、マヤ、どんなにおまえを愛したか…!
マヤ、おまえに初めて告げる愛の言葉は――
どんな言葉を積み重ねても、虚しいだけだ。
しっかりとこの腕にマヤ、おまえを抱き締め、おまえに心からの接吻を贈ろう。
だから、どうか、俺の手の届かないところに行ってしまわないでくれ!
あの梅の谷の川辺で確かめ合った温もりの確かさ、そして儚さ。
あの幻のように、俺から離れていってしまわないでくれ!
俺が聞いた、おまえの愛の囁きが、真実、確かなものだと、打ち明けてくれ…!
そうすれば俺は、マヤ、おまえとともに地の果てまで手を携えて歩いて行こう。
なにがあっても、この唯一つの愛を、貫いてみせる!
二度とマヤ、おまえの手を離したりはしない!
だから、マヤ、聞かせてくれ、愛の言葉を。


愛すれば愛するほど、人は孤独になるものだということを、俺は初めて知った。
寂しい。
夜のただ中で、世界中から見放されたように、寂しい。
この内面の孤独に相対するものを外面に見いだすことが、愛するということなのか。
マヤ、おまえを愛して、俺は初めて知った。
「より多く愛した者の方が、敗者である。」
トーマス・マンだったか。
いや、どんな先達のどんな格言よりも、今、この自分の想いこそ、はるかに重みがある。
人は誰しもこうして、人知れず秘めた想いを独り、噛みしめるものなのか。


苦吟のただなかにあっても、マヤ、おまえの姿は俺の中で常に美しく輝いている。
虹色の光輝のなかで、マヤ、おまえは美しい。
百万の虹。舞台の上でひたむきに燃えあがるマヤ。
マヤ、おまえの世界が広がる。
そして、俺は魅入られる。


過ぎてゆく時のただ中で、俺はひとり、マヤ、おまえを愛する。
滞りなく日常の回転するあとに、俺は残り、マヤ、おまえを愛する。
全ての退去のあとに、俺はひとり、俺は残り、マヤ、おまえを愛する。
たとえ叶うことのない想いでも、これが俺の真実。
今こそ、マヤ、おまえを見つめよう。
マヤ、おまえだけを見つめよう。
マヤ、愛している。おまえだけを。
聞かせてくれ、愛の言葉を…!
そうすれば俺は!







終わり






2002/10/27

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